国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2011年11月5日(土)
《機関研究成果公開》国際シンポジウム「グローバル支援の時代におけるボランタリズム―東南アジアの現場から考える」

  • 日時:2011年11月5日(土) 10:30~18:00
  • 場所:国立民族学博物館第4セミナー室
  • 使用言語:日本語・英語(同時通訳あり)
  • 主催:国立民族学博物館
  • 後援:日本文化人類学会
  • 参加方法:シンポジウム事務局までメールで事前申し込みをしてください。
  • 定員・参加費:40名・無料
  • 事前申し込み・お問い合わせ:シンポジウム事務局 volunteer[at]idc.minpaku.ac.jp
    ( [at]を@に替えて送信してください)
  • チラシダウンロード[PDF:1.75MB]
 

趣旨

今日、国際協力や開発援助に関わる支援活動は世界各地で行われています。また、そのような国際的な活動もさることながら、阪神淡路大震災や東日本大震災などの例からも分かるように、国内的な支援活動もまた、日本のみならず世界各地で一層活発化しています。加えて、これら二つの活動が結びついて、グローバルなネットワークを形成している場合も少なくありません。こうした今日の支援活動について考えるうえで無視することができないものの一つに、ボランティアがあります。また、それと関連して、NGOやNPOなども各種の支援活動のなかで重要な役割を果たしています。
そこで、本国際シンポジウムでは、とくにマレーシアの先住民とタイの少数民族の支援活動の事例を取り上げることで、ボランティアやNGO、さらには支援活動に関わっている文化人類学者などの活動のあり方や役割について具体的に検討します。また、これら支援者の活動がその対象となる人々や社会にどのような社会的・政治的な作用を与えているのか、逆に支援者が活動を通じて人々や社会の側からどのような作用を受けているのかといった点についても考えます。

プログラム

司会:鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
10:30~10:35 「開会挨拶」 須藤健一(国立民族学博物館長)
10:35~11:20 「ボランタリズムへの視座-趣旨説明に代えて」 白川千尋
11:20~12:05 「NGO活動の現場における人類学者のポジショナリティ-マレーシア先住民社会のフィールドワークから」 信田敏宏
12:05~13:15 昼食
司会:信田敏宏
13:15~14:15 「アクティヴィズム閾値を乗り越える-マレーシア先住民、オラン・アスリの権利を求めて」 コリン・ニコラス
14:15~15:15 「コミュニティに根ざしたプロジェクトによるマレーシア先住民のエンパワーメント-コミュニティ・マッピングとマイクロ水力発電の事例から」 アドリアン・ラシンバン
15:15~15:25 休憩
15:25~16:25 「支援と時間-タイ山地民リスの文化振興活動への段階的参与の経験から」 綾部真雄
  司会:白川千尋
16:25~16:40 「コメント」 杉田映理
16:40~16:55 「コメント」 宇田川妙子
16:55~17:55 「総合討論」
17:55~18:00 「閉会挨拶」 鈴木紀

発表者・コメンテーターのプロフィール

◆白川千尋
国立民族学博物館先端人類科学研究部准教授。専門は文化人類学。主な研究地域はメラネシア、東南アジア。伝統医療、呪術、国際協力ボランティアなどの研究を行うとともに、マラリア対策を中心とする国際医療協力活動にも関わってきた。主な出版物に、『人類学と国際保健医療協力』(共編著、2008年、明石書店)などがある。
◆信田敏宏
国立民族学博物館研究戦略センター准教授。専門は社会人類学。主な研究地域はマレーシア。開発、イスラーム化、エスニシティなどをテーマに、マレーシア先住民オラン・アスリを対象とした研究を行っているが、最近では、NGO活動とコミュニティとの影響関係に関心を持ち、研究を進めている。主な出版物に、『周縁を生きる人びと-オラン・アスリの開発とイスラーム化』(単著、2004年、京都大学学術出版会)などがある。
◆コリン・ニコラス
マレー半島の先住民オラン・アスリの権利に関わる問題に取り組むマレーシアのNGO、オラン・アスリ研究センター(COAC: Center for Orang Asli Concerns)の創設者・コーディネーター。 オラン・アスリの土地権をめぐる裁判ではオラン・アスリ側に立って支援するなど、主にオラン・アスリの権利擁護のためのアドボカシー活動に従事している。オラン・アスリを含む先住民問題に関する論文・著作を多数執筆。また、鋭い感覚をもった写真家・映像作家としても知られている。
◆アドリアン・ラシンバン
TONIBUNG事務局長、JOAS(マレーシアの先住民ネットワーク)テクニカル・アドバイザー。マレーシアのNGOのTONIBUNGは、マレー半島、サバ、サラワクの先住民の集落で、マイクロ水力発電などの再生可能エネルギーやそのほかの適正技術の普及活動を通じて、先住民の人々の支援活動を行っている。
◆綾部真雄
首都大学東京人文科学研究科准教授。専門は社会人類学、文化人類学。研究テーマはエスニック・アイデンティティ論、少数民族・先住民問題、タイ地域研究など。近年は、タイ北部山地民リスの民族文化振興活動の支援にも携わっている。主な出版物に、『エイズ教育と伝統的価値体系-北部タイ農村のフィールドワークから』(共著、1999、健学社)、『辺縁のアジア-<ケガレ>が問いかけるもの』(共編著、2007年、明石書店)、『私と世界-6つのテーマと12の視点』(編著、2011年、メディア総合研究所)などがある。
◆杉田映理
東洋大学国際地域学部准教授。専門は開発人類学、文化人類学。研究テーマは社会開発や水・衛生分野における社会的・文化的側面の研究、アフリカ地域研究など。国際協力機構(JICA)職員および客員専門員として社会開発や給水・衛生改善プロジェクトに携わってきた。主な出版物に、Increasing Quantity of Water: Perspectives from Rural Households in Uganda.(Water Policy, 2006, 8:529-537)、「下痢の民俗病因論と下痢症削減対策をめぐって-ウガンダの事例からの再考」(松園ほか編『人類学と国際保健医療協力』、2008年、明石書店、pp.87-116)などがある。
◆宇田川妙子
国立民族学博物館民族社会研究部准教授。専門は文化人類学。主な研究地域はイタリア。ジェンダー・セクシュアリティや家族・親族に関する研究を中心に行っているが、近年ではヨーロッパの市民運動に関心をもち、調査を進めている。主な出版物に『ジェンダー人類学を読む』(共編著、2007年、世界思想社)などがある。