国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本の多言語化現象についての総合的研究

共同研究 代表者 庄司博史

研究プロジェクト一覧

2001年度

近年の定住・半定住外国人の飛躍的増加は、人々が異言語と地域、職場等で日常接触するという状況を生みだした。またエスニック・ビジネスやエスニック・メディアを通じ外国語による活動が顕在化し、行政、民間においても外国人への外国語による対応が始まり、社会的な多言語化が進行しつつある。また一方では、日本語内部にも、方言、手話日本語、また位相言語などさまざまなバリアントの存在が認知され、その話者、使用者においても、社会的存在としての帰属意識が高まってきている。当研究においては、エスニック集団の言語状況やその他もふくめた多言語化の実態を、世界的な情勢変化や他国の例と比較しながら検証するとともに、日本人の言語意識や社会制度にもたらす影響を明らかにする。

【館内研究員】 江口一久、新免光比呂、南真木人
【館外研究員】 青木直子、井上史雄、岡戸浩子、真田信治、白水繁彦、高畑幸、田嶋淳子、ダニエル・ロング、中野克彦、原聖、藤井幸之助、前田達朗、前田理佳子、安田敏朗
研究会
2001年5月26日
前田達朗「エスニック集団としての『在日』と言語意識」
中野克彦「日本における外国語支援を中心とするNGO運動」
2001年7月14日~15日
安田敏朗「近代日本の多言語性認識の諸相──戦前期言語学者の言語問題の議論から」
原聖「パリ・ユネスコ・シンポジウム──情報社会における多言語使用」
2001年10月13日~14日
藤井幸之助「大阪における行政の多言語サービス」
金美善「大阪市生野区周辺の在日コリアンにおける民族語教育」
2001年12月15日
高畑幸「アジア諸国におけるフィリピン人向けエスニックメディア──在日フィリピン人向けメディアの分析」
2002年3月9日
全員「まとめのための討論」
研究成果

本共同研究は基本的にメンバー各自が日本の多言語化とのかかわりで進めている研究を研究会において発表し、論議を進めるなかで、全体として日本の多言語化現象を明らかにしようするものであった。おもな研究対象として、1)いくつかのエスニックグループにおける言語使用と言語保持の試み、2)ホスト社会との言語的接点ともいえる、エスニックメディア、行政の多言語サービス、NGOの言語情報支援、3)日本の一般的外国語需要や関心の指針としての外国語教育と外国語産業、さらに4)今日の多民族化による多言語現象を相対化する手段として、かつて植民時代の言語政策、小笠原に存在した多言語社会、方言意識などがとりあげられた。ホスト社会とさまざまなエスニックコミュニティーとの日常的な言語接触の実態、日本人の言語意識の変容については、今後の課題であるが、近年の多言語化現象は今まで日本が経験したことのない規模と質をもって進行していることがあきらかになった。

2000年度

近年の定住外国人の飛躍的増加は人々が異言語と地域、職場等で日常接触するという状況を生み出した。またエスニックビジネスやエスニックメディアを通じ外国語による活動が顕在化する一方、行政、民間においても外国人への外国語による対応が始まり、社会的な多言語化が進行しつつある。当研究においては、エスニック集団の言語状況や多言語化の実態を検証するとともに、日本人の言語意識や社会制度にもたらす影響を明らかにする。

【館内研究員】 江口一久、新免光比呂、南真木人、リーッカ・ランシサルミ(COE)
【館外研究員】 青木直子、井上史雄、真田信治、白水繁彦、高畑幸、ダニエル・ロング、中野克彦、原聖、広田康生、藤井幸之助、前田達朗、安田敏朗
研究会
2000年6月3日
庄司博史「研究会発足の趣旨について」
井上史雄「外国語産業、教育からみた日本の多言語化状況について」
2000年10月7日
Monica Humi Nonaka「定住化する日系ブラジル人のアイデンティティー変容に関する一考察」
コメンテーター:青木直子
白水繁彦「ハワイにおける多文化をささえるネットワーク・メディア ─ エスニックカルチュラリズムをめざして」
2000年12月16日
「異文化交流メディアとしての『外国語』に関する一考察 ─ CSデジタルテレビ放送による『KNテレビジョン』を題材として」
真田信治「ネオ方言発生のメカニズム」
2001年2月23日
田嶋淳子「関東地域の在日エスニック集団の動向」
ダニエル・ロング「小笠原諸島の多言語社会」
2001年3月6日~7日
岡戸浩子「『多言語社会』と『外国語教育の在り方』 ─ 『多様化』をめぐる調査を中心として」
中村淳「『琉球方言』をめぐる葛藤」
安場淳子「中国帰国者の言語世界」