国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

会社文化と宗教文化の経営人類学的研究

共同研究 代表者 中牧弘允

研究プロジェクト一覧

2004年度

会社文化の共同研究ではこれまでサラリーマン、企業博物館、会社儀礼、会社文化のグローバル化を主題としてとりあげてきた。本研究は、そうした成果を継承しながら、現代の会社文化と宗教文化の比較研究に取り組む。現代を特徴づけるグローバル化は会社や教団のような組織では特に顕著である。両者は管理という側面で共通するが、日本の場合には、ともに共同体的性格を持つことから共通する構造が指摘できる。また、ともにグローバル化の波にさらされ、その構造の変容が必要となっている点も共通する。本研究ではテーマをグローバル現象との関連に焦点を絞り、方法論としては経営=システム運営の文化的研究をめざす経営人類学的視点の発展をはかる。とりわけ創業者(教祖)、企業倫理(宗教倫理、霊性)、市場開拓(布教)、会社宗教、宗教経営をめぐる比較研究が課題となる。

【館内研究員】 大森康宏、近藤雅樹、田村克己、陳天璽、出口正之、野村雅一、日置弘一郎(客員)、平井京之介、広瀬浩二郎、山本匡
【館外研究員】 安達義弘、市川文彦、岩井洋、岩田龍子、宇野斉、奥野明子、奥野卓司、織田竜也、樫尾直樹、片倉もとこ、神崎宣武、近藤みどり、澤木聖子、澤野雅彦、塩路有子、杉谷眞佐子、砂川和範、鷲見淳、住原則也、高尾義明、出口竜也、晨晃、廣山謙介、前川啓治、松永ルエラ、三井泉、村山元理、森雄繁、山田慎也、米山俊直
研究会
2004年5月21日(金)13:30~(第6セミナー室)
広瀬浩二郎「『柔道』型布教と『合気道』型布教 ─ アメリカにおける天理教の異文化伝道 ─」
山田慎也「儀礼の創出と人材育成 ─ グローバル社会における葬儀社の経営戦略 ─」
2004年5月22日(土)11:00~(第6セミナー室)
沈奇志「外圧(環境圧力)」と「内圧」 ─ 民族性の形成とその企業経営行動との関わり─」
市野沢潤平「人類学と経営学の接点を探る:タイのバーガールを例とした経営人類学的理解の試み」
奥野卓司「会社文化アニミズム」
2004年7月9日(金)13:30~(第6セミナー室)
岩井洋「祈願と感謝の図像学:宗教経営学の視点から」
高木裕宜「日本企業の厚生文化 ─ 日系子会社への波及の意義」
2004年7月10日(土)10:30~(第6セミナー室)
市川文彦「食事に見えたる、フランスの社会文化 ─ その歴史、その周辺を巡って ─」
ローラ・マルティネス「The Village as company: organising Hachiman-matsuri in Kuzaki」
澤野雅彦「企業スポーツの社会史 ─ 企業労務からのアプローチ」
2004年11月19日(金)13:30~(第3セミナー室)
奥野明子「目標管理のコンティンジェンシー・アプローチ」
安達義弘「明治期における九州の焼酎動向-自家製焼酎の終焉」
全員「出版打ち合わせ」
2004年11月20日(土)10:30~(第3セミナー室)
本谷るり「老舗企業の加齢と継続力」
2004年11月20日(土)14:00~(第4セミナー室)
ジェームズ・ロバーソン「通念としてのサラリーマン像の異化:(仕事)人類学から見た日本の階級、ジェンダー、表象」
(日本文化人類学会近畿地区研究懇談会を兼ねて開催)
2005年1月29日(土)13:30~(第3セミナー室)
中牧弘允「祭の経営人類学」
武内恵行「祭の経済効果」
宇野斉「東北三大祭と観光・広告業」
出口竜也「徳島「阿波踊り」のケース」
三井泉「青森「ねぶた祭」のケース」
2005年3月4日(金)13:30~(第6セミナー室)
神崎宣武「権力者と宗教メセナ」
Brian Moeran「Advertising: Creativity and Constraints」
研究成果

