国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アボリジニ社会とオーストラリア行政の関係史

共同研究 代表者 久保正敏

研究プロジェクト一覧

2001年度

オーストラリア北部準州のノーザンテリトリ等、「伝統的」とされるアボリジニ社会は、1970年代末以来の先住民土地権の制度化だけでなく、文化政策、労働政策、開発政策、観光政策などオーストラリア国内の諸政策と連動し、目覚ましい変化をみせてきた。さらに、それに呼応して諸政策も変化している。本研究では、史料の発掘をおこないながら、アボリジニ社会や文化変化のミクロな記述と、さまざまなレベルの政策変化のマクロな記述を総合し、アボリジニ社会と対アボリジニ政策との動的な関係史の記述と分析を試みる。世界的に先進的とされるオーストラリアの先住民諸政策と先住民社会との相互作用を明らかにする本研究は、今後、日本も含め世界各国や地域で顕在化してくるに違いない、先住民との間の問題を解決し、先住民政策を展開するうえでの具体的な指針や示唆を示すことが期待できる。

【館内研究員】 小山修三
【館外研究員】 有満保江、上橋菜穂子、鎌田真弓、金田章裕、窪田幸子、五島淑子、杉藤重信、並河恵美子、堀江保範、松本博之
研究会
2001年6月17日
窪田幸子「植民地経験と現在 ─ アボリジニとイヌイットの比較から」
久保正敏「オセアニア展示リニューアル解説」
全員「展示合評」
2001年7月22日
飯嶋秀治「ホームレスと物乞い ─ アリススプリングスから/へ」
保苅実「アボリジニの<近代> ─ 19世紀グリンジ社会と植民地牧場業の接触」
2001年11月17日
堀江保範「マニングリダ史から見る対アボリジニ行政」
久保正敏「研究情報の共有と発信に関するシステム形成について」
2001年12月23日
上橋菜穂子「アボリジニの置かれてきたダブルバインド状況についての一考察」
佐和田敬司「演劇が映し出す現代の先住民」
2002年1月19日
全員「アーカイブズ資料整理」
2002年2月2日
杉藤重信「インターネットの中の祖先探し ─ アライアンス・プロジェクト」
五島淑子「マニングリダ・ストアの食品 ─ 1985-1995の分析」
2002年3月16日
全員「研究総括及び出版打ち合わせ」
研究成果

本研究は、個々人を対象とするミクロな民族誌的記述・分析に、行政資料調査を中心とするマクロな政治・経済的分析を加えて総合化し、対先住民政策とアボリジニ社会・文化の相互作用を、歴史的・文明史的・計量的に明らかにするのが目的である。そのため、1978年まで連邦政府の直轄下にあったノーザンテリトリ内に1962年、人工的に作られた町マニングリダ(MGD)に注目し、同町に関する貴重な資料として、1969年に法人化されたMGD Progressive Association(MPA)の議事録、MPAが創設の母胎となり1969年~1974年まで刊行された町内新聞MGD Mirage、およびその後身であるGobalgu Jurra(1977年~1998年)、そしてアウトステーション支援機関として1979年に法人化されたBawinanga Aboriginal Corporationの議事録、等を収集した。これらと、別途入手した各種の関連政策資料とを付き合わせながら相互作用の分析を進め、その中から、二大政党制度のもと、政権交代に伴う政策変更がコミュニティ現場の内部対立を顕在化させ、それがアボリジニ内部の文化的・政治的運動を引き起こすこと、それがまた中央政府の政策とも相互作用すること、と言ったダイナミズムが明らかとなった。本研究では同時に、収集した資料をデジタル化・データベース化し、関係機関・現地と共有することも目的としており、近々、分析結果の公刊とともに、CD-ROMを作成・配布する予定である。

2000年度

ノーザンテリトリー等「伝統的」アボリジニ社会は、先住民土地権の制度化だけでなく、文化政策、労働政策、開発政策、観光政策などオーストラリア国内の諸政策と連動し、目覚ましい変化を見せてきた。さらに、それに呼応して諸政策も変化している。本研究では、史料の発掘を行いながら、アボリジニ社会や文化変化のミクロな記述と、さまざまなレベルの政策変化のマクロな記述を総合し、アボリジニ社会と対アボリジニ政策との動的な関係史の記述と分析を試みる。

【館内研究員】 小山修三
【館外研究員】 有満保江、上橋菜穂子、鎌田真弓、金田章裕、窪田幸子、五島淑子、杉藤重信、並河恵美子、堀江保範、松本博之
研究会
2000年9月30日~10月1日
久保正敏「2000年8月調査報告」
全員─「次年度に向けての研究計画討議」
2000年12月17日
松本博之「マリンタイトルをめぐって」
久保正敏「NTのインフラ史(1)道路」
2001年2月11日
堀江保範「2000年8月調査報告」
全員─「成果のまとめ方について」
2001年3月9日
Keali’i’olu’olu Gora International Indigenous Movements and the Hawaiians
コメンテーター:清水昭俊