国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2009年9月10日(木)
国立民族学博物館 研究戦略センターセミナー「ポストコロニアル世界における私たちのミュージアムと他者のミュージアム ――フランスからの眺望――」
大阪大学グローバルCOEプログラム「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」
「コンフリクトの人文学」セミナー 第35回

  • 日 時:2009年9月10日(木) 16:30~18:00
  • 場 所:国立民族学博物館2階 第3セミナー室
       (参加無料・予約不要)
        ※英語講演、通訳無し
        ※セミナーのみご参加の場合は入館無料です。
 

要旨

対象領域の画定や資料の蒐集、展示方法といったものを通じて、ミュージアムは世界を秩序立ててゆく。ほとんどのミュージアムは、芸術、歴史、文化のいずれを扱うものであれ、特定の共同体について「私たちはだれなのか」という問いに答える語りを提供する限りにおいて、「私たちのミュージアム」であると言える。一方で、人類学やプリミティヴアートなどを扱うようなミュージアムのいくつかは、「他者のミュージアム」である。このようなミュージアムは「他者とはだれなのか」という問いに答えるものである。
私たちと他者との境界が、絶えずぼやけたり引きなおされたりするこのポストコロニアル世界においては、他者のミュージアムの多くは自らを再定義しようと必死になっている。これとは対照的にフランスでは、著名な建築家ジャン・ヌーヴェルによって設計された豪華な他者のミュージアムが2006年、エッフェル塔の近くに開館した。この新しいケ・ブランリー・ミュージアムは、ジャック・シラク大統領によってグローバルな一元化のリスクに対する反対声明として構想され、「原初芸術(Arts premiers)」としてアフリカ、アメリカ、アジアそしてオセアニアの工芸品を展示することで「文化的多様性」を称揚している。これまでの人類学ミュージアム(1938年開館の人類博物館 Mus?e de l'Homme)に代えてこの新しいミュージアムをつくるという選択は、フランスにおける「他者への嗜好 (Taste for the Other)」の変容について何を物語っているのだろうか。この変化した状況下で、アクターであると同時に翻訳者である人類学者の立場とはどのようなものだろうか。
本講演は、フランスの事例を扱うものではあるが、同時に、私たちのミュージアムと他者のミュージアムのあいだの区分が異なったかたちをとっている日本のコンテクストとの比較による対話への呼び水となることを意図している。

講師紹介

ブノワ・ド・レトワル

フランス国立科学研究センター(CNRS)研究員。元EASA(ヨーロッパ社会人類学会)副会長。主要な著書にLe Goût des Autres: De l'Exposition coloniale aux Arts premiers, Flammarion, 2007(『他者への嗜好:植民地博覧会から原初芸術へ』)がある。また編著としてEmpires, Nations and Natives. Anthropology and State-making, Duke University Press, Durham, 2005, (F. Neiburg,L. Sigaudとの共著)がある。

お問い合わせ先

大阪大学大学院人間科学研究科人類学研究室
  e-mail:globalra@hus.osaka-u.ac.jp
  電話:06-6879-8085 / 06-6877-5111

国立民族学博物館研究協力課研究協力係
  e-mail:kenkyok @idc.minpaku.ac.jp
  電話:06-6878-8209