国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

グローバル化がもたらす保健システムの変貌

共同研究 代表者 池田光穂

研究プロジェクト一覧

目的

本研究の目的は、(1)グローバル化する近代医療とそれに呼応するローカルな保健システムが織りなす動態に関する研究や民族誌を多角的に比較検証し、(2)その研究成果を福祉国家像の再考や公的年金の再配分政策などの次世代の社会制度設計に関する今日的議論に、研究成果を通して反映させることにある。それにより、保健システム研究に携わる文化人類学研究は、グローバル化する近代医療と、それに呼応するローカルな土着の保健システムが織りなす動態を分析することができ、これまでの歴史学や社会医学の成果を活用しつつ、民族誌にもとづく質的分析手法を用いて、医療の近代化が直面している諸現象を解明することを実証的に明らかにする。

研究成果

本研究テーマに関連して平成16年度には、帝国医療、植民地医療における進化論、ポストコロニアル言説、周縁部医療化論などが議論された。平成17年度には周産期症状の生物医学的言説の民族誌資料にもとづく相対化、日本の植民地医療の歴史、同時期の(自然人類学を含む)民族学者の科学史、旧満州医科大学における戦争犯罪、比較文化精神医学、憑依と身体感覚の民族誌研究が議論された。平成18年度は19世紀アジアのコレラ流行、ニューギニア高地におけるクールー病、現代日本における痴呆症(認知症)、中村古峡研究、鳥インフルエンザ対策における公衆衛生と統治性、呪術論、医学教育におけるネオリベラル的転回、明治維新期における梅毒と英軍軍医、フランス文学における梅毒表象、生態系と媒介動物病などである。平成20年度は医療人類学の学問そのもののグローバル化の諸相について討論する機会を持った。

これまでの研究発表を通して次の4つの論点が明らかになった。

  1. 帝国医療を含めた保健システムの変化に関する社会的文脈という経路依存的性格の諸事例が指摘された。特に帝国・植民地医療期における民族学(文化人類学)の消極的関与。
  2. 伝統医療や憑依など民族誌学から得られる保健システムの概念諸規定の拡大の必要性。特に保健システム政策に関与する文化人類学研究の具体的方法論のさらなる洗練化の要請。
  3. 進化生物学や医療倫理学的観点から相対化される医療制度分析における新たな価値基準の出現。特に人間の価値基準と道徳に関する学問規範の創出の必要性。
    および
  4. 健康や保健医療の国際開発協力から見えてくる保健システムの多様性の発見と、その後の社会的展開の予測困難性の指摘。および後者の点を克服するための、新世界秩序以降における応用医療人類学に関する学説史資料の取りまとめの緊急性を指摘することができた。

2007年度

研究成果とりまとめのため延長(1年間)

【館内研究員】 関雄二、信田敏宏
【館外研究員】 飯島渉、池田光穂、奥野克巳、倉田誠、佐藤純一、嶋澤恭子、下地明友、谷口純一、塚原東吾、土屋貴志、西本太、野村亜由美、花渕馨也、松岡悦子、松岡秀明、美馬達哉、山﨑剛、吉田尚史、脇村孝平
研究会
2008年2月16日(土)13:30~19:00(国立民族学博物館 大演習室)
2008年2月17日(日)10:30~15:00(国立民族学博物館 大演習室)
2月16日「共同討論:医療人類学のグローバル化(1):研究者の動向」池田光穂
2月17日「共同討論:医療人類学のグローバル化(2):国内の動向」奥野克己
研究成果

これまでの研究発表を通して次の4つの論点が明らかになった。

  1. 帝国医療を含めた保健システムの変化に関する社会的文脈という経路依存的性格の諸事例が指摘された。特に帝国・植民地医療期における民族学(文化人類学)の消極的関与。
  2. 伝統医療や憑依など民族誌学から得られる保健システムの概念諸規定の拡大の必要性。特に保健システム政策に関与する文化人類学研究の具体的方法論のさらなる洗練化の要請。
  3. 進化生物学や医療倫理学的観点から相対化される医療制度分析における新たな価値基準の出現。特に人間の価値基準と道徳に関する学問規範の創出の必要性。
    および
  4. 健康や保健医療の国際開発協力から見えてくる保健システムの多様性の発見と、その後の社会的展開の予測困難性の指摘。および後者の点を克服するための、新世界秩序以降における応用医療人類学に関する学説史資料の取りまとめの緊急性を指摘することができた。

