国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モノに見る生活文化とその時代に関する研究 ─ 国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションを通して ─

共同研究 代表者 横川公子(客員)

研究プロジェクト一覧

2004年度

国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションは、故大村しげが日々の暮らしの中で蓄積した生活財のほぼ全容をもって構成される。そのため、同コレクションは、20世紀を生きた一人の女性の生活文化を総体的かつ体系的に捉えることが可能な貴重な資料となっている。本研究は、同コレクションを「生活財」と見なす角度から実態の把握と分析を行い、大村しげの生き様と生きた時代を明らかにすることを目的とする。

大村しげが生きた大正・昭和・平成という時代は、従来の暮らしを継承しつつも、日常生活の隅々までが戦争に組み込まれた前半から、社会の産業化や情報化に伴って大量消費者生活が一般化した後半へという時代の流れとして理解されてきた。生活財がその時々の状況と無関係ではないことに着目することによって、そうした理解の妥当性が検証される。同時に従来の理解にとらわれない新たなかたちで、生活財の次元から見た時代の流れを提示しうる可能性が予兆される。

【館内研究員】 笹原亮二、佐藤浩司
【館外研究員】 相川佳予子、磯映美、井上雅人、大塚滋、奥村彪男、角野幸博、熊倉功夫、栗田靖之、佐藤健二、田口理恵、林八千木、藤井龍彦、森理恵、山口昌伴
研究会
2004年6月19日(土)13:30~(大演習室)
「共同研究調査報告書作成の打ち合わせ」
2004年11月7日(日)13:30~ / 8日(月)10:00~(第2演習室)
角野幸博・佐藤浩司「大村しげの都心居住」
相川佳予子・森理恵・横川公子「大村しげコレクションの概要」
2005年1月30日(日)10:00~(大演習室)
「共同研究調査報告書作成の打ち合わせ」
2005年1月31日(月)10:00~(資料整理室)
「大村しげコレクションの調査」
2005年3月31日(木)13:00~(第1演習室)
「編集会議」
研究成果

本共同研究の拠り所となる国立民族学博物館所蔵・大村しげコレクションの整理作業を完了し、合計1万4753件・8万5307点の内容が確認された。各生活財について、写真撮影をはじめ博物館資料としての基本的な調査のほか、付随する文字情報やモノの特徴などが情報化され、記録された。また膨大な文字資料の整理を完了した。フィールド調査は、大村しげの旧住まい及びコレクションの一部(民博未収蔵)を収蔵する大村家の菩提寺(岐阜県伊自良町 東光寺)における調査、大村家を訪れていた宗教関係者や近隣の住民へのインタビューによって、大村家における信仰生活などのほか、主に大村しげの前半生に関する情報収集が行われた。

具体的な成果として、「執筆資料一覧」「(主要な)モノ別一覧」「モノの機能別一覧」「所在場所におけるモノの分布」などが把握され、インタビューやフィールド調査から「大村しげの年賦と居住環境」が再現された。その結果、大村しげの暮らし方や「物書き」としての業績、価値意識、モノを通して共有しえた社会的背景の一端があぶりだされた。

