国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館を活用した異文化理解教育のプログラム開発

共同研究 代表者 森茂岳雄(客員)

研究プロジェクト一覧

本共同研究では、これまで2年間の研究を通して、小・中・高等学校の教育現場と連携して、民博を活用した異文化理解教育のプログラム開発と実践を目的としてきた。本年度は、これまでの2年間の研究成果の上に立って、次の二つを大きな目的とした。
(1)研究・実践成果のまとめと刊行。具体的には、本共同研究の成果を『国立民族学博物館調査報告書』として刊行する。
(2)研究・実践成果の社会還元と普及。具体的には、これまでのプログラム開発研究とその実践の中で、学びの成果として生み出された児童・生徒の作品を民博において展示し、その展示を活用した国際理解教育の教師研修を実施する。
以上を通して、今後の民博と学校の連携・協力の意義と可能性を探る。

2005年度

【館内研究員】 小長谷有紀、中牧弘允、林勲男、八杉佳穂、山本匡、山本泰則
【館外研究員】 居城勝彦、今田晃一、上田信行、小笠原喜康、佐藤優香、柴田元、高橋順一、田尻信壹、中山京子、八代健志
研究会

今年度は、共同研究会を2回開催し、研究成果の刊行に向けた内容の検討、及び夏期に行った「子どもたちの作品展」(企画展示)とそれを活用した教員研修ワークショップに当てた。

2005年5月29日(日)13:30~(第4演習室)
「報告書のとりまとめについて」
「展示構想について(各セクション毎の検討をふくむ」
「教員研修ワークショップ(8月4日)について」
2005年8月3日(水)13:30~(第6セミナー室)
「全体打ち合わせ」
2005年8月4日(木)9:30~(第6セミナー室)
教員研修ワークショップ(実践研究会)「博物館を活用した国際理解教育」
研究成果の概要

上記の研究目的(1)については、本共同研究の成果を、森茂岳雄編『国立民族学博物館を活用した異文化理解教育のプログラム開発』(国立民族学博物館調査報告書56、2005年、320頁)として刊行した。また本報告書のエッセンスを『月刊みんぱく』2005年7月号に「学校がみんぱくと出会ったら」として特集した。

(2)については、子どもたちの作品を集めて、2005年7月28日から9月5日まで、民博の本館1階エントランスホールで企画展示「学校がみんぱくと出会ったら ─ 博学連携の学びと子どもたちの作品展 ─」を開催した。また同企画展と連動して、8月4日に日本国際理解教育学会と共催で、教員研修のワークショップ「博物館を活用した国際理解教育」を開催し、100名を超える参加者を得た。

以上、研究成果の刊行及び子どもたちの作品展、それを活用した教師研修を行うことで、教育利用という観点からの民博の可能性について一般来館者はもとより、特に学校や教育委員会等の教育関係者にその意義をアピールできた。

共同研究会に関連した公表実績

(出版)

1.森茂岳雄編.『国立民族学博物館を活用した異文化理解教育のプログラム開発』(国立民族学博物館調査報告書56、2005年、320頁)

2.『月刊みんぱく』2005年7月号(特集:学校がみんぱくと出会ったら)

(企画展示)

1.「学校がみんぱくと出会ったら ─ 博学連携の学びと子どもたちの作品展 ─」」(2005年7月28日~9月5日)

(教員研修ワークッショップ)

1.『国立民族学博物館を活用した異文化理解教育のプログラム開発』(日本国際理解教育学会共催)(2005年8月4日)