2006年度

研究計画の最終年度である本年度は、(I)国民国家と近代医療制度が密接に関連してきた諸地域における公衆衛生政策や大衆保健運動の社会分析を通して、国家主導の保健システムが社会に受容され大衆化する社会過程を引き続き明らかにする。(II)保健システムの大衆化を歴史的に検討する課題として、科学的医療の国家制度への組み込みと、ほぼ同時期の帝国植民地におけるキリスト教宣教医療ならびにフィランソロフィ慈善団体の国際公衆衛生活動、そして我が国の帝国拡大期における熱帯医療と近代衛生政策の普及過程の三角測量的比較を引き続き試みる。これらの成果を報告書の形でまとめ公刊する。

【館内研究員】 白川千尋、関雄二、信田敏宏
【館外研究員】 飯島渉、奥野克巳、倉田誠、佐藤純一、嶋澤恭子、下地明友、谷口純一、塚原東吾、土屋貴志、西本太、野村亜由美、花渕馨也、松岡悦子、松岡秀明、美馬達哉、山﨑剛、吉田尚史、脇村孝平
研究会
2006年6月10日(土)13:30~(第6セミナー室)
脇村孝平「グローバル化/環境変容/疫病─19世紀アジアにおけるコレラを中心として」
田所聖志「クールー病からみるアンガ系諸集団の呼称」
2006年6月11日(日)10:00~(第6セミナー室)
吉田匡興「メンタルケースの語り口:パプアニューギニア・アンガティーヤ社会の邪術から」
総合討論
2006年7月1日(土)13:30~(長崎大学熱帯医学研究所)
野村亜由美「小澤勲『ぼけ論』の周辺」
土屋貴志「15年戦争期の日本による医学犯罪:原典のレビューから」
2006年7月2日(土)9:00~(長崎大学熱帯医学研究所)
松岡秀明「中村古狭と日本精神医学」
美馬達哉「鳥インフルエンザ論」
2006年8月4日(金)10:30~(第6セミナー室)
研究打合せ会議「グローバリゼーションと医療人類学の未来」
2006年10月21日(土)13:00~(第6セミナー室)
東賢太朗「呪術から災因論へ」
森口岳「近代医療はグローバル化するのか」
2006年11月18日(土)13:00~(第2演習室)
福田真人「日本最初の横浜梅毒病院と英国海軍軍医G. B. Newton」
寺田光徳「19世紀フランス文学に見る梅毒」
2006年11月19日(日)10:00~(第2演習室)
報告書とりまとめに関する打合せ
2007年1月27日(土)13:00~(第1演習室)
西本太「生態系・ベクター・文化」
池田光穂「医療研究において人類学が取り組むべき課題はなにか」
2007年1月28日(土)10:00~(第1演習室)
報告書とりまとめに関する打合せ
研究成果

これまでの研究発表を通して次の4つの論点が浮かび上がってきた。[ ]内はそこから導き出される新たな研究課題である。

  1. 帝国医療を含めた保健システムの変化に関する社会的文脈という経路依存的性格の発見[帝国医療研究における文化人類学の有用性の論証作業]、
  2. 伝統医療や憑依など民族誌学的研究から得られる保健システムの概念諸規定の多様性の増大とそれらの間の論争的性格の拡大[保健システム政策に関与する文化人類学研究の具体的方法論の開発]、
  3. 進化生物学や医療倫理学的観点から相対化される医療制度分析における新たな価値基準の出現[人間の価値基準と道徳に関する学問規範の創出の必要性]、
    および
  4. 健康や保健医療の国際開発協力から見えてくる保健システムの多様性の発見と、その後の社会的展開の予測不能という事態[新世界秩序以降における応用医療人類学に関する学説史資料の取りまとめの緊急性]、である。