共同研究会に関連した公表実績

山口昌伴:「大村シゲの台所道具がかたるもの」季刊民族学94、102-107、国立民族学博物館、2000。

笹原亮二:「ある女性の暮らしと生活の品々―故大村しげ氏の寄贈資料と整理を巡って―」民博通信93、136-142、国立民族学博物館、2001。

横川公子:「モノ世界のフィールドワーク」民博通信101、1-5、国立民族学博物館、2003。

横川公子:「大村しげの虚構性―著述から見たコレクション」民博通信101、6-7、国立民族学博物館、2003。

森理恵:「ミュージアムという場で考えるコレクションの〈価値〉」民博通信101、8-10、国立民族学博物館、2003。

田口理恵:「マテリアル・ワールドとの格闘」民博通信101、11-13、国立民族学博物館、2003。

笹原亮二:「量の可能性」民博通信101、14-15、国立民族学博物館、2003。

笹原亮二、田口理恵、横川公子:「リーディング・ガイド」民博通信101、16-17、国立民族学博物館、2003。

横川公子:「収納場所と収納用具―事例「大村しげコレクション」を通して―」生活デザイン3、60-70、武庫川女子大学生活美学研究所、2005。

2003年度

国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションは、故大村しげが日々の暮らしの中で蓄積した生活財のほぼ全容をもって構成される。そのため、同コレクションは、20世紀を生きた一人の女性の生活文化を総体的かつ体系的に捉えることが可能な貴重な資料となっている。本研究は、同コレクションを「生活財」と見なす角度から実態の把握と分析を行い、大村しげの生き様と生きた時代を明らかにすることを目的とする。大村しげが生きた大正・昭和・平成という時代は、従来の暮らしを継承しつつも、日常生活の隅々までが戦争に組み込まれた前半から、社会の産業化や情報化に伴って大量消費者生活が一般化した後半へという時代の流れとして理解されてきた。生活財がその時々の状況と無関係ではないことに着目することによって、そうした理解の妥当性が検証される。同時に従来の理解にとらわれない新たなかたちで、生活財の次元から見た時代の流れを提示しうる可能性が予兆される。

【館内研究員】 熊倉功夫、笹原亮二、佐藤浩司、藤井龍彦
【館外研究員】 相川佳予子、磯映美、井上雅人、大塚滋、奥村彪男、角野幸博、栗田靖之、佐藤健二、田口理恵、林八千木、森理恵、山口昌伴
研究会
2003年5月12日(月) / 15日(木) / 19日(月) / 22日(木) / 26日(月) / 29日(木)10:00~(資料整理室)
みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理
2003年6月14日(土)10:00~(第1演習室)
横川公子「平成14年度調査研究の総括及び15年度の研究計画とその内容」
相川佳予子「団扇と扇子」
磯映美「マッチのスクラップブック」
林八千木「和服地の洋服」
2003年6月2日(月) / 5日(木) / 9日(月) / 12日(木) / 16日(月) / 19日(木) / 23日(月) / 26日(木) / 30日(月)10:00~(資料整理室)
みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理
2003年7月3日(木) / 7日(月) / 10日(木) / 14日(月) / 17日(木) / 24日(木) / 28日(月)10:00~(資料整理室)
みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理
2003年7月12日(土)13:00~ / 13日(日)10:00~(大演習室)
谷直樹「大坂における近世町屋と生活道具」
黒石いずみ「考現学再考」
田口理恵「大村しげの晩年と終の棲家としてのバリ島 ─ インドネシア訪問からの覚書 ─」
2003年8月4日(月) / 7日(木) / 18日(月) / 25日(月) / 28日(木)10:00~(資料整理室)
民博資料大村しげコレクションの整理
2003年9月8日(月) / 11日(木) / 22日(月) / 29日(月)10:00~(資料整理室)
「みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理」
2003年10月2日(木) / 6日(月) / 9日(木) / 16日(木) / 20日(月) / 23日(木) / 27日(月)10:00~(資料整理室)
「みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理」
2003年10月4日(土)13:00~ / 5日(日)10:00~(大演習室)
朝岡康二「個人の地域意識と観光化」
横山公子「大村しげの周辺 ─ 関係者の証言覚書」
鈴木靖峯・藤原八重子・周防明子・松村律子「故大村しげ氏の暮らしを巡って」
2003年10月30日(木) / 31日(金)10:00~(資料整理室)
鈴木靖峯「みんぱく所蔵大村しげコレクションについて」
2003年11月6日(木) / 10日(月) / 13日(木) / 17日(月) / 20日(木) / 27日(木)10:00~(資料整理室)
「みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理」
2003年12月1日(月) / 4日(木) / 11日(木) / 15日(月) / 18日(木) / 22日(月) / 25日(木)10:00~(資料整理室)
「みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理」
2003年12月7日(日)13:00~ / 8日(月)10:00~(大演習室)
森理恵「大村しげの文筆活動について」
相川佳予子「雛人形・雛道具」
林八千木「身の回りのモノ」
横川公子「家具の置き場所・モノの置き場所 ─ 鈴木靖峯氏よりの聞き書きより ─」
2004年1月8日(木) / 15日(木) / 19日(月) / 22日(木) / 26日(月) / 29日(木)10:00~(資料整理室)
「みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理」
2004年2月15日(日)13:00~ / 16日(月)10:00~(大演習室)
熊倉功夫「庶民のお茶」
井上雅人「衣服文化と伝統の創造」
佐藤健二「モノから文化を読み取る ─ 『日本常民生活絵引』の試みから ─」
2004年2月2日(月) / 9日(月) / 12日(木) / 16日(月) / 23日(月) / 26日(木)10:00~(資料整理室)
「みんぱく所蔵大村しげコレクションの整理」
研究成果

