国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

中古品と非正規品の越境交易にみる現代アフリカの消費文化に関する研究(2012-2015)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|若手研究(B) 代表者 小川さやか

研究プロジェクト一覧

目的・内容

中古品(リサイクル品)と非正規品(コピー商品、バッタ品)は、近代特有の消費文化から生みだされた特徴的なモノである。中古品は、産業革命以降の大量生産・廃棄の消費システム(使い捨て文化)から生みだされたモノであり、非正規品はイメージや記号の消費に特徴付けられる消費文化を流用して生みだされたモノである。
本研究の対象地域であるアフリカは、この二つの商品の最大の消費地である。
本研究の目的は、先進国や新興国で廃棄/生産され、アフリカ諸国に輸出されているこの二つの商品が、同諸国間を越境交易で循環し消費される過程と、この「モノの履歴」における価値変化の実態を現地調査を通じて明らかにすることにある。また、そこから従来の西欧中心的な消費文化論を、「廃棄から再消費」あるいは「コピーから消費」の世界から再考し、文化人類学の立場から新たな消費文化論を構想することを目指す。

活動内容

◆ 2013年4月より立命館大学へ転出

2012年度実施計画

平成24年度は、消費文化に関する文献研究と、これまでの申請者の研究により状況を熟知している東アフリカ3国(タンザニア、ケニア、ウガンダ)の交易調査を実施し、東アフリカ諸国間交易の全体像の把握に着手する。具体的には、以下の4つの調査研究をおこなう。
1.文献研究と統計資料の分析により、流通ルートや流通量、流通のしくみなどを把握する。
2.すでに調査が進んでいる中古品交易に関して、7月に南アフリカで開催される世界経済史学会で発表する。
3.タンザニア(ムワンザ市)を拠点に東アフリカ諸国に1~2ヶ月滞在し、以下の調査を実施する。
(1)統計資料や政策文書を収集し、行政官に東アフリカ共通市場化の実態とその後の展開について聞き取り調査をする。(2)これまでの研究で作成したムワンザ市の商店567店舗の輸入先リストと交易ルート地図をもとに、各中古品・非正規品の交易経路の実態を調査する。また、それらの商品を扱う交易人を対象として、商品を特定の国に持ち込み/から買い付ける理由などについて調査する。さらに、実際にケニア(ナイロビ市)、ウガンダ(カンパラ市)へと販売/買い付けに向かう商人に同行して、越境や売買、消費に伴うモノの価値の変化について調査する。(3)交易や消費において参照されている鍵概念(たとえば、オリジナリティやフェイク、古さ、速度性など)をリスト化し、これらの概念にかかわる実践や、国家間・民族間・人間間の関係性を調査する。
4.これらの研究成果をまとめて、次年度の計画を練り直すとともに、学会誌等に論文を投稿する。