2005年度

【館内研究員】 白川千尋、関雄二、信田敏宏
【館外研究員】 飯島渉、奥野克巳、倉田誠、佐藤純一、嶋澤恭子、下地明友、谷口純一、塚原東吾、土屋貴志、西本太、野村亜由美、花渕馨也、松岡悦子、松岡秀明、美馬達哉、山﨑剛、吉田尚史、脇村孝平
研究会
2005年7月17日(日)14:00~(第6セミナー室)
松岡悦子「マタニティーブルーズと文化結合症候群」
嶋澤恭子「コメント:文化と身体症状」
2005年7月18日(月)10:30~(第6セミナー室)
飯島渉「マラリアと帝国:植民地医学と東アジアの広域秩序」
坂野徹「コメント:帝国日本の広域秩序と医学・人類学」
2005年10月8日(土)14:00~(大演習室)
「研究打合せ」
坂野徹ほか全員「坂野徹著『帝国日本と人類学者』総合合評会」
2005年12月17日(土)14:00~(第6セミナー室)
末永恵子「旧満州医科大学の戦争責任」
下地明友「シャーマニズム的世界における精神医学」
2006年3月4日(土)14:00~(第3セミナー室)
「表象と身体?グローバル化する保健医療との関わりから」
花渕馨也「インド洋西域における精霊憑依:もう一つのグローバル化と民族医療」
奥野克巳「感覚の民族誌に向けて:ボルネオ島における身体の問題系」
2006年3月5日(日)10:00~(第3セミナー室)
全員「総合討論と本年度の研究の取りまとめ」
研究成果

平成17(2005)年7月17日と18日に第一回(通算4回目)研究会を開催した。7月17日(土)は、松岡悦子「マタニティブルーズと文化結合症候群」と題した研究発表で、1960年代に欧米で取り上げられるようになった(我が国では1980年代以降)マタニティブルーズ(MB)や産後うつ病(post-natal depression, PND)が、はたして比較精神医学で指摘されてきた文化結合(culture bound)なるものか否かについて、文献例ならびに松岡が収集したデータにもとづいて、さまざまな角度から検討をおこなった。松岡の結論は、産後にみられる抑鬱状態が伝統的な社会では極めてまれであることに注目し、日本でのMBやPNDが、助産所出産よりも病院出産のケースの方が多いことを報告し、病院出産には何らかの形で産後のストレスと関係していることをつきとめた。同発表のコメンテーター嶋澤恭子は「『文化と身体症状』について」という詳細なレジュメを用意し、MBやPNDに関するこれまでの学説を紹介すると同時に、北米社会において少数民族の事例にこれらの疾病が検討される時には、その社会的文化的要因に「過剰な解釈」がもたらされる可能性があることを指摘した。なお、松岡は、本発表をもとに松岡悦子「女性の産後の気分の医療化─産褥精神病、産後うつ病、マタニティーブルーズの社会的構築─」『旭川医科大学紀要』第22号 2006年3月 p.41-52、を公刊している。

第一回研究会の二日目は、飯島渉の『マラリアと帝国:植民地医学と東アジアの広域秩序』東京大学出版会(2005年)の公刊を記念して、その合同合評会を開催した。その際に、ゲストコメンテータに坂野徹(日本大学)を招聘した。坂野は、詳細なコメントを附して、太平洋戦争期の人類学ならびに医学研究の原型となる研究がおこなわれたのは、大日本帝国の政治経済にとっての「実験国家」であった満洲であることを指摘している。医学と人類学の研究の戦時動員の本格的発動は太平洋戦争期(1940年代)であり、これらの学知における政治との結びつきには、断続のみならず継続性の観点から戦後の医学ならびに人類学(民族学)を検証しなければならないと坂野は明確に指摘した。

同年10月8日(日)には第二回(通算5回目)研究会を開催した。研究会に先立ち、平成17(2005)年度の研究会の運営方針について検討し、翌平成18(2006)年度年度も継続して申請すると同時に早い時期に本研究会の成果公開をすることが合意された。この研究会では前回のコメンテータであった坂野徹の著書『帝国日本と人類学者』(勁草書房、2005年)の総合合評会を開催した。帝国医療と人類学との関係を明らかにするためには、軍事帝国主義的拡張期の日本における人類学の研究に関する歴史的資料は欠かせない。坂野の著書は、その全体像を鳥瞰的に理解するための本研究会にとっての格好の教科書ともいえる必読文献である。他方で、前回の研究会で取り上げた歴史家・飯島の著作は、帝国期日本の個々の熱帯医学研究者に焦点を当てることで、科学史に現れる具体的な行為者を子細に分析している。坂野の専門は科学史であり、科学者のコミュニティと当時の政策の関連など社会史的なアプローチが前面に出ているのに対し、飯島の歴史書は、医学研究における行為者に観点を当てたエスノヒストリーの様を呈する。それぞれ一長一短があるが、双方とも医療システムの変貌を描き出す2つの重要な方法論(より踏み込んで指摘すれば「歴史叙述の修辞」)であることを確認した。

