国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本コロムビアの「外地」録音に関するディスコグラフィー的研究

共同研究 代表者 細川周平(客員)

研究プロジェクト一覧

2004年度

本共同研究は民博所蔵の未整理資料、日本コロムビアの「外地」録音(旧日本帝国領地)のカタログ化と、同社川崎工場に眠っている同じシリーズの完全移管と原盤のデジタル化と音源公開を念頭においたディスコグラフィー作成を目的とする。我々のディスコクラフィーは、日本統治下の音楽文化を、録音テクノロジーのグローバル化、音楽文化の近代化という視点で調査するのに欠かせない基礎資料となるだろう。現地資本と日本資本の競合、他社との競争、現地語録音と日本語録音の棲み分け、プロデューサーの意図、通訳や現地仲介者の役割など、新聞雑誌資料を用いたテーマに発展させることもできるだろう。産業分析のほかに、音源自体の音楽学的・民俗学的な分析も盛んになるだろう。

【館内研究員】 福岡正太
【館外研究員】 岩野裕一、植村幸生、梅田英春、尾高暁子、久万田晋、権藤敦子、田井竜一、田中多佳子、長木誠司、寺内直子、中原ゆかり、廣井榮子、劉麟玉、渡辺裕
研究会
2004年5月15日(土)10:00~(第3演習室)
全員「多言語データの入力方法についての報告と検討」
2004年7月25日(日)10:00~(第3演習室)
全員「韓国資料関連情報のデジタル化について検討」
2004年9月18日(土)10:00~(第6セミナー室)
全員「中国資料関連情報のデジタル化について検討」
細川周平「日本の近代化と録音技術」
劉麟玉「『外地』録音台湾資料のデータ整理の現状とその意義」
2004年12月18日(土)10:00~(第3演習室)
全員「中国・台湾資料のデータ入力状況についての検討」
研究成果

本年度は、入力フォーマットの決定に費やした。ハングル、旧漢字、現代漢字を含む資料をどのような情報環境で扱うのがよいのか、ファイルメーカーの有効なフォーマットに関して議論がとびかい、まとまるまでに時間がかかったが、現在の民博の環境に合わせて試行することで決まった。また昨年度におこなった日本コロムビア川崎工場に保管されている関連音盤の調査にもとづき、目録を作った。台湾録音については劉麟玉によって大部分の目録作りを終えた。朝鮮録音については植村幸生によって、韓国のSP収集家と連絡がつき、彼のネット上に公開されているデータを入手した。今後はそれを民博の資料とつきあわせる必要がある。コロムビアの中国録音を20年ほど前に民博に移管する際の経緯について藤井昭氏より詳しく話を聞いた。

2003年度

本共同研究は民博所蔵の未整理資料、日本コロムビアの「外地」録音(旧日本帝国領地)のカタログ化と、同社川崎工場に眠っている同じシリーズの完全移管と原盤のデジタル化と音源公開を念頭においたディスコグラフィー作成を目的とする。昭和2年、アメリカ資本によって設立された日本コロムビアは、台北、京城(ソウル)、樺太、大連、上海などに支社を持ち、国内盤を在留日本人向けに販売する一方、現地市場向けに数多くのレコードを吹き込んだ。これらの原盤はいったん川崎工場へ運ばれてプレスされ、製品が現地に送り戻された。この「外地」録音は戦後、散逸を余儀なくされた。レコード会社の「外地」進出は口外にのぼらず、各国の戦後ナショナリズムは、日本の文化的な介入(貢献)を無視し、膨大なディスコグラフィーは日本からも旧帝国領地からも忘れられてきた。しかし断片的な知識によれば、それは民衆音楽の宝庫で、流行歌・民謡から劇音楽までをカバーし、古賀メロディーの朝鮮語盤もある。我々のディスコグラフィーは、戦争中の日本統治下の音楽文化を、録音テクノロジーのグローバル化という視点で調査するのに欠かせない基礎資料となるだろう。現地資本と日本資本の競合、コロムビアと日本ビクターの競争、現地語録音と日本語録音の棲み分け、プロデューサーの意図、通訳や現地仲介者の役割などの興味深いテーマが思いつく。産業分析のほかに、音源自体の民俗学的な分析も盛んになるだろう。研究代表者はこれまでに博士論文『レコードの美学』を出版し、戦前日本のレコード産業と著作権について調査し、コロムビア『東亜の音楽』について分析し、フレッド・ガイスバーグの日本出張録音(1902年)のCDボックス解説を書いてきた。共同研究者はいずれも日本やアジアの戦前の民俗音楽録音に関心を持ち、「民謡」概念の成立、テクノロジーや産業の影響、流行音楽の形成、音楽家の職業化などを調査してきた。この共同研究は、将来の国際プロジェクトの基礎固めの意味を持ち、研究機関としての民博の機能に寄与するところが大きいだろう。

【館内研究員】 福岡正太
【館外研究員】 岩野裕一、植村幸生、梅田英春、尾高暁子、久万田晋、権藤敦子、田井竜一、田中多佳子、長木誠司、寺内直子、中原ゆかり、廣井榮子、劉麟玉、渡辺裕
研究会
2003年5月24日(土)10:30~(第2演習室)
岩野裕一ほか「コロンビア川崎工場所蔵資料について」
尾高暁子「『中国伝統音楽集成』制作事情について」
全員「ディスコグラフィー・データフォーマットの検討」
2003年9月28日(日)10:00~(第1演習室)
全員「データベースフォーマットについての検討」
全員「中国関連資料整理作業についての検討」
2003年11月1日(土)10:00~(第2演習室)
細川周平・岩野裕一「川崎工場資料の詳細について」
田中多佳子「データベースフォーマットについて」
岩野裕一「地域別ディスコグラフィーの試作」
尾高暁子・劉麟玉「台湾・中国資料データの漢字入力方法について」
2003年12月13日(土)10:00~(第1演習室)
全員「パイロット・データの検討」
三浦勝利「中国伝統音楽関連録音について」
2004年2月14日(日)10:00~(第3演習室)
植村幸生「ハングル・データの入力フォーマットについて」
細川周平「明治・大正の録音文化史」
全員「今後の作業についての検討」
2005年2月26日(土)10:00~(第4演習室)
藤井知昭「外地録音資料受入の経緯について」
全員「入力データについての検討」