国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

南アジア音楽・芸能研究の再検討

共同研究 代表者 寺田吉孝

研究プロジェクト一覧

2001年度

北米民族音楽学における南アジア音楽・芸能の研究は、1980年代にそれまで主流だった音楽学的な方法から人類学的視点を重視する研究に移行するようになり、それ以降、ジェンダー、歴史性、文化の生産、ディアスポラなどの問題ヘの関心を取り入れながらさらに多様化してきた。しかし、これまでの日本においては、音楽学出身の研究者と音楽・芸能に興味をもつ人類学者との学問的交流が十分になされておらず、研究は停滞している。本共同研究では、各メンバーの研究の視点・方法論を相互に検討することによって、音楽学と人類学を統合する新しい方向性を探ることを目的とする。その作業は、日本における南アジア音楽・芸能研究の特異性をあらためて認識し、独自の研究視点の可能性を模索するプロセスにもなろう。

【館内研究員】 杉本良男、福岡正太、南真木人
【館外研究員】 井上貴子、大谷紀美子、小日向英俊、渋谷利雄、鈴木正崇、田中多佳子、田森雅一、的場裕子、八木祐子
研究会
2001年5月12日~13日
的場裕子「カルナータカ音楽におけるラーガの理論と実際」
寺田吉孝「ブラーマン音楽文化への挑戦としてのタミル・イサイ」
鈴木正崇「タイヴァとブーターカルナータカ南部の儀礼と祭文」
杉本良男「少年よ大志をいだけ──ボーイズ・カンパニーとタミル・ナショナリズム」
井上貴子「歴史を演じる人──タンジャーヴァールのテルグ語音楽芸能の事例から」
2001年9月29日
田中多佳子「クリシュナ神をめぐる宗教歌の再構築──聖地ブラジュの主要諸派の儀礼から」
田森雅一「歴史の中のガラーナー──北インドにおける音楽財産の伝承と社会関係の変化を中心に」
2001年1月12日~13日
サムアン・サム「カンボジアのインド化について」
袋井由布子「南インド、ヒンドゥー教寺院ゴプラにおける舞踏表現」
南真木人「在留ネパール人労働移民と音楽」
福岡正太「小泉文夫とインドの『民族音楽』」
全体討論「研究成果取りまとめに関する全体討論」
研究成果

今年度は3回の研究会(計5日間)を開き、インドの事例を中心とした11本の発表と討論を行った。発表の対象は、南北インド古典音楽、南インドの儀礼音楽・地方音楽芸能・劇団・音楽運動・舞踊彫刻、北インドの宗教歌、在日ネパール人の音楽文化、日本におけるインド音楽研究のパイオニアなど多岐にわたった。そのなかで古典音楽における理論と実践の相互補完性、支配的言説の歴史化の必要性、音楽の伝承と演奏家の社会関係の不可分性、音楽・芸能とナショナリズムの親密な関係、日本における南アジア音楽・芸能の受容に関する本格的研究の欠如などの諸問題が明らかになった。

2000年度

民族音楽学における南アジア音楽・芸能の研究は、1980年代にそれまで主流であった音楽的・記述的な方法から人類学的視点を重視する研究に移行するようになり、それ以降、ジェンダー、歴史性、文化の生産などの問題への関心を取り入れながらさらに多様化してきた。本研究会は、南アジア、欧米の研究動向および日本における南アジア音楽・芸能研究の問題点を検証し、独自の研究ポジションの可能性を模索する。

【館内研究員】 杉本良男、福岡正太、南真木人
【館外研究員】 井上貴子、大谷紀美子、小日向英俊、渋谷利雄、鈴木正崇、田中多佳子、田森雅一、的場裕子、八木祐子
研究会
2000年6月10日
寺田吉孝「共同研究の趣旨について」
全員「今後の研究方針についての共同討議」
2000年12月2日~3日
渋谷利雄「スリランカの大衆歌謡と社会変動」
村上和之「パキスタンにおける黒人系マイノリティーの音芸文化について」
Marie Gillespie ─ Asian Underground in the UK
2001年1月13日~14日
小日向英俊「インドの打楽器と音象徴性研究序説」
大谷紀美子「メモーニックスとしてのショルカトゥ ─ バラタナーティヤム学習時における効用」
八木祐子「北インド農村社会の変化と民族歌謡 ─ 女性の歌を中心に」
2001年2月23日~24日
関連資料収集
大野徹「ラーマーヤナ ─ 東南アジアにおけるそのひろがり」
全員「討論」
2001年3月12日
松岡環「見たいアジア・見せたいアジア ─ アジア映画紹介の現状と問題点」
旦匡子「日本におけるアジア映画配給事情 ─ 一本のインド映画が日本の映画館で上映されるまで」
星川京児「日本、あるいは世界マーケットにおけるインド音楽の位置」
中川博志「日本のインド音楽受容と今後」