平成17年12月17日(土)の本年度第三回(通算6回)研究会の前半は、特別講師である末永恵子(福島医科大学)を招聘して「旧満洲医科大学の戦争責任」について発表していただいた。本研究テーマは、第二回研究会の特別講師であった坂野の指摘による、帝国期における医学研究のモデルを満洲に求めるという動機から、共同研究員の土屋貴志の推薦により可能になった。末永は、この当時に戦後にもつづく医局講座制と日本の医学教育における人体実験の倫理に関する無関心の起源がすでに見られることを、満洲医科大学で発行された医学紀要や731部隊に関与した医学者との人脈を子細に検討し、説得力をもって指摘している。同日の研究会の後半は、下地明友による「シャーマニズム的世界における精神医学」という論題で、彼が長年にわたって携わってきた宮古・八重山地方の精神医学研究の調査経験について省察し、同時に、これまでの彼の多種多様な研究の集大成を、比較精神医学からみた人間の文明史として捉え直すという構想について発表した。

平成18年3月4日と5日に開催された当該年度最後の第四回(通算7回)研究会は、「表象と身体:グローバル化する保健医療との関わりから」という大テーマで、奥野克巳「感覚の民族誌に向けて:ボルネオ島における身体の問題系」と花渕馨也「インド洋西域における精霊憑依:もう一つのグローバル化と民族医療」について研究発表がおこなわれた。奥野は、従来の民族誌記述が視覚や聴覚優位の記述システムになっている点を指摘し、嗅覚や触覚など、近代の知的システムが軽視してきた「感覚」に関する近代民族誌家の感覚的無関心に着目するという大胆な提案をおこなった。その民族誌記述の感覚論的領域批判の上にたち、嗅覚や触覚の民族がいかにして可能になるのかについて、奥野のフィールドであるボルネオ島に住む人びとの身体の民族誌を事例にとり、詳細な検討を加えた。嗅覚や触覚という原始的あるいは一次な感覚系と、他方で思考のメタファーにもなりうる視覚や聴覚というよく検討されてきた感覚系が、どれほど民族誌記述の違いに反映されてきたのか、あるいは民族誌という書記法そのものが聴覚や視覚に依存するものである故に奥野が指摘するような一次系感覚への過小評価が、どの程度自覚されているのかなど、さまざまな議論が必要であることが指摘された。花渕の発表は、精霊憑依という、これまた当事者と観察者の間にきわめて大きな感じ方の差がある現象についての分析--主に映像が使われた--であった。花渕は、映像を使って、聴覚優位の研究発表にとつてわかりにくい精霊憑依を視覚に訴えるプレゼンテーションをもって補い、また憑依の描写に登場するポストコロニアル的な民族誌記述にみられられる修辞上の差異について、自らの経験と類似する先行研究との比較を通して明確な解釈を与えて、後者の理解を批判した。翌日は、総合討論にあてられた。またその後の自由討論のなかで、吉田尚史「持続可能な開発:カンボジアにおける精神保健」に関する発表がおこなわれた。

研究成果の概要

本年度もまた、帝国医療、進化論、ポストコロニアル言説、医療化などの種々のテーマが取り上げられ、医療システムのダイナミズムが様々な概念装置を通して分析可能であることが明らかになった。のべ4回の研究会において都合8席の個人発表ならび全員での総合討論が可能になった。このような熱のこもった議論が可能になったのは、テーマの斬新性やメンバーの関心の高さという理由の他に、これまで文化人類学において医療システムのダイナミズムに関する共同研究会が開催されてこなかったためではないかと思われる。平成18年度はこのような活動の上に、総合的にまとめ報告書公刊へと展開していきたい。

