研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ
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2005年10月8日(土)
~10月9日(日)
《機関研究成果公開》公開フォーラム「多文化共生社会の形成をめざす実践と研究のために―10年の節目から『多文化共生学』を考える―」 -
- 日時:2005年10月8日(土)~10月9日(日)
- 場所:国立民族学博物館 第5セミナー室
- 主催:国立民族学博物館・多文化共生センター
- 対象:多文化共生をテーマとした研究者、実践者、一般(合計定員 100名)
- 参加費:無料(ただし交流会費は別)
趣旨
阪神・淡路大震災から10年がたちました。
外国人被災者への情報提供を行った「外国人地震情報センター」での経験を元に、「多文化共生センター」が設立されたのは1995年10月。それから、まもなく丸10年をむかえます。この間、外国人の増加とその定住化は、日本社会および日本人に対し、摩擦や共生への動きなど多くの影響をおよぼしてきました。その一つが、地域社会に生活する外国人に対する住民、行政、NGOなどの対応の変化です。実践の現場で外国人との対面的な接触と経験の中から生まれてきた支援と、おもに研究者を通じ紹介され、先行的に導入された外国の経験や理論の果たした役割には大きなものがありました。しかし、これら両者は必ずしも有機的に機能しあってきたわけではありません。
今回、この10年の節目を契機に、多文化共生社会にむけての実践と研究の協調をめざし、それを現場で実践してきた多文化共生センターと特別展「多みんぞくニホン」や機関研究「トランスボーダーの人類学」など文化人類学の立場から多文化の共生を重視してきた国立民族学博物館が、共催で公開フォーラムを開催することになりました。
多文化共生社会の形成をめぐる現在の状況を俯瞰し、次の10年を見据えて積極的な研究・戦略を練る重要な機会としたいと考えています。研究、実践の場でこの問題にかかわっている人びとの交流を促進するためにも、多くの方々のご参加を期待しています。
プログラム
第1日:10月8日(土)
13:00 受付 13:30 開会
あいさつ 阿部一郎(多文化共生センター理事長)
基調講演 「特展 ― 多みんぞくニホンと多文化共生社会」 庄司博史(国立民族学博物館教授)14:10~16:30 シンポジウム 「多文化共生社会の形成における実践と研究」
講演・パネリスト
杉澤 経子(武蔵野市国際交流協会)
津田 守(大阪外国語大学教授)
山脇 啓造(明治大学商学部教授)
王 慧槿(多文化共生センター・東京21)
コーディネーター
田村 太郎(多文化共生センター・理事)17:00~19:30 記念交流会(会費は別途、受付にていただきます) 第2日:10月9日(日)
9:30~12:00 テーマ別研究会(1)「多文化社会の現状に関する実践と研究」
テーマ1:エスニックコミュニティの形成 ファシリテータ:杉澤経子(武蔵野市国際交流協会)
北村広美(多文化共生センター)
ブラジル人コミュニティの健康問題に関するニーズ - 相談データより -金迅野(かながわ国際交流財団)
多言語情報の提供・流通 一つの調査から見えたこと高畑幸(大阪市立大学)
名古屋のフィリピンコミュニティと地域住民との「共生」阿部一郎(多文化共生センター)
『創造都市と多文化共生』 - 金沢の事例から -
テーマ2:多言語情報提供の現状と課題
ファシリテータ:庄司博史(国立民族学博物館)
ロッド・マイヤール(NHK放送文化研究所)
在住外国人に災害情報はどう伝わったか - 中越地震被災外国人アンケートから -中野克彦(武蔵大学)
多言語情報提供の現状と課題 - 多文化共生の視点から -金美善(学振特別研究員・民博)
言語景観からみた多言語情報の現状松浦さと子(龍谷大学)
少数者の言語、文化を表現する放送の持続可能なシステムとは