15年度は、共同研究会5回と、前年度に引き続き大村しげコレクション調査により合計12000件にのぼるデータを打ち込んだ。またモノの使用などについて、旧所蔵者の晩年の日常生活に詳しく、本コレクション収蔵にも立ち会った当事者や近隣の居住者へのインタビュー調査および住み跡の観察を実施した。その結果、モノのおき場所や主に後半生の暮らしぶりに関する情報が得られ、旧所有者のモノに対する価値付けや暮らしに関連する行為、モノ所有の通時的な変化、及び所有についての旧所有者の主に文筆活動における言説と実物とのずれや生活を演出する側面などが示唆された。さらに個々の生活財に関する歴史や他の生活財調査との比較による知見が得られた。

2003.6.30「モノ世界のフィールドワーク」『民博通信』101、責任編集、1-17、国立民族学博物館。

2002年度

国立民族学博物館の大村しげコレクションは故大村しげが日々の暮らしの中で蓄積した品々のほぼ全容をもって構成される。そのため、同コレクションは、20世紀を生きた1人の女性の生活文化を総体的かつ体系的にとらえることが可能な貴重な資料となっている。本研究は、同コレクションを「生活財」と見なす視角から実態の把握と分析を行い、大村しげの生き様と生きた時代を明らかにすることを目的とする。

大村しげが残した生活財は衣食住から信仰、社会生活まで内容が多岐におよび、子供の頃から70歳を越えて亡くなるまでの間に使用されてきた膨大な物品からなっている。それらすべての生活財について、個々の物品を精査し、生活の局面に応じた生活財の組み合わせの把握を試み、彼女の生活財の使い方や持ち方を明らかにする。同時に、彼女が折々に著した多くの随想をあわせて検討し、それらの生活財を使用しつつ日々の暮らしを営んできた、大村しげの思考や意識の在り方に光を当てる。

大村しげが生きた大正・昭和・平成という時代は、従来の暮らし方を継承しつつも日常生活の隅々までが戦争に組み込まれるようになった前半から、社会の産業化や情報化に伴って大量消費生活が一般化した後半へという時代の流れとして理解されてきた。生活財がその時々の時代状況と無関係ではないことに着目し、そうした理解の妥当性を生活財の在り方を通して検証する。同時に、従来の理解にとらわれない新たなかたちで、生活財の次元から見た時代の流れを提示する可能性を探る。

大村しげコレクションは、1人の女性が残した生活財として典型的でも一般的でもない。しかし、20世紀を生きた庶民の暮らし方を具体的に理解し、今後我々がどのような生活を実現し得るか、その可能性を拓くための有効な手掛かりとなることが期待される。

以上のような問題意識に基づき、次のような課題を設定する。
(1)大村しげの残した生活財の分類と分析を行う。
(2)大村しげの残した生活財の中に堆積した時代相を読み取る。
(3)産業化社会の到来とそれに伴う生活様式の変化が、個人の生活に如何に反映されているかを
(4)個人の所有する生活財のトータルな把握を通して、モノで象られる現代生活の実像に迫る。
(5)大村しげの残した生活財を通して、大村しげという1人の女性の暮らしの知と感性を明らかにする。