同研究会に関連した公表実績
◎飯島渉
〈図書〉
  • 飯島渉『マラリアと帝国-植民地医学・帝国医療と東アジアの広域秩序-』東京大学出版会、387+54p、2005年6月
◎池田光穂
〈図書〉
  • 池田光穂『メイキング人類学』[共著]太田好信・浜本満編、世界思想社(担当箇所:「民族誌のメイキングとリメイキング:マーガレット・ミードがサモアで見いだしたものの行方」Pp.113-135)、2005年3月
  • 池田光穂『水俣からの想像力:問い続ける水俣病』[共著]丸山定巳・田口宏昭・田中雄次編、熊本出版文化会館(担当箇所:「水俣が私に出会ったとき:社会的関与と視覚表象」Pp.123-146)、2005年3月
  • 池田光穂『中米地域先住民族への協力のあり方』[編著]平成16年度独立行政法人国際協力機構客員研究員報告書、独立行政法人国際協力機構・国際協力総合研修所、2006年1月
〈雑誌・報告書論文〉
  • 池田光穂、グローバルポリティクス時代におけるボランティア:〈メタ帝国医療〉としての保健医療協力、『地域研究』第7巻第2号、Pp.169-182、地域研究企画交流センター、2006年2月
  • 池田光穂、ホンジュラス調査から私が学んだもの:医療人類学からみた保健医療プロジェクトの持続可能性に関する学際研究、『保健医療プロジェクトの持続可能性に関する学際研究調査報告書』大阪大学人間科学研究科ボランティア人間学教室、2006年3月
  • 池田光穂、国民国家概念がさほど有効ではなくなった今日において、私たちは"国"際保健医療協力の持続可能性に何を期待することができるのか:その学際研究の可能性についての諸考察、『保健医療プロジェクトの持続可能性に関する学際研究調査報告書』大阪大学人間科学研究科ボランティア人間学教室、2006年3月
  • 池田光穂、経済開発の寓話:グアテマラ・クチュマタン高原のコミュニティからの通信、『文学部論叢(地域科学篇)』第85号、Pp.45-67、2005年3月
  • 池田光穂、ファントム・メディシン:帝国医療の定義をめぐるエッセイ、『熊本文化人類学』第4号、Pp.93-98、2005年3月
  • 池田光穂、グローバル化する近代医療と民族医療の再検討:研究史における私的メモワール、『平成14~平成16年度科学研究費補助金・基盤研究(C)(1)研究成果報告書・グローバル化する近代医療と民族医学の再検討』(研究代表者:奥野克巳・桜美林大学国際学部助教授)Pp.23-38、 2005年3月
  • 池田光穂、「持続可能性」の意味:医療人類学からみた保健医療プロジェクトの持続可能性に関する学際研究、『インドネシア母子保健手帳プログラムに関する学際的調査報告書』大阪大学人間科学研究科ボランティア人間学教室、Pp.42-59、2005年8月
  • 池田光穂、「医療人類学の立場からみた保健医療協力プロジェクトの持続可能性に関する学際研究」『平成16年度厚生労働省国際医療研究委託費・研究報告集』Pp.239-240、国立国際医療センター、2005年10月
〈学会研究会発表〉
  • 池田光穂、医療は先住民に役立つのか?--植民地における健康状態・再考、分科会「周縁化される他者の身体:帝国医療の諸相」(代表者:奥野克巳・池田光穂)、北海道大学クラーク会館、2005年5月21日
◎奥野克巳
〈図書〉
  • 奥野克巳、『文化人類学のレッスン:フィールドからの出発』[共編著]奥野克巳・花渕馨也共編、学陽書房(担当箇所:「死と葬儀:死者はどのように扱われるのか?」pp.181-205)、2005年4月
  • 奥野克巳、『帝国医療と人類学』[単著]春風社、2006年2月
〈雑誌論文〉
  • 奥野克巳、人類学の課題としての帝国医療:研究の成果と課題、『平成14~平成16年度科学研究費補助金・基盤研究(C)(1)研究成果報告書・グローバル化する近代医療と民族医学の再検討』(研究代表者:奥野克巳・桜美林大学国際学部助教授)Pp.7-22、2005年3月
  • 奥野克巳、医療の帝国:人類学にひそむ近代医療、『熊本文化人類学』第4号、Pp.1-15、熊本大学文学部、2005年3月
  • 奥野克巳、邪術と嫉妬─ボルネオ島カリス社会の事例から─、『国際学ジャーナル』17: 35-55、桜美林大学国際学部、2005年3月
  • 奥野克巳、近代医療を待ちながら:サラワクの辺境から眺める。『地域研究』第7巻2号、Pp.127-146、平凡社、2006年2月
◎嶋澤恭子
  • 嶋澤恭子「書評:ブリジット・ジョーダン著『助産の文化人類学』宮崎清孝・瀧沢美津子訳」『人間看護学研究』第2号、pp.99-101、2005.