今年度の研究報告は20を数えたが、大別すると以下のようになる。
1)祭や儀礼と会社文化については、日本の都市祭礼と葬祭業がとりあげられた。
2)会社文化における宗教的側面に関しては、GNC経営を支えるアニミズム、起業家と太子信仰、ラジオ体操・朝礼・慰安行事・運動会・制服などの会社の厚生文化、ならびにマレーシアやタイの事例報告があった。
3)宗教文化における経営的側面に関しては、アメリカの天理教における異文化伝道、エクスヴォトの宗教経営学、ならびに祭を通して村を会社にたとえる報告があった。
4)上記以外の会社文化に関する経営人類学的な報告として、日本の広告会社の創造性と束縛、サラリーマン像の異化、フランスの社食文化、老舗企業の継続力等のテーマがとりあげられた。

2003年度

会社文化の共同研究ではこれまでサラリーマン、企業博物館、会社儀礼、会社文化のグローバル化を主題としてとりあげてきた。本研究は、そうした成果を継承しながら、現代の会社文化と宗教文化の比較研究に取り組む。現代を特徴づけるグローバル化は会社や教団のような組織では特に顕著である。両者は管理という側面で共通するが、日本の場合には、ともに共同体的性格を持つことから共通する構造が指摘できる。また、ともにグローバル化の波にさらされ、その構造の変容が必要となっている点も共通する。本研究ではテーマをグローバル現象との関連に焦点を絞り、方法論としては経営=システム運営の文化的研究をめざす経営人類学的視点の発展をはかる。とりわけ創業者(教祖)、企業倫理(宗教倫理、霊性)、市場開拓(布教)、会社宗教、宗教経営をめぐる比較研究が課題となる。

【館内研究員】 大森康宏、近藤雅樹、田村克己、陳天璽、出口正之、野村雅一、平井京之介、広瀬浩二郎、山本匡
【館外研究員】 安達義弘、市川文彦、岩井洋、岩田龍子、宇野斉、奥野明子、奥野卓司、織田竜也、樫尾直樹、神崎宣武、近藤みどり、澤木聖子、澤野雅彦、塩路有子、杉谷眞佐子、砂川和範、住原則也、高尾義明、曺斗変、出口竜也、晨晃、日置弘一郎(客員)、廣山謙介、前川啓治、松永ルエラ、三井泉、村山元理、森雄繁、山田慎也、米山俊直
研究会
2003年5月24日(土)13:30~(第6セミナー室)
中牧弘允「研究方針について」
2003年7月28日(月)13:30~(第6セミナー室)
村山元理「スピリチュアリティーを取り込むアメリカの企業 ─ 企業文化の創造」
金子毅「企業守護神の誕生 ─ 八幡製鉄所における「安全」理念の実践との関わりから」
2003年11月8日(土)13:30~(第6セミナー室)
全体テーマ「”商”の人類学的考察 ─ ビジネスの現代的意味を考える」
澤野雅彦「問題提起」及び「商学の復権:商品の文化的側面に注目して」
三井泉「商人(AKINDO):『意味の変換と創造』の媒介者」
織田竜也「商品世界とフェティシズム」
日置弘一郎「なにが変わったか、経営学をどのように変えなければならないか」
2003年11月9日(日)10:30~(第6セミナー室)
加藤和暢「『生産の地理学』から『生産 ─ 消費の地理学』へ ─ 『文化・物産複合』論(川勝平太)に学ぶ ─」
出口竜也「総合商社機能の文明論的意義」
波積真理・日置弘一郎「流通と商品化-価値実現を果たすビジネスモデルにおける流通の役割」
廣山謙介「商学としての金融論」
2003年12月20日(土)13:30~(第6セミナー室)
鷲見淳「職場における文化の概念の位相」
ルエラ・マツナガ「The Branding of Space」
住原則也「原子力発電所ヴィジターセンターの日英比較」
2004年3月6日(土)13:30~(第3セミナー室)
陳天璽「華人のビジネスネットワークと宗教」
島本みどり「醤油のグローバル化 ─ キッコーマンを中心に」
研究成果

会社と宗教を比較する視点として、二つの対比的なアプローチがとられた。ひとつは、会社文化が宗教をどう取り入れ経営に生かしているかをみる立場であり、八幡製鉄所の「守護神」の祭祀、アメリカの企業が導入しはじめたスピリチュアリティー、イギリスのスーパーマーケットの空間構成に影響を与えている英国国教会の空間配置、醤油文化の普及に一役買ったコーシャ食品への注目など、具体例にもとづく報告があった。もうひとつは宗教文化に経営がどう作用しているかを吟味する視角で、潮州系華人のビジネスネットワークの構築と徳教の関係について事例報告がなされた。特筆すべき試みとしては、商学の復権を文化人類学的発想からはかるべく、いくつかの報告がなされたことである。

2003『会社じんるい学PartII』(共著) 東方出版