【館内研究員】 熊倉功夫、栗田靖之、笹原亮二、佐藤浩司、田口理恵
【館外研究員】 相川佳予子、磯映美、大塚滋、奥村彪男、角野幸博、林八千木、森理恵、山口昌伴
研究会
「民博所蔵大村しげコレクションに関する調査研究」
2002年5月13日(月)10:00~(資料整理室)
2002年5月16日(木)10:00~(資料整理室)
2002年5月20日(月)10:00~(資料整理室)
2002年5月23日(木)10:00~(資料整理室)
2002年5月27日(月)10:00~(資料整理室)
2002年5月30日(木)10:00~(資料整理室)
2002年6月3日(月)10:00~(資料整理室)
2002年6月6日(木)10:00~(資料整理室)
2002年6月7日(金)10:00~(資料整理室)
2002年6月10日(月)10:00~(資料整理室)
2002年6月12日(水)10:00~(資料整理室)
2002年6月13日(木)10:00~(資料整理室)
2002年7月1日(月)10:00~(資料整理室)
2002年7月4日(木)10:00~(資料整理室)
2002年7月11日(木)10:00~(資料整理室)
2002年7月15日(月)10:00~(資料整理室)
2002年8月1日(木)10:00~(資料整理室)
2002年8月8日(木)10:00~(資料整理室)
2002年8月22日(木)10:00~(資料整理室)
2002年9月1日(月)10:00~(資料整理室)
2002年9月9日(月)10:00~(資料整理室)
2002年9月12日(木)10:00~(資料整理室)
2002年9月19日(木)10:00~(資料整理室)
2002年9月26日(木)10:00~(資料整理室)
2002年10月3日(木)10:00~(資料整理室)
2002年10月7日(月)10:00~(資料整理室)
2002年10月10日(木)10:00~(資料整理室)
2002年10月17日(木)10:00~(資料整理室)
2002年10月24日(木)10:00~(資料整理室)
2002年10月28日(月)10:00~(資料整理室)
2002年10月31日(木)10:00~(資料整理室)
2002年11月7日(木)10:00~(資料整理室)
2002年11月11日(月)10:00~(資料整理室)
2002年11月14日(木)10:00~(資料整理室)
2002年11月18日(月)10:00~(資料整理室)
2002年11月21日(木)10:00~(資料整理室)
2002年11月25日(月)10:00~(資料整理室)
2002年11月28日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月16日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月20日(月)10:00~(資料整理室)
2003年1月23日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月27日(月)10:00~(資料整理室)
2003年1月30日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月6日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月13日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月17日(月)10:00~(資料整理室)
2003年1月21日(金)10:00~(資料整理室)
2003年1月24日(月)10:00~(資料整理室)
2003年1月27日(木)10:00~(資料整理室)
2003年1月28日(金)10:00~(資料整理室)
2003年3月3日(月)10:00~(資料整理室)
2003年3月6日(木)10:00~(資料整理室)
2003年3月10日(月)10:00~(資料整理室)
2003年3月13日(木)10:00~(資料整理室)
2003年3月17日(日)10:00~(資料整理室)
2003年3月20日(木)10:00~(資料整理室)
2002年5月26日(日)10:00~(第1演習室)
横川公子「研究の目的と研究計画」
笹原亮二「大村しげコレクションの概要」
田口理恵「大村しげコレクションの衣類資料」
2002年7月7日(日)13:00~(大演習室)
佐藤健二「今和次郎の方法論」
佐藤浩司「生活財調査の今」
2002年7月8日(月)10:00~(大演習室)
栗田靖之「生活財生態学を巡って」
2002年8月28日(水)13:00~ / 2002年8月29日(木)10:00~(大演習室)
山口昌伴「MAN MATERIAL SYSTEM 道具生活学への試み ─ もの集合の構造論」
奥村萬亀子「<丹波生活衣>から見えてくること」
徳井淑子「衣服の歴史人類学に向けて」
2002年10月20日(日)13:00~ / 21日(月)10:00~(大演習室)
大塚滋「食の『季節感』の誕生」
奥村彪男「京のおばんざいと台所道具」
「大村しげコレクションの整理調査状況について」
2002年12月8日(日)13:00~ / 9日(月)10:00~(大演習室)
疋田正博「生活財生態学の方法と課題 ─ 成果」
杉本歌子「京都の町家のくらし」
森理恵「現代社会における『京都』の受容 ─ 記憶の中の『京の暮らし』調査研究を通じて」
2003年2月9日(日)13:00~ / 10日(月)10:00~(大演習室)
角野幸博「京都イメージの形成 ─ 街の景観から」
青木俊也「公団住宅2DKの再現から見た暮らし方」
小泉和子「昭和のくらし博物館における暮らしの四季 ─ 生活空間とモノから見た」
研究成果

具体的なコレクションの調査を進める一方で、調査の基本的な方法について検討した。方法には、観察という行為に潜む観察者の視座と所有者や使用者の思いに具体化された視座が交錯し、それらが重なる場合と重ならない場合のほか、さらに多様なずれ方があること、また調査の進行とともに明らかになってくる視座があると同時に、暮らしの習慣や様式がモノのコンテキストとして調査の前提をなすことなど、モノを通して文化を探求するための多様な方法の可能性が検討された。現在、具体的なモノの調査は、10,000件あまりを完了したが、さらに継続中である。今年度は、調査方法のひとつとして、主としてモノと人間の主観的な関係について絞り込み、検討した。