国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

ポスト「新秩序体制」インドネシアにおける地方的アイデンティティの人類学的研究

共同研究 代表者 中村潔(客員)

研究プロジェクト一覧

研究成果刊行物
杉島敬志・中村潔編、2006.8『現代インドネシアの地方社会―ミクロロジーのアプローチ』東京:NTT出版
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2002年度

中央集権的なスハルト政権(「新秩序体制」)崩壊後、「地方」や「民族」の求心力と、国家的統合との間のせめぎ合う関係がさらに顕著にみられるようになった。本研究会では、地方社会における具体的な資料にもとづいて、国家的統合のすすめられる中で同時に進行している民族的・地方的なアイデンティティ形成について議論すること、国民国家と民族文化の動態に関し、人類学的視座から理論的貢献をすることを目的とする。中央主導型から地方分権へと大きく転換した政策の下で地方の社会がどのような状況にあるかを探求することは、国家的課程のうちに文化が創られてきたという近年の人類学の認識に新たな知見をもたらすと期待される。また、民族/宗教対立・分離独立運動など国民国家の枠組みと地域社会や民族集団との相克は広く見られ、本研究会での議論は、例えばオセアニアの諸国家との比較研究のような、より一般的な研究の基となると考える。

【館内研究員】 阿部健一、福岡正太
【館外研究員】 石川登、梅田英春、鏡味治也、杉島敬志、中川敏、水野廣祐
研究会
2002年5月25日(土)10:30~(第2演習室)
石川登「ぼやける国のかたち:西カリマンタン国境地帯からの報告」
水野廣祐「西ジャワ農村における行政組織と住民組織 ─ 民主化と地方分権化のなかで」
2003年3月8日(土)10:00~(第4演習室)
「研究会の総括と成果出版のための打ち合わせ」
研究成果

研究会最終年度の本年度は、研究会参加者による以下のような発表と、研究会の総括および成果出版のための打ち合わせを行った。
研究発表:石川登「ぼやける国のかたち:西カリマンタン国境地帯からの報告」
水野廣祐「西ジャワ農村における行政組織と住民組織──民主化と地方分権化のなかで」

2001年度

中央集権的なスハルト政権(「新秩序体制」)崩壊後、「地方」や「民族」の求心力と、国家的統合との間のせめぎ合う関係がさらに顕著にみられるようになった。本共同研究では、国家的統合が進められる中、同時に進行している民族的・地方的なアイデンティティ形成について、地方社会における具体的な資料に基づいて議論し、国民国家と民族文化の動態に関して、人類学的視座から理論的貢献をすることを目的とする。中央主導型から地方分権へと大きく転換した政策のもとで地方の社会がどのような状況にあるかを探求することは、国家的過程のうちに文化が創られてきたという近年の人類学の認識に新たな知見をもたらすと期待される。また、民族/宗教対立・分離独立運動など国民国家の枠組みと地域社会や民族集団との相克は広く見られ、本共同研究での議論は、例えばオセアニアの諸国家との比較研究のような、より一般的な研究の基礎となるであろう。

【館内研究員】 阿部健一、福岡正太、吉田集而
【館外研究員】 石川登、梅田英春、鏡味治也、杉島敬志、中川敏、水野廣祐
研究会
2001年5月26日
金子政徳「結婚にみる社会文化変化──ランプン・プビアン社会の事例」
2001年6月16日
松井和久「スラウェシからみた地方分権化」
西芳実「アチェ独立運動の起源と展開」
2001年7月7日
水野廣祐「otonomi dearahにおける財政問題」
梅田英春「現代バリにおけるダランの宗教性」
2002年1月26日
杉島敬志「今年5月の『人身供犠』事件をめぐる考察──東ヌサテンガラ州・中部フローレス」
福岡正太「国際スンダ文化会議をめぐって──地方分権化の中の『スンダ文化』」
2002年3月8日~9日
中川敏「出稼ぎと婚資──NTT州エンデ」
中村潔「地方分権化における慣習村と行政村──バリ州カランガスム」
梅田英春「文化審議育成委員会の諸活動とその成果」
鏡味治也「新地方自治法実施初年度のバリ州・県政府の実情」
阿部健一「泥炭湿地林の新たな町(パンカラン)」
研究成果

本研究会でカバーしていない地域(ランプン・アチェ・スラウェシ)について特別講師に出講していただいた。研究会参加者による発表は以下の通り:水野廣祐「otonomi daerahにおける財政問題」、杉島敬志「2001年5月の『人身供犠』事件をめぐる考察──NTT州・中部フローレス」、福岡正太「地方分権化の中の『スンダ文化』」、中川敏「出稼ぎと婚資──NTT州エンデ」、中村潔「地方分権化における慣習村と行政村」、鏡味治也「新地方自治法実施初年度のバリ州・県政府の実情」、阿部健一「泥炭湿地林の新たな町(パンカラン)」、梅田英春「現代バリにおけるダランの宗教性」・「文化審議委員会の諸活動とその成果」。

2000年度

「民族」や「地方」が志向する政治的求心力と国家的統合との間のせめぎ合う関係は、人類学の重要な研究主題である。本研究の目的は、こうした「せめぎ合い」が、現在、顕著にみられるインドネシアを中心に、民族的・地方的なアイデンティティ形成について、東南アジア島嶼地域の実地調査の知見に基づいて議論を交わし、現代国家や世界システムを背景とした地方社会の動態を記述・分析する新たな概念的枠組みを探求することにある。

【館内研究員】 阿部健一、杉島敬志、福岡正太、吉田集而
【館外研究員】 石川登、梅田英春、鏡味治也、中川敏、水野廣祐
研究会
2000年7月8日
鏡味治也「地方分権のゆくえ」
2000年10月21日~22日
中川敏「町と村 ─ 東インドネシアの村の近代」
中村潔「宗教・慣習・行政 ─ バリ州における『伝統』」
2001年2月3日
全員「2000年度研究会の総括と次年度の研究打ち合わせ」
2001年2月24日
全員「次年度研究打ち合わせ」
2001年3月3日
全員「次年度研究打ち合わせ」
研究成果

本年度の研究会では、本研究会と並行して遂行される計画の現地調査の準備として、「新秩序体制」崩壊後のインドネシアの地方社会の把握で問題となる点を検討した。鏡味治也(金沢大)、中川敏(大阪大)、中村潔(新潟大)の発表があり、「地方分権化」の重要性が確認された。さらに2001~2003年の調査計画(科学研究費申請、インドネシア科学院調査許可申請)を検討した。