  • 毛利多恵子、藤原美幸、嶋澤恭子「日本助産学会ネパールからの海外研修制招聘事業報告(その1):自然で安全な助産『女性と赤ちゃんにやさしいケア』研修」『日本助産学会誌』第19巻1号、pp.117-124.2005.
  • 毛利多恵子、藤原美幸、嶋澤恭子「日本助産学会ネパールからの海外研修制招聘事業報告(その2):自然で安全な助産『女性と赤ちゃんにやさしいケア』研修 現地ネパールでの評価活動」『日本助産学会誌』第19巻2号、pp.100-117.2005.
◎下地明友
  • 下地明友「書評:宮地尚子著『トラウマの医療人類学』みすず書房」;「こころと文化」(多文化間精神医学会誌) 5:90,2006
  • 下地明友「書評:加藤敏著『統合失調症の語りと傾聴-EBNからNBMへ』金剛出版」;臨床精神医学 35:357~358,2006
◎塚原東吾
  • 塚原東吾、「蘭学・地球温暖化・科学と帝国主義:歴史と気候、オランダ史料」、特集:在外日本関係史料研究:オランダ史料を中心に、『東京大学史料編纂所報』、2006年、刊行予定(原稿は受理済み)
  • Togo Tsukahara (Kobe University), "Reconstructing the Climate of Nineteenth-Century East Asia from the Perspective of the History of Science", in From Beaufort to Bjerknes and Beyond: Critical perspectives on observing, analyzing and predicting weather and climate, Stefan Emeis and Cornelia Leudecke (eds.), Dr. Erwin Rauner Verlag, Augsburg, 2005, pp.117-128
  • M. Zaiki, G. P. Konnen, T. Tsukahara, P. D. Jones, T. Mikami & K. Matsumoto, "Recovery of 19th century Tokyo/Osaka meteorological data in Japan", International Journal of Climatology (A Journal of the Royal Meteorological Society), UK., vol.26, pp.399-423 (2006) ・Togo TSUKAHARA, co-authored with Hironori AYABE, "La cite scientifique de Tsukuba: Une realisation gagnee par l'obsolescence", ANNALES DE LA RECHERCHE URBAINE: Villes nouvelles en recherch?: Les visages de la ville nouvelle, no.98, Paris, pp.153-158. 2005.
  • 塚原東吾、財城真寿美、松本桂子、三上岳彦、「日本の機器観測の始まり:誰が、どのような状況で始めたのか」、月刊地球、vol.27, No.9, 2005年9月号 特集 歴史時代の気候変動と自然災害、海洋出版、2005年8月, pp.713-720
  • 三上岳彦(東京都立大学)、塚原東吾・財城真寿美、「1800年代前半の地球寒冷化:太陽・火山活動との関連」、月刊地球、vol.27, No.9, 2005年9月号 特集 歴史時代の気候変動と自然災害、海洋出版, pp.673-676
  • 財城真寿美(東京都立大学)、塚原東吾(神戸大学)・三上岳彦(首都大学)・松本佳子(東京女子医大)、「日本における19世紀以降の古気象記録とその気候学的意義」、月刊地球、vol.27, No.9, 2005年9月号 特集 歴史時代の気候変動と自然災害、海洋出版、pp.706-712
  • 宗像慎太郎、塚原東吾、「気候変動と不確実性」、藤垣裕子編、『科学技術社会論の技法』、東大出版会、2005年、pp.175-197.
◎土屋貴志
〈論文〉
  • 土屋貴志「侵華日軍的人体実験及其対当代医学倫理的挑戦」(聶精保、李倫氏との共著、中国語)『医学与哲学』(医学与哲学雑誌社) 第26巻第6期、2005年6月、 pp.35-38.
  • 土屋貴志「『15年戦争と日本の医学医療研究会』「戦争と医学」第二次訪中調査団記録」(莇昭三、西山勝夫、井上英夫、貝瀬芳子、刈田啓史郎、中川[末永]恵子、山本繁氏との共著)『15年戦争と日本の医学医療研究会会誌』第5巻第2号、2005年7月、pp.42-47
〈学会発表〉
