国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

藤井龍彦教授退官記念公開シンポジウム「歴史の山脈―日本人によるアンデス研究の回顧と展望」

  • 日時:2004年2月21日(土) 10:00~18:00
  • 場所 :国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 参加費:無料(事前登録は不要)
  • 主催:国立民族学博物館
 

ごあいさつ 松園万亀雄

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東大文化人類学の教室でアンデスの調査が始まって、去年で45年だそうです。折良く、というのも表現が悪いですが、藤井さんが ─ 民博ではフジタツさんと呼ばれていますが ─ 今年で退官になるというのでこのシンポジウムをやることになりました。たいへん意義深いことだと思います。

藤井さんは民博にちょうど30年勤められました。数日前、3人の教授が定年前でお辞めになることになったので、その最終講演会を民博内でやりました。その3人のうち、田邊さんが藤井さんと同じように民博が最初の就職先で、今年お辞めになるということでした。民博絶滅危惧種、民博でずっと勤め上げたという人がだんだん少なくなっている、ということを申し上げましたが、これはあまりよい表現ではなかったようです。でも、藤井さんはこういうお人柄だから、さらっとして受け入れてくれると思います。

さきほど私は民族学会の年表みたいなものを見ていたんですが、東大の最初のアンデス調査は1958年、ですから今年で46年になるわけですね。この頃まだ科研費による海外調査は始まっていない。科研費が始まったのは1963年です。それ以前におこなわれた規模の大きな海外調査としては、東南アジア稲作民族文化調査が1957年、それから東大のイラク・イランの調査が1956年、これは江上波夫さんが代表者だったと思います。ですから56年、57年、58年と、この頃は科研がないので資金の手当てが大変だったと思います。
石田英一郎、泉靖一、岡正雄、古野清人、馬淵東一、こういった人たちが戦後、民族学、文化人類学の学部の専門コースをつくったり、大学院をつくったのですが、ただいまから「日本のアンデス調査45年」という報告をしてくださる大貫良夫さんは、その人たちに教えられた人。ですから戦後の文化人類学第二世代。大貫さんとか友枝啓泰さんたちは、そのなかでも先頭の人たち、私どもはそれよりちょっと遅い世代です。今、さかんに活躍なさっている人たちをふくめて、戦後の日本人によるアンデス研究を回顧するということですので、意義深いシンポジウムだと思います。

藤井さんとは、私も赴任以来1年間、いろいろとおつきあいさせていただきました。藤井さんという人はご承知のようにさっぱりしたお人柄です。落語の熊さん八つぁんたちが住んでいる長屋の大家さんのような風格を持つ方だと、私はずっと思っていました。藤井さんという人は現状認識はしっかりしてらっしゃるんですが、時々、そもそもという話をする。原則論みたいなものが、ところどころ出る。それによって熊さん八つぁんである館員は、煙に巻かれたり、うるさいおやじだなとおもったり。要するに老練な調整役といった感じだったと思います。そういう意味で民博のさまざまな運営に貢献されてきました。みなさんもよくご承知のことですから、民博のアンデスの標本収集やさまざまな共同研究をされてきたことなどは、これ以上申し上げません。今日は、熱心な討論が展開されることを期待しています。藤井さんも退官後もますますご活躍されますことを祈念いたしまして、ごあいさつにかえさせていただきます。