国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

博物館におけるアイヌ民族とその文化の展示のあり方の再検討

共同研究 代表者 スチュアート ヘンリ

研究プロジェクト一覧

目的

2005年6月~2006年11月にかけて、国内の21博物館におけるアイヌ民族に関する博物館展示を調査した結果、展示は「伝統」を中心として行なわれ、現状(民族の現在)に関する展示は1~2の例外を除いては皆無であることが判明した。アイヌ民族に関して「伝統」を強調する展示により、アイヌ民族を過去に閉じこめ、永遠の未開性を演じさせる結果をもたらせている、あるいはアイヌ民族は現在いるかどうかということを曖昧にしていることが明らかになった。

本研究では、博物館現場にたずさわる関係者と当事者であるアイヌ関係者を集めて展示に関する議論を深めることを目的とする。具体的には、1)アイヌ民族の「現状」とは何かを探る、2)その現状はどのように展示できるのか、3)アイヌ民族の展示に関する博物館同士と当事者であるアイヌのコミュニケーション・ネットワーク構想を練る、の3点である。

研究成果

国内の博物館において、アイヌ民族に関する展示は「伝統」を中心として行なわれ、現状(民族の現代)に関する展示は少ない。アイヌ民族に関して「伝統」を強調する展示により、アイヌ民族を過去に閉じこめ、永遠の未開性を演じさせる結果をもたらしている、あるいはアイヌ民族は現在いるかどうかということを曖昧にしていることがこれまでの研究によって明らかにされている。

本研究では、博物館現場にたずさわる関係者と当事者であるアイヌ関係者による展示に関する議論を深めることを目的とし、1)アイヌ民族の「現代」とは何かを探る、2)その「現代」はどのように展示できるのか、3)アイヌ民族の展示に関する博物館同士と当事者であるアイヌのコミュニケーション・ネットワーク構想を練る、の3点である。

アイヌ民族の現代展示はどのような現実的な方法に関する具体的な検討を重ねた結果、大規模の博物館と小規模の博物館を分けて考えなければならないことを確認した。当事者であるアイヌおよび小規模の博物館の事情をふまえて、1)共同資料(博物)館は地元を中心とし、説明表はその地域のアイヌ語にすべき、2)アイヌ民族の歴史と現代(現状)の間を現わす展示が必要、3)表面的に和人と同じような生活をするアイヌの「心」を表象する工夫が望ましい、4)伝統工芸に拘泥せず、現代アートの展示、5)被害史、悲史の再生産を避けるなどのポイントに対する大まかな合意に達した。それをふまえて、1)博物館展示にアートをとり入れる、2)容易にアップデートできるデジタル機器を導入する、2)資料入り換えが可能な展示施設の導入、3)展示の理解を助ける「アイヌ史」の提示、4)キャプションに一般向けの説明およびアイヌ語表示という具体的な提案を盛り込む報告書を計画した。

2010年度

論文集には、北海道を中心とする博物館におけるアイヌ民族の展示を検証して、その現状を分析する。さらに、これまでは共同研究員が行なってきたアジア(中国)、北米(カナダ、米国、メキシコ)、ヨーロッパの8カ国の博物館における少数・先住民族の展示を分析して、それら展示方法と内容を参考に、日本の状況――とくにアイヌ民族がおかれている状況――を考慮した展示の方法と構想の論文集にしてSERに投稿する計画である。

2回の研究会で、総論につづき、1)国内博物館におけるアイヌ民族の展示の現状と課題、2)外国博物館の先住民展示の検討・比較研究、3)以上の1)と2)をふまえてアイヌ民族の展示に関する提言、という3つのセクションを仮定して、各自の執筆分担と論文内容の調整を行なう。1回目の研究会では執筆者分担を協議し決めて、2回目の研究会では原稿の読み合わせと最終的な調整を経て、12月をめどに入稿する。共同研究員12名による執筆を予定している。

【館内研究員】 岸上伸啓、佐々木史郎
【館外研究員】 内田祐一、萱野志朗、北原次郎太、齋藤玲子、佐々木利和、鹿田川見、手塚薫、出利葉浩司、山崎幸治
研究会
2010年7月23日(金)13:00~17:00(国立民族学博物館 第1演習室)
共同研究会報告書打合せ
研究成果

2年間の研究成果を報告書(SER)の構成する内容と執筆陣を検討して、発行計画をまとめた。

2009年度

最終年度にあたり、研究成果の公開および具体的な展示提案に向けて当事者(アイヌ民族)からの「声」を聞くために、シンポジウムを北海道(北海道大学予定)と国立民族学博物館で開催する。以上のシンポジウムの成果をまとめるため総括研究会を開く予定である。最大の課題はアイヌ民族の「現代」をどのようにとらえられるのか、その「現代」を展示するに当たってどのような工夫が必要なのかという課題を重点的に検討する。

【館内研究員】 岸上伸啓、佐々木史郎、佐々木利和
【館外研究員】 内田祐一、萱野志朗、鹿田川見、北原次郎太、齋藤玲子、手塚薫、出利葉浩司、山崎幸治
研究会
2009年9月6日(日)10:00~16:00(国立民族学博物館 第1演習室)
年度後半実施予定のシンポジウム内容検討
2009年12月6日(日)10:00~17:00(北海道大学学術交流会館 第1会議室)
「アイヌ民族と博物館の共同にむけて」
「アイヌ民族と博物館の共同にむけて」
報告1:出利葉浩司
報告2:内田祐一
報告3:佐々木利和
2010年2月27日(土)13:00~17:00(国立民族学博物館 第4演習室)
2010年2月28日(日)10:00~13:00(国立民族学博物館 第4演習室)
全員「総合討論と提言考案」
研究成果