  • TUCHIYA Takashi、2005年7月29日 第22回国際科学史学会大会(the 22nd International Congress of History of Science)シンポジウムS31「Japanese Human Experimentation in Wartime China: inquiries into its historical, political, cultural and ethical issues」発表(於北京友誼賓館、中華人民 共和国)「Japanese Medical Atrocities 1932-45: What, Who, How and Why?」
  • 土屋貴志、2005年12月10日 日本医学哲学倫理学会・文部科学省科学研究費補助金研究成果公開講座「医学研究はどうあるべきか─遺伝子医療の時代を迎えて」報告(於大阪・千里阪急ホテル) 「15年戦争期の日本による非人道的医学研究について」
  • 土屋貴志、2006年1月8日 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター・ワークショップ「福祉・看護・医療における人文・社会科学の挑戦」(於大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)医療倫理学セッション提題
◎西本太
〈報告書論文〉
  • 西本太「蚊帳の受容と反発:ラオス南部における公衆衛生事業の神話」『平成14~平成16年度科学研究費補助金・基盤研究(C)(1)研究成果報告書・グローバル化する近代医療と民族医学の再検討』(研究代表者:奥野克巳・桜美林大学国際学部助教授)Pp.59-64、 2005年3月
〈学会発表〉
  • 西本太「反帝国主義医療」分科会「周縁化される他者の身体:帝国医療の諸相」日本文化人類学会第39回研究大会(北海道大学)2005年5月21日(土)~22日(日)
◎野村亜由美
  • 野村亜由美、ぼけ老人のいない島の隣保相扶、『熊本文化人類学』第4号、Pp.81‐92、2005年3月
◎花渕馨也
  • 花渕馨也 2006「現地人看護師という媒介─コモロ諸島における帝国医療の教育と実践─」『地域研究』Vol.7 No.2 特集 グローバル化する近代医療 ,pp.081-100.
◎松岡悦子
  • 松岡悦子「ヘルスケアのパラドックス」『現代のエスプリ クリニカル・ガバナンス』458号 2005年 城山英明、小長谷有紀、佐藤達哉(編)至文堂 p.97-106。
  • 松岡悦子「産むこと・生まれること」『みんぱく』2006年2月号 国立民族学博物館 p.2-3
  • 松岡悦子「女性の産後の気分の医療化─産褥精神病、産後うつ病、マタニティーブルーズの社会的構築─」『旭川医科大学紀要』第22号 2006年3月 p.41-52
◎松岡秀明
  • 松岡秀明、「伝統医療」『国際保健医療学 第2版』pp.185-188、東京:杏林書院、2005年4月刊行
◎美馬達哉
  • 美馬達哉「病者の光学」現代思想 33巻2号、青土社、2005年2月、p.p. 98-114
  • 美馬達哉「リスク社会論への視座-脳から社会へ」青井倫一、竹谷仁宏編『企業のリスクマネジメント』慶應義塾大学出版会、2005年。p.p. 1-36.
  • 美馬達哉「要塞と緋文字 メーガン法をめぐって」上野加代子編、『児童虐待のポリティクス 「こころ」の問題から「社会」の問題へ』、明石書店、2006年、p.p. 207-244.
  • 美馬達哉「セリーヌの熱帯医学、あるいは還流する近代」地域研究 7巻2号、平凡社、2006年2月、p.p. 99-120.
◎山崎剛
〈論文〉
  • 山崎剛「熱帯神経衰弱という植民地経験:ヨーロッパ人の身体を通してみる帝国医療」『南山考人』33号p77-85.2005年3月
  • 山崎剛「文明の病、熱帯の病:」『研究成果報告書・グローバル化する近代医療と民族医学の再検討』(研究代表者:奥野克巳・桜美林大学国際学部助教授)
〈学会発表〉
  • 山崎剛「医者のまなざし、人類学者のまなざし:トレス海峡調査におけるW.H.R.リヴァーズと系譜的方法の誕生」「周縁化される他者の身体:帝国医療の諸相」日本文化人類学会第39回研究大会(北海道大学)2005年5月21日(土)~22日(日)
◎脇村孝平
〈論文〉
  • 脇村孝平「英領インドにおける飢饉救済の論理と地域社会-レッセ・フェールと介入」『歴史科学』179・180合併号(大阪歴史科学協議会)、2005年5月、7-20ページ。
  • 脇村孝平「疫病のグローバル・ヒストリー─疫病史と交易史の接点」『地域研究』第7巻第2号、2006年2月、39-58ページ。

