国立民族学博物館所蔵資料の保存対策
2003年度
本研究会は、国立民族学博物館が所有する標本資料、図書資料、映像音響資料などの各種研究資料を総括的に捉えた上で、とくに緊急を要する課題から優先的に保存対策をたてていく。2年計画の2年目においては、以下の二つの課題を中心に研究開発を進める。
1:民族学資料の防虫対策としては、1年目から継続している加温殺虫法の実験条件を完成させるとともに、新たに低温殺虫法の可能性を検討する。
2:図書資料の酸性紙問題に関しては、1年目に引き続き科学研究費補助金プロジェクトと連動させながら閲覧困難な図書資料の強化処置法として、強化剤の絞り込みおよび紙表面への塗布・定着方法の開発をおこなう。
いずれの場合においても実用化の目処がついた段階で、実際の処理は業務委託するものとする。民博所蔵資料が直面している保存の問題を正面から捉え、解決法を見出していくことで、これらの研究資料がより一層有効に活用されることになろう。
【館内研究員】 | 久保正敏、日高真吾 |
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【館外研究員】 | 大谷肇、岡山隆之、金山正子、木川りか、斎藤明子、関正純、伊達仁美、増田勝彦、森田恒之 |
研究会
- 2003年5月8日(木)13:30~(第1演習室)
- 全員「加温空気による大型木造漁船の殺虫処理:実験データの分析」
- 2003年7月26日(土)10:30~(第1演習室)
- 全員「紙力テストと官能評価の相関:国立国会図書館の経年劣化本をもとに」
- 全員「シンポジウムの打ち合わせ」
- 2003年9月13日(土)10:30~(第1演習室)
- 「セルロース誘導体を塗布した試験紙の紙力データ」
- 「セルロース誘導体を塗布した試験紙の表面状態」「劣化紙の分析」
- 2003年10月21日(火)13:30~(第1演習室)
- 「強化処理後の劣化本の官能評価による判定」
- 2003年11月2日(日)10:30~(第演習室)
- 「経年劣化した図書資料の強化処理:官能評価による判定」
- 「シンポジウムの打ち合せ」
- 2003年11月24日(月)13:30~(第1演習室)
- 「ペーパースプリットで処理した劣化紙の紙力測定:テクニカル方式とマニュアル方式の差異」
- 2003年11月25日(火)10:30~(第1演習室)
- 「劣化紙の大量化処理法の評価」
- 2003年11月26日(水)10:30~(高知県立紙産業技術センター)
- 「セルロース誘導体による劣化紙の強化処理について」
- 2004年3月15日(月)13:30~(非破壊実験室)
- 「資料の保存管理システムの構築のための打合せ」
- 2004年3月22日(月)13:30~ / 23日(火)10:00~ / 24日(水)10:00~(図書室)
- 「英国議会資料の紙質調査」
- 2004年3月27日(土)11:00~(非破壊分析材質分析)
- 全員「紙資料の強化」
- 全員「紙資料の虫害対策」
研究成果
本共同研究の目的は、本館が所蔵する各種研究資料を総括的にとらえた上で、とくに緊急を要する課題から保存対策をたてることである。2年間を通じて、主として検討した課題を以下にまとめる。 大型標本資料の防虫対策としては、展示場から移動することのできない大型木製資料を対象に、加温空気で殺虫する手法の研究開発を行った。先行研究の科学的検証、実験室レベルでの小規模実験を経て、平成14年3月、展示場において大規模な殺虫処理実験を実施した。
科研のプロジェクトと連動し、閲覧が困難なほど脆弱化した図書資料の強化処理法として、強化剤の絞り込み、および、紙表面への塗布、定着方法の実験を進めた。
2002年度