カナダAboriginal Peoples Television Networkの事例から
テーマ3:子どもと教育をめぐる課題と取組みについて
ファシリテータ:藤原孝章(同志社女子大学)
武田真由美(多文化共生センター)
多文化保育園の取組みから今後に向けて王慧槿(多文化共生センター)
東京都23区の実態調査の実態と教育の権利小島祥美(大阪大学)
外国人の子どもの教育に関する実態調査 -「協働研究」から「連携実践」へ 岐阜県可児市を事例にリリアン・テルミ・ハタノ(甲南女子大学)
滋賀県におけるニューカマーの子どもたちを取り巻く教育環境と社会状況
- 子どもくらぶ「たんぽポ」の取り組みから見えてくる課題 -12:00~13:00 休憩 13:00~15:30 テーマ別研究会(2)「共生社会の形成へ向けた実践と研究」
テーマ4:多文化共生をめぐる政策について
ファシリテータ:田村太郎(多文化共生センター)
山脇啓造(明治大学)
多文化共生の推進に関する国と地方自治体の最近の動向近藤敦(名城大学)
国際比較における日本の移民政策の課題と展望 -多文化共生政策を中心として-塩原良和(日本大学)
多文化主義政策における自治体・エスニック組織 ・NPOの連携 シドニーの事例を中心に吉富志津代(多言語センター)
FACIL 多文化共生政策における兵庫県とNGO/NPOの協働 - 現状と課題 -
ファシリテータ:鈴木江里子(現代文化研究所)
田辺徹(多文化共生センター)
外国人相談10年をふりかえって菅井明則(日本財団)
日本財団の在日外国人支援について - 助成事業、自主事業の実績を中心に -長曽我部茜(関西国際交流団体協議会)
NPOと行政の協働でつくる教育サポートシステム
「帰国・渡日児童生徒学校生活サポート事業」の取組みからみえる協働の意義金春男(大阪府立大学)
これからの在日外国人高齢者の介護の課題
異文化に配慮した認知症高齢者ケアを中心に
テーマ6:コミュニティにおける通訳の実践と研究
ファシリテータ:津田守(大阪外国語大学)
重野亜久里(多文化共生センター)
コミュニティにおける保健医療通訳の実践と課題武田千香(東京外国語大学)
多言語多文化社会の求める人材育成をめざして金澤眞智子(NPOアジアハウス・大阪外国語大学)
日本のコミュニティ通訳と通訳者 実践と研究を展望する西松鈴美(大阪外国語大学・スペイン語通訳)
司法通訳翻訳における官民学連携の必要性と課題15:30~16:30 全体総括 成果報告
初日、実行委員長庄司の基調講演では、今回のフォーラムの主旨にそったかたちで、現在の多民族化にともなう日本社会や文化、人びとの意識の変化に対する研究が、外国人支援の実践現場で活動する人びとにくらべ、立ちおくれていることを指摘した。それにつづく講演・パネル討論「多文化共生社会における実践と研究」では、多文化政策、多文化論の研究者、および実践現場で外国人とかかわってきたNGO、行政関係者がそれぞれの分野での現状を概観し、これからの日本の多民族化にむけての方向性などを提言した。
第2日目は、外国人コミュニティ活動の調査、支援活動にかかわってきた研究者、NGO関係者による3セッション(エスニックコミュニティの形成、多言語情報提供の現状と課題、子ども教育をめぐる課題と取り組み)、および外国人政策論、新しい外国人支援事業をとりあげた3セッション(多文化共生をめぐる政策、多文化共生社会の形成とNPO、コミュニティにおける通訳の実践と研究)において24の研究発表があった。これらでは、実践者にとっては、研究者側からの理論、あるいは法制度的枠組みの提示、そして研究者にとっては各地で予想以上にすすんで行われている支援事業などの紹介という面で活発な論議が展開された。また日常それぞれの分野での実践をおこないながら他分野との情報、経験の交流の十分でなかったNGO,行政関係者での間での活発な意見交換がおこなわれた。一方で、多文化共生、NGO活動、多民族化を研究する学生、院生も近隣の大学から多く参加し、通常の学会、研究会ではみられない活動当事者からの発言と意見交換の機会であったと評価された。