前年度の議論をふまえて、アイヌ民族の現代展示はどのような現実的な方法に関する具体的な検討を行なった。その検討では、大規模の博物館と小規模の博物館を分けて考えなければならないことが確認された。当事者であるアイヌおよび小規模の博物館の関係者を中心としたシンポジウムでは、1)共同資料(博物)館は地元を中心とし、説明表はその地域のアイヌ語にすべき、2)アイヌ民族の歴史と現代(現状)の間を現わす展示が必要、3)表面的に和人と同じような生活をするアイヌの「心」を表象する工夫が望ましい、4)伝統工芸に拘泥せず、現代アートの展示などが提案された。それをふまえて、1)博物館展示にアートをとり入れる、2)容易にアップデートできるiPod映像導入、2)資料入り換えが可能な展示施設の導入、3)展示の理解を助ける「アイヌ史」の提示、4)キャプションに一般向けの説明およびアイヌ語表示という具体的な提案とし、来年度(22年)に論文集および一般向けの商業出版を企画する。

2008年度

予算によるが、共同研究会を2~3回開催する予定である。研究会では、前年度(19年)に検討される行動計画に基づいて、研究の目的を達成すべく具体的な検討を重ねる。

すなわち、アイヌ民族の「現代」をどのようにとらえられるのか、その「現代」を展示するに当たってどのような工夫が必要なのか、などの課題を検討する予定です。

なお、下記の予定は予算によって変更されることと、共同研究員の都合によって変更されうることをご了承いただきたい。

【館内研究員】 岸上伸啓、佐々木史郎、佐々木利和
【館外研究員】 内田祐一、萱野志朗、北原次郎太、齋藤玲子、手塚薫
研究会
2008年7月26日(土)10:00~17:30(北海道大学法学部)
2008年7月27日(日)10:00~13:00(北海道大学法学部)
「国内外の博物館における民族表象」
2008年11月29日(土)13:00~17:30(国立民族学博物館 第1演習室)
2008年11月30日(日)9:00~13:00(国立民族学博物館 第1演習室)
博物館におけるアイヌ民族とその文化の展示のあり方の再検討
出利葉、山崎、謝、吉本、亀井、鹿田
2009年2月28日(土)13:00~17:30(国立民族学博物館 第2演習室)
2009年3月1日(日)10:00~13:00(国立民族学博物館 第2演習室)
博物館におけるアイヌ民族とその文化の展示のあり方の再検討
(特別講師)山崎、鹿田、加藤、出利葉、亀井
研究成果

第1回~2回の研究会では、北海道を中心とする博物館におけるアイヌ民族を対象とした展示および、共同研究員が所属する博物館の特別展示などの報告を題材に、博物館における民族表象の現状と問題点に関する情報交換(情報並列化)が主なテーマであった。さらに、白老のアイヌ民族博物館で、アイヌ民族の文化と現状を紹介する講義および視覚資料の説明があった。3回目の研究会では、指定管理者制度を実施する沖縄県立博物館・美術館と長崎歴史文化博物館の担当者による報告から現状と問題点をめぐる討論を行なった。

平成21年度の研究計画を練り、札幌および国立民族学博物館で2回の公開シンポジウムを開催して、学会内外の意見を参考に最終報告書の準備を進めることを申し合わせた。

2007年度

本年度は研究構想に必要な課題設定と情報交換に主眼をおく。これまで20数カ所の国公・私立博物館に対して実施してきた調査では、アイヌ民族表象に関して「現状」を展示すべきだと考える博物館関係者は多いが、アイヌ民族における多様な現状をどのように展示できるのか(あるいはすべきかどうか)、アイヌ自身が何を望んでいるのかに関する情報が不足していることが明らかになっている。

この中心的な課題を検討するに当たって具体的に、それぞれの博物館におけるアイヌ民族表象の方針と構想、そして実施状況について共同研究員による報告と資料提供を行なう。また、共同研究員で網羅できない状況を把握すべく、特別講師を招いて、より広範囲にわたる情報を収集する。本館での研究会開催に際して、関東・関西の博物館関係者や関連代表集団の講師を、北海道での開催に際してアイヌ民族の有識者などの講師を依頼する。

【館内研究員】 岸上伸啓、佐々木史郎、佐々木利和
【館外研究員】 内田祐一、萱野志朗、齋藤玲子、鹿田川見、手塚薫
研究会
2008年1月26日(土)13:00~17:30(第2セミナー室)
2008年1月27日(日)10:00~14:00(第2セミナー室)
共同研究計画構想の検討と今後の行動予定
全員(各20分)
2008年2月16日(土)10:00~17:00(北海道大学法学研究科)
2008年2月17日(日)9:30~13:00(北海道大学法学研究科)
スチュアート ヘンリ「博物館におけるアイヌ民族とその文化の展示のあり方の再検討」
研究成果

初年度にて、共同研究員同士の問題意識を確かめ合うとともに、アイヌ民族の現代とは何か、それをどのように展示できるか、あるいは展示すべきかどうかについて、それぞれが抱えている課題を発表してもらった。また、上記の6.で述べた、北海道大学総合博物館で計画されているアイヌ民族展示について活発な議論が交わされ、本共同研究会がその展示計画に関して引き続き総合博物館に協力することが決まった。さらに北海道大学において2007年4月に開設されたアイヌ民族・先住民研究センターで検討されている「パイロット・ミュージアム」構想にも本研究会が協力・協議することも決まった。