国立民族学博物館は研究資料として、標本資料、図書資料、映像音響資料など多種類の所蔵品をもつ。本研究会では、民博所蔵の各種資料を総括的に捉えた上で、とくに緊急を要する課題から優先的に保存対策をたてていく。現段階では、大型展示資料の防虫対策、および、図書資料の酸性紙問題、このふたつの課題を中心に研究開発を進める。前者は、従来から燻蒸ガスとして使用されていた臭化メチルが2005年に全廃されるため、代替法の可能性として低酸素濃度殺虫法や温度処理法の改良・実用化を目指すものである。後者は、酸性紙で閲覧困難な図書資料の強化処置法として、強化剤の絞り込みおよび紙表面への塗布・定着方法の開発をおこなう。実用化の目処がついた段階で、実際の処理は業務委託するものとする。民博所蔵資料が直面している保存の問題を正面から捉え、解決法を見出していくことで、これらの研究資料がより一層有効に活用されることになろう。
【館内研究員】 | 久保正敏、日高真吾、吉田集而 |
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【館外研究員】 | 大谷肇、岡山隆之、金山正子、木川りか、斎藤明子、関正純、伊達仁美、増田勝彦、森田恒之 |
研究会
- 2002年5月11日(土)10:30~(第3演習室)
- 全員「図書資料の保存:今年度の研究のすすめかた」
- 2002年6月11日(火)13:30~(第4演習室)
- 「加温殺虫実験の実験条件の評価」
- 2002年6月22日(土)10:30~(第4演習室)
- 全員「ペーパースプリット法による図書資料の強化」
- 金山正子「近現代公文書資料の劣化損傷状態調査の報告」
- 2002年9月10日(火)13:00~(図書室)
- 「英国議会資料の紙質調査」
- 2002年9月11日(水)10:00~(図書室)
- 「英国議会資料の紙質調査」
- 2002年9月25日(水)13:00~(第4演習室)
- 園田直子・日高真吾「北米における低温殺虫処理方法の実践」
- 2002年10月12日(土)10:30~(第3演習室)
- 岡山隆之、関正純「ペーパースプリット法で処理したサンプル紙:紙力試験による評価」
- 金山正子「ペーパースプリット法で処理したサンプル紙:官能試験による評価」
- 園田直子「紙資料の保存修復に関する研究の最近の動向」
- 2002年11月22日(金)13:30~(第3演習室)
- 「トラップによる生物生息調査を中心にしたIPM(虫害の総合防除管理)の実践」
- 2002年12月7日(土)10:30~(第2演習室)
- 園田直子「海外調査報告:紙の強化処理方法を中心に」
- 岡山隆之「ペーパースプリット法で処理したサンプル紙:紙力試験による評価(続き)」
- 日高真吾「紙の官能試験による評価で求めていること」
- 森田恒之「英国議会資料のチェックリストをもとにした官能試験と計測値の関係」
- 2002年12月16日(月)13:30~(第4演習室)
- 全員「生物生息調査のためのプログラム開発について」
- 全員「加温殺虫処理最終実験の打ち合わせ」
- 2003年1月11日(土)10:30~(非破壊分析材質分析室)
- 「紙の強化方法についての実験打ち合わせ」
- 2003年2月1日(土)10:30~(非破壊分析材質分析室)
- 「紙の強化方法についての実験打ち合わせ」
- 2003年2月15日(土)10:30~(第3演習室)
- 「官能テストによる紙の劣化度の測定」
- 2003年2月21日(金)10:30~(第3演習室)
- 「紙の強化法についての実験結果報告」
- 2003年3月10日(月)~12日(水)10:00~(非破壊分析材質分析室)
- 園田直子「加温空気を利用した大型展示資料の殺虫処理実験」
研究成果
大型民族学資料を対象とし、展示場から資料を外に出さず、観覧者にも他の展示資料にも影響を与えず、3日以内で処理が完了する方法として、加温空気による殺虫処理法の見直しと改善を行った。その結果をもとに、平成15年3月、南アジア展示場にて木造漁船の殺虫処理を行った。また、脆弱化した図書資料の強化方法として有効な強化剤および塗布方法の絞り込みを行っており、現在、実験が進行中である。