2004年度

【館内研究員】 信田敏宏
【館外研究員】 飯島渉、奥野克巳、佐藤純一、嶋澤恭子、下地明友、谷口純一、塚原東吾、土屋貴志、野村亜由美、花渕馨也、松岡悦子、美馬達哉、山﨑剛、吉田尚史、脇村孝平
研究会
2004年10月8日(金)14:30~(第6セミナー室)
全員「本年度研究計画打ち合わせ」
池田光穂「ポスト帝国医療 ─ 沖縄の公衆衛生看護師を中心に」
2004年10月9日(土)9:00~(大演習室)
奥野克巳「ホメ・メディクス ─ 進化・身体・土着医療から考える」
西本太「ラオス公衆衛生事業による辺境住民の主体形成について」
2004年12月18日(土)14:00~(第6セミナー室)
島澤恭子「出産場所を決定すること:ラオス女性の行動から」
倉田誠「サモアにおける公衆衛生の普及と「伝統医療」」
2004年12月19日(日)09:30~(第6セミナー室)
野村亜由美「「ぼけ(呆、惚)」概念の医療化について
2005年2月11日(金)13:00~(第6セミナー室)
奥野克巳・山崎剛「基調報告」
倉田誠・西本太「コメント」
2005年2月12日(土)9:30~(第6セミナー室)
全員「総合討論」
研究成果

初年度は、帝国医療、進化論、ポストコロニアル言説、医療化などの種々のテーマが取り上げられ、医療システムのダイナミズムが様々な概念装置を通して分析可能であることが明らかになった。研究初年度の10月からの開催という時間的制限がありながらのべ3回の研究会において6名による個人発表ならびに2名による文献レビュー、さらに2回の長時間にわたる全員での総合討論が可能になった。このような熱のこもった議論が可能になったのは、テーマの斬新性やメンバーの関心の高さという理由の他に、これまで文化人類学において医療システムのダイナミズムに関する共同研究会が開催されてこなかったためではないか。また研究会内部における議論の活発さは、学会全体における関心をも同時に反映しているものと考えられる。例えば、本年度研究会が採択される前の準備段階で発表された文化人類学会の分科会において質疑応答が活発になされ、学会員の(事後および事前の)関心が高いことがわかる。

同研究会に関連した公表実績
◎出版
池田光穂[共著]『マヤ学を学ぶ人のために』八杉佳穂編、世界思想社(担当箇所:第9章「マヤ医学--文化人類学的研究」Pp.188-205)、2004年10月
池田光穂「医療人類学の立場からみた保健医療協力プロジェクトの持続可能性に関する学際的研究」、『平成15年度厚生労働省国際医療協力研究委託費研究報告集』、Pp.349-350、国立国際医療センター、2004年10月
池田光穂[共著]『宗教人類学入門』関一敏・大塚和夫編、弘文堂(担当箇所:第二部第五章「病む」)Pp.160-175、2004年12月
池田光穂[共著]『水俣からの想像力:問い続ける水俣病』丸山定巳・田口宏昭・田中雄次編、熊本出版文化会館(担当箇所:「水俣が私に出会ったとき:社会的関与と視覚表象」Pp.123-146 )、2005年3月
池田光穂「ファントム・メディシン:帝国医療の定義をめぐるエッセイ」、『熊本文化人類学』第4号、Pp.93-98、2005年3月
奥野克巳「医療の帝国:人類学にひそむ近代医療」『熊本文化人類学』第4号、Pp.1-15、2005年3月
野村亜由美「ぼけ老人のいない島の隣保相扶」『熊本文化人類学』第4号、Pp.81-92、2005年3月
◎学会分科会
分科会「帝国医療の問題系:近代化のレッスン」(組織者:池田光穂・奥野克巳)日本文化人類学会第38回研究大会、東京外国語大学(東京都府中市)、2004年6月6日