東アフリカ諸国間の交易ネットワークの形成と展開に関する研究(2010-2011)
目的・内容
今日のグローバル化の特色は一方で欧米出自の価値基準による一元化・均質化をすすめながら、他方で多文化主義に象徴されるように、ローカル化・差異化を促すという、いっけん矛盾する現象が同時進行している点にある。
本研究は以下の二つの解明を通じて、この現象にアプローチするものである。
第一に、衣料品市場における、先進諸国と新興国との東アフリカ市場獲得競争によるせめぎ合いと、それに対する東アフリカ諸国のローカル化の実態を解明する。
第二に、第一の状況を受け、タンザニアの古着商人が、民族や宗教、同郷などを基盤とした従来のトランス・ボーダー・トレーダーのネットワーク形成とは異なる仕組みで、東アフリカ諸国を結ぶ交易ネットワークを創出していく「再グローバル化」の実態を解明する。
活動内容
2011年度活動報告
本研究の目的は、衣料品流通を事例として、東アフリカ関税同盟結成後の東アフリカ諸国間の交易ネットワークの形成と展開を検討することを通じて、アフリカを舞台に生じている重層的なグローカリゼーションの実態を解明することにある。本年度も昨年度に引きつづき、タンザニアに渡航し、地方拠点都市ムワンザ市を起点に、タンザニア商人による隣国(ケニア、ウガンダ)からの仕入れ行為を参与観察するとともに、ルワンダ、ブルンジから商品を仕入れる商人に対して詳細な聞き取り調査を実施した。
前年度では、東アフリカ諸国間の交易ネットワークの特徴として、1)各国の経済的、文化的、慣習的な衣料品の需要の違いを活かした、商人による循環的な移動がみられること、2)この循環的移動は、結果として国内市場における古着の価格の引き下げを通じて、古着の流通システムを活性化していることを明らかにした。本年度の調査から、4)この商業ネットワークの形成・展開のメカニズムには、エスニシティやナショナリティと商品の価値を結びつける創造的な実践、5)中古品とコピー商品との差別化とそれに基づく流通・消費のあり方が関連していることが明らかになった。ここから、現行の商業ネットワークとは、零細商人たちが直接的にグローバル経済に連結しながら、政府の推進する東アフリカ共同体という大きなローカルに対して独自の経済文化圏を創りだす動きとしてみることができることをより明確に示した。
以上の成果については、2011年度に日本文化人類学会およびBorder Regions in Transition XI、2012年に東京大学と国立民族学博物館で開催された国際ワークショップにて報告をおこなった。ワークショップについては、現在、論文集を出版準備中であり、論文を寄稿するとともに編者を務めている。また、中古品とコピー商品の流通を事例とした現代アフリカの消費文化について単著(光文社)を2012年度内に公表することを目指している。
2010年度活動報告
平成22年度は、東アフリカ諸国の古着および衣料品の流入に対する制度変化の把握と、ケニアとウガンダへ向かうタンザニアの古着/新品衣料品商人の交易ネットワークの調査を行った。