国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

西部太平洋島嶼民の居住戦略:資源利用と外界接触

共同研究 代表者 印東道子

研究プロジェクト一覧

研究成果刊行物
『環境と資源利用の人類学 ― 西太平洋諸島の生活と文化』 明石書店 2006年3月28日
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2004年度

西部太平洋地域には火山島およびサンゴ島が混在し、個々の島がもつ自然資源の偏差は極めて大きい。特に陸上資源の貧弱なサンゴ島が多い中央ミクロネシアでは、豊富な資源を持つ火山島との島嶼間交易(サウェイ)がさかんに行われてきており、それに関する文化人類学的な先行研究は多い。

本研究では、研究対象をミクロネシアに限定せず、沖縄から台湾、フィリピンまでをも含めたより広い範囲の島々を対象とすることによって、熱帯島嶼環境における資源利用の普遍的特徴をあきらかにしようとするものである。島内の資源利用の様相はもとより、島外との文化接触を通じた資源入手のメカニズムやその重要性を多様な角度から検討し、異なった視点からのアプローチに接することにより、参加者の研究へのフィードバックがなされる。

【館内研究員】 野林厚志、ピーター J. マシウス
【館外研究員】 秋道智彌、遠藤央、小川英文、風間計博、片岡修、柄木田康之、須田一弘、須藤健一、高宮広土
研究会
2005年2月26日(土)14:00~(第3演習室)
須藤健一「ミクロネシアにおける資源の利用と保護」
石森秀三「島嶼環境における観光開発と資源利用」
2005年2月27日(日)10:00~(第3演習室)
野林厚志「台湾タオ(ヤミ)の漁撈活動:生業活動と象徴行為の交わり」
「研究成果刊行の打ち合わせ」
研究成果

今年度は、3年間のまとめにも匹敵するような、島嶼部における様々な資源の利用を概観するような発表と、台湾における漁労とそこに見られる資源の象徴化についての意欲的な発表が行われた。また、観光資源という、昨年までの自然資源の利用とは異なった視点からの研究発表もあり、島という限られた環境条件をいかに資源化するか、あるいは、そうすることの難しさなどが明らかになった。

島という環境設定をどのようにとらえるかは様々であるが、資源という切り口を設定してみた場合、その居住環境との関連や自然状態の持つ限界とそれへの挑戦などが浮き彫りにでき、有意義な共同研究となった。なお、この研究は今年度で終了したので、その成果を2005年度内には単行本として出版する予定である。

共同研究会に関連した公表実績
印東道子
2004.11.6 「オセアニアの珊瑚小島における長期家畜飼育とその象徴的価値」第58回日本人類学会大会発表(11月6日長崎大学)
 
2004.12 Prehistoric pig and dog remains from Fais Island, Micronesia. Anthropological Science 112(3):257-267 (Intoh and Shigehara)
小川英文
2004 「川と山の民の考古学事始―フィリピン、ラロ貝塚群の編年研究」考古学ジャーナル、518:29-39
高宮広土
2004 「沖縄先史時代におけるフードストレスについて」『南島考古』23:51-57
 
2004 「沖縄県弥生?平安並行期の植物利用」『考古資料大観12貝塚後期文化』pp.348-351 小学館:東京
 
2004 「沖縄諸島先史時代における植物利用」『琉球列島の先史時代から近世に至る人々の生活誌復元』於琉球大学で研究発表

2003年度

西部太平洋地域には火山島およびサンゴ島が混在し、個々の島がもつ自然資源の偏差は極めて大きい。特に陸上資源の貧弱なサンゴ島が多い中央ミクロネシアでは、豊富な資源を持つ火山島との島嶼間交易(サウェイ)がさかんに行われてきており、それに関する文化人類学的な先行研究は多い。 本研究では、研究対象をミクロネシアに限定せず、沖縄から台湾、フィリピンまでをも含めたより広い範囲の島々を対象とすることによって、熱帯島嶼環境における資源利用の普遍的特徴をあきらかにしようとするものである。島内の資源利用の様相はもとより、島外との文化接触を通じた資源入手のメカニズムやその重要性を多様な角度から研究してゆく。

また、文化人類学のみならず、考古学、生態人類学、植物学、遺伝学、観光人類学など多様なアプローチに接することで新たな研究視点への展開が期待できる。

【館内研究員】 野林厚志、ピーター J. マシウス
【館外研究員】 秋道智彌、遠藤央、小川英文、風間計博、片岡修、柄木田康之、須田一弘、須藤健一、高宮広土
研究成果

今年度は、トンガとフィリピンにおける海洋資源の利用、ミクロネシアの環礁島における植物資源の利用、フィリピンの機織りを伝統工芸資源として考察したものなど、島嶼環境に暮らす人々の資源利用について、多様な視点からの研究が報告された。また、限られた資源環境のなかで、いかに資源を巡る外部社会との交易が行われ、それが政治体型にどのように反映されていたかという考察にまで発展した発表も行われ、資源というキーワードのもと、島嶼環境に暮らす人々の生活、文化を様々な観点から考察する場となった。なお、成果の一部はわかりやすい形で単行本として出版される予定である。

2002年度

西部太平洋地域には火山島およびサンゴ島が混在し、個々の島がもつ自然資源の偏差は極めて大きい。特に陸上資源の貧弱なサンゴ島が多い中央ミクロネシアでは、豊富な資源を持つ火山島との島嶼間交易(サウェイ)がさかんに行われてきており、それに関する文化人類学的な先行研究は多い。 本研究では、研究対象をミクロネシアに限定せず、沖縄から台湾、フィリピンまでをも含めたより広い範囲の島々を対象とすることによって、熱帯島嶼環境における資源利用の普遍的特徴をあきらかにしようとするものである。島内の資源利用の様相はもとより、島外との文化接触を通じた資源入手のメカニズムやその重要性を多様な角度から研究してゆく。

また、文化人類学のみならず、考古学、生態人類学、植物学、遺伝学、観光人類学など多様なアプローチに接することで新たな研究視点への展開が期待できる。

【館内研究員】 野林厚志、ピーター J. マシウス
【館外研究員】 秋道智彌、遠藤央、小川英文、風間計博、片岡修、柄木田康之、須田一弘、須藤健一、高宮広土
研究会
2002年6月29日(土)13:00~(第4演習室)
印東道子「ファイス島における資源利用と居住戦略」
Koji Lum "Genetic perspectives of prehistoric Micronesian population."
2002年10月26日(土)10:00~(第4演習室)
秋道智彌「珊瑚礁資源管理の生態史」
2002年10月27日(日)9:00~(第4演習室)
遠藤央「パラオの外部と内部:パラオ人の居住戦略」
高宮広士「沖縄先史時代における生業戦略の変遷」
研究成果

初年度の2002年は、顔合わせとこの研究会の趣旨を説明した後、西部太平洋地域の人類研究を行うにあたってのバックグラウンド知識を得るため、他分野の第一線で活躍している特別講師の話を交えながら、班員の最先端の研究成果を発表してもらった。本研究会がめざすところの資源利用の特徴や多様性を、今後の研究会で行われる発表や質疑応答によって明らかにしてゆきたい。