国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2012年1月21日(土)
《機関研究成果公開》シンポジウム「福祉と開発の人類学―ひろがる包摂空間とライフコース―」

  • 日時: 2012年1月21日(土) 10:00~17:45
  • 場所: 国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 言語: 日本語
  • 定員・参加費: 70名・無料
  • 主催: 国立民族学博物館
  • 共催:徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部
  • 後援:九州大学大学院人間環境学研究学府、津田塾大学学芸学部国際関係学科、日本文化人類学会、地域研究コンソーシアム
  • チラシダウンロード[PDF:560KB]

[お問い合わせ]
国立民族学博物館 鈴木紀研究室
E-mail :naito★idc.minpaku.ac.jp ※★を@に置き換えて送信ください。
FAX:06-6878-7503

 

趣旨

本館の機関研究プロジェクトである「ケアと育みの人類学」においては、他者や自己のウェルビーイングへの配慮としての「ケア」を人々が志向し実践することにより、人間関係、環境、そして自らのありかたを、一生を通してどのように変化させてゆくのかという「育み」に関し比較検討することが趣旨の一つである。このことにより、現代社会の諸課題を考察するうえで不可欠の資料を提示しつつ、人間文化研究を深化させることを目的としている。
本シンポジウムの目的は、国家やNGOなどの多様なアクターによる福祉や開発などの諸実践が「社会的弱者」を包摂する場を<包摂空間>という概念で捉え、その空間のありようを比較検討することである。
グローバリゼーションはさまざまなタイプの社会的弱者を新たに生み出しつつ、これまで福祉国家という言葉が例示してきたような社会的包摂の主体としての国家のあり方にも変更を迫っている。とくに近年先進国においては、監視社会やゲーテッドコミュニティの出現にみられる統治の技法や情報テクノロジーの進展とともに、権力による介入の透明化が進んでいる。このような権力による介入は、開発・援助などと関わりながら新興国においても展開している。ところがこれらの問題は、これまで開発、福祉、教育などの異なる領域において別個に議論されてきた。
本シンポジウムではそれらの議論の架橋を意図し、グローバリゼーションのもとで、 社会的弱者の包摂に関わる国家や中間集団と個々人の生の形式とが相互に織りなす空間に注目した民族誌的分析をおこなう。また、それらの空間から生み出される思想やあらたな実践の萌芽、およびそれらの変化の様態について考察する。すなわち、本シンポジウムでは日本の福祉政策の文脈において社会的弱者と位置づけられるホームレスや障害者、および、途上国における開発の文脈において広い意味でマイノリティとされる人びとに対する国家や中間集団による対処のありかたと各人との関わりを、ライフコース分析を基軸に比較検討する。そのためにさまざまな地域における社会的弱者の多様なありようやその包摂、そしてそこでの自己や他者への「ケア」をめぐる問題に関心を持つ若手の文化人類学者を招聘し、議論を深める。

プログラム

10:00~10:05 開会の辞 鈴木七美(国立民族学博物館)
10:05~10:10 館長挨拶 須藤健一(国立民族学博物館)
10:10~10:30 趣旨説明 内藤直樹(徳島大学)
第一部:包摂空間とはなにか?
10:30~10:55 発表 飯嶋秀治(九州大学)
「児童福祉施設における暴力とケア」
10:55~11:20 発表 間宮郁子(国立障害者リハビリテーションセンター)
「障害者福祉施策の転換と精神障害者のケア」
11:20~11:30 休憩  
11:30~11:55 発表 北川由紀彦(放送大学)
「野宿者の包摂と排除」
11:55~12:20 発表 山本直美(関東学院大学キリスト教と文化研究所)
「施設の想定から外れる人びとのコミューンとケア」
12:20~13:00 討論 コメント:山北輝裕(日本大学)
司会:丹羽典生(国立民族学博物館)
13:00~14:00 休憩  
第二部:包摂空間を可視化する
14:00~14:25 発表 内藤直樹(徳島大学)
「難民キャンプにおける共生の技法」
14:25~14:50 発表 丹羽典生(国立民族学博物館)
「開発の進展とコミュニティ再編のインターフェイス」
14:50~15:15 発表 岩谷彩子(広島大学)
「路上は包摂空間になりうるか」
15:15~15:25 休憩  
15:25~15:50 発表 國弘暁子(群馬県立女子大学)
「政策によらない福祉のあり方とは」
15:50~16:30 討論 コメント:丸山淳子(津田塾大学)
司会:佐川徹(京都大学)
16:30~16:40 休憩  
16:40~17:40 全体討論 コメント (1):有薗真代(立命館大学)
コメント (2):沢山美果子(岡山大学)
司会:内藤直樹(徳島大学)
17:40~17:45 閉会の辞 鈴木七美(国立民族学博物館)