国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2009年5月29日(金)
第4回人類学関連学会協議会合同シンポジウム「飽くなき食への希求をめぐって」

  • 日時:2009年5月29日(金) 13:30~17:05(開場13:00)
  • 場所:国立民族学博物館 講堂
  • 定員:450名(参加無料・申込不要)
  • 共催:日本文化人類学会・国立民族学博物館
  • お問い合せ先:国立民族学博物館 企画連携係
           TEL:06-6878-8210(平日9時~17時)
  • チラシダウンロード[PDF:779KB]
【司会】
  • 曽我亨(弘前大学:日本文化人類学会)
【パネリスト】
  • 甲田勝康(近畿大学:日本生理人類学会)
  • 竹中晃子(名古屋文理大学:日本霊長類学会)
  • 松井章(奈良文化財研究所埋蔵文化財センター長:日本人類学会)
  • 阿良田麻里子(国立民族学博物館:日本文化人類学会)
【コメンテーター】
  • 安室知(神奈川大学常民文化研究所:日本民俗学会)


食物の獲得は、生物の生存と繁殖に大きな影響を及ぼす基本的な要素であり、その生物の社会のありかたをもっとも基層的な部分で規定している。これは自然社会に生きるヒトにもあてはまる話である。また、近年の食をめぐる議論をみていると、たとえば食糧のバイオ燃料への転化が飢餓を増長していると問題視されたり、食の安全保障が崩壊していると警告されたりしているように、「食」はグローバルなレベルで、人類社会のあり方を規定しつつあるように思える。その一方で、たとえば義務化されたメタボリック検診が話題になったり、ダイエットが人びとの関心を惹いたり、反対に大食い大会や食べ歩き番組が根強い人気を集めたりしているように、「食」は欲求と自制のあいだで、人格といった個人的な領域をも評価の対象にしつつあるように思えるのである。こうした現代的な現象の根底にも、霊長類のなかでも例外的なヒトに固有の食慣習が関係している可能性が高い。一説には、食慣習のありかたの変化そのものが、人類を進化させたとの意見もあるほどである。 このシンポジウムでは、人類学関連学会協議会に参加している各学会からパネリストを募り、人類の飽くなき食への希求をめぐって、それぞれの学問領域からアプローチする。基層的な個体の次元からグローバルな社会の次元まで、多様な考えを述べあい、学際的な接続を試みたい―。

プログラム

13:30~13:45 開会の挨拶
  山本真鳥(日本文化人類学会会長)
  須藤健一(国立民族学博物館館長)
13:45~13:55 趣旨説明
  曽我亨(弘前大学:日本文化人類学)
13:55~14:25 「栄養ストレスによる老化制御と疾病予防」
  甲田勝康(近畿大学:日本生理人類学会)
14:25~14:55 「倹約遺伝子に見いだされたヒト化に伴うゲノム進化」
  竹中晃子(名古屋文理大学:日本霊長類学会)
14:55~15:05 休憩
15:05~15:35 「肉食の忌避という虚構―動物考古学からの視点―」
  松井章(奈良文化財研究所埋蔵文化財センター長:日本人類学会)
15:35~16:05 「文化としての食とその変化―インドネシアの事例から―」
  阿良田麻里子(国立民族学博物館:日本文化人類学会)
16:05~16:15 休憩
16:15~16:25 安室知(神奈川大学常民文化研究所:日本民俗学会)
16:25~17:00 討論
17:00~17:05 閉会の挨拶
  田村克己(国立民族学博物館副館長)

プロフィール

曽我亨(弘前大学人文学部准教授)
専門は生態人類学および東アフリカを中心とする牧畜社会研究。牧畜社会の紛争問題や、難民問題に関心をもっている。著書に『自然の資源化』(弘文堂、2007年)などがある。
甲田勝康(近畿大学医学部准教授)
専門は公衆衛生学。先進国のみならず発展途上国で急増する肥満に対して、小児期からの予防活動を地域保健と学校保健の連携ですすめている。一方で自由摂食と食事制限のもつ意味について研究している。
竹中晃子(名古屋文理大学健康生活学部健康栄養学科教授)
霊長類の遺伝子、特にヘモグロビン、高コレステロール血症、倹約遺伝子など自然環境に生息している霊長類の環境に関わる遺伝子に関心を持っている。『遺伝子の窓から見た動物たち フィールドと実験室をつないで』(竹中 修企画、村山美穂、渡邊邦夫、竹中晃子編 京都大学学術出版会、2006年)などがある。
松井章(奈良文化財研究所 埋蔵文化財センター長、京都大学大学院客員教授)
専門は動物考古学。特に動物と人間との文化史を遺跡出土の動物遺存体から明らかにすること。主要著作に、『動物考古学』(京大出版会、2008年)、『環境考古学への招待』(岩波新書、2005年)、『環境考古学マニュアル』(編著、同成社、2003年)、『環境考古学ー日本の美術423』(至文堂、2001年)、『考古学と動物学 考古学と自然科学2』(共編著、同成社、1999年)などがある。
阿良田麻里子(国立民族学博物館外来研究員、摂南大学・武庫川女子大学・同志社女子大学ほか非常勤講師)
専門は、言語人類学および食文化研究。インドネシアの言語と食文化を中心に研究している。著作に『くらべてみよう!日本と世界の食べ物と文化』(共著、講談社、2004年)、『世界の食文化6 インドネシア』(農文協、2008年)などがある。
安室知(神奈川大学教授)
専門は、民俗学で、とくに生業論、環境論、物質文化論に関心を持つ。日本および東アジアをフィールドに、稲作地帯の生業複合について研究する。著作に『水田漁撈の研究』(慶友社、2005年)、編著に『日本の民俗4ー食と農』(吉川弘文館、2009年)などがある。