2004年度

【館内研究員】 小長谷有紀、中牧弘允、林勲男、福岡正太、八杉佳穂、山本匡、山本泰則
【館外研究員】 居城勝彦、今田晃一、上田信行、小笠原喜康、佐藤優香、柴田元、高橋順一、田尻信壹、中山京子、八代健志
研究会
2004年5月15日(土)13:30~(第3セミナー室)
居城勝彦、八代健志、田尻信壱、柴田元「民博展示を活用した授業実践の構想」
2004年7月27日(火)10:30~(第6セミナー室)
森茂岳雄・中山京子「モデル指導案のフォーマットと指導案例」
居城勝彦・八代健志・佐藤優香・今田晃一「個別報告(1)」
柴田元・田尻信壱「個別報告(2)」
2004年11月28日(日)10:30~(第6セミナー室)
八代健志・佐藤優香「異文化理解教育のための造形表現活動 ─ 仮面づくりカリキュラムの実践報告 ─」
佐藤優香「モノがメディエイトするもの ─ ミュージアムにおける鑑賞と表現のための学習デザイン ─」
上田信行「コメント」
福本謹一「コメント」
森茂岳雄「研究成果のとりまとめについて」
2004年12月25日(土)13:30~(第3演習室)
森茂岳雄、中山京子、八代健志、中牧弘允「研究成果のとりまとめに関する打ち合わせ」」
2005年1月15日(土)13:30~(第6セミナー室)
今田晃一・木村慶太「博物館におけるハンズ・オン教材を活用した国際理解教育の実践報告:触れる・感じる、考えよう!ミニ博物館の実践」
柴田元「世界史Aの授業でハワイを取り上げる ─ 民博活用を視野に入れて ─」
小笠原喜康「博物館教育の今日的課題 ─ 近代学校の問題点を越えて ─」
「研究成果のとりまとめについて」」
2005年3月12日(土)13:30~(第6セミナー室)
織田雪江「国立民族学博物館から生徒と「学び」を深める」
「成果報告書ならびに夏休みの作品展についての打ち合わせ」
研究成果

今年度は、特に小・中・高等学校の現場と連携して学習プログラム開発と実践を中心に研究を行い、学校における異文化理解(国際理解)教育のプログラム開発における国立民族学博物館との連携・協力の可能性を検証した。これらの成果は、『月刊みんぱく』の2005年7月号の「博学連携」特集で紹介するとともに、本研究の最終報告書は『国立民族学博物館調査報告』として2005年度に出版予定である。

2003年度

【館内研究員】 小長谷有紀、佐藤優香、中牧弘允、林勲男、福岡正太、八杉佳穂、山本匡、山本泰則
【館外研究員】 居城勝彦、今田晃一、上田信行、小笠原喜康、柴田元、高橋順一、田尻信壱、中山京子、八代健志
研究会
2003年5月17日(土)13:30~(第4演習室)
森茂岳雄「研究方針について」
中牧弘允「民博展示場の解説方法:現状と課題」
2003年7月19日(土)13:30~(第3演習室)
佐藤優香「"Making Meaning Visible" 経験を再構成する場としてのワークショップ」
上田信行「"Making Learning Visible" ワークショップにおける学びの構造」
小笠原喜康「"Making Theory Visible" ワークショップにおける知の構造と評価方法」
2003年9月20日(土)10:30~(第6セミナー室)
佐藤優香「「かかわり」のツールとしてのみんぱっく」
高橋順一「桜美林・草の根国際理解教育支援プロジェクトの活動と「異文化発見キット」の考え方」
森茂岳雄・小笠原喜康・中山京子「博学連携をすすめるスーツケース総合学習教材開発の試み」
今田晃一「学習プログラム案「見るだけでなくさわってみよう!」」
2003年11月22日(土)13:30~(第6セミナー室)
アメリカ展示場見学(解説:八杉佳穂、中牧弘允)
討論「アメリカ展示を活用した授業について」
「小・中・高等学校の教科書におけるアメリカの取り扱い(1) ─ 小学校の社会科、音楽を中心に全教科」
2004年2月28日(土)13:30~(第6セミナー室)
【小・中・高等学校の教科書におけるアメリカの取り扱い(3)】
今田晃一「教科書分析、アメリカ:中学校編」
柴田元「高校現代社会、政治経済の教科書と副教材でアメリカ合衆国はどのように紹介されているか」
中山京子「博物館展示を活用した国際理解教育 ─ 多文化教育とグローバル教育のインターフェイスを考える ─」
今田晃一「『ものの広場』の実践報告」
研究成果

年間5回の共同研究会を開催し、(1)博物館における新しい学びの環境と方法のデザイン、(2)アウトリーチ教材の開発と現場利用の諸問題、(3)民博のメディア環境を活用した学習プログラムの活用の三つを柱に各自が報告を行うとともに、民博教官による館内展示の解説を受け、具体的なプログラム開発に向けての課題意識の共有を行い、いくつかのプログラムについては試作が開始されている。また本共同研究は、展示作成者としての民博の研究者、プログラムを開発し実践する現場の教師、その両者をつなぐ大学の教育学研究者という異業種間のコラボレーションの可能性を示唆している。これら共同研究の中間的成果を「学びの場としての民博の可能性」(『民博通信』No.104, pp.18-19, 2004)として報告した。