海外フィールド経験のフィードバックによる新たな人類学的日本文化研究の試み
キーワード
国外フィールドワーク、 ホームに帰る人類学、 日本
目的
本共同研究の目的は、国外フィールドでの民族誌的経験を通して、文化人類学による日本社会/文化理解の新たな視角を提案することである。我が国における文化人類学は、戦後しばらくまでの時期を除けば、主に国外フィールドにもとづく異文化理解の学として発展してきた。異文化理解とは異文化を自文化と参照する営為であるため、それは必然的に一種の自文化論となる。ただしこの自文化論はほとんどの場合、研究者自身にとってもじゅうぶんに意識化されることはなく、あくまで民族誌の行間に埋め込まれている。しかし実際には、梅棹忠夫や佐々木高明、中根千枝の例が示すように、日本の人類学には、海外ですぐれた民族誌的研究を行ってきた人類学者が日本文化に関するユニークな仮説を提案するという良質な知的伝統が存在する。本共同研究では、そうした伝統を新たに継承すべく、国外での民族誌的研究の経験を重ねてきた研究者たちが、暗黙裡の参照項として措定してきた日本文化を対象化することで、国外フィールド発の日本研究の新たな可能性を提示したい。
2020年度
本研究は、これまで主に海外で調査を行い、現在では日本の研究にも着手している人類学者を中心に組織するが、しかし海外フィールドと国内フィールドの往還から日本研究への新たなアプローチをさぐる、という本研究を遂行する上では、それに加えさらに
A)日本で自文化研究をする外国出身研究者
B)海外で日本研究に従事した経験をもつ日本人研究者
C)日本研究から始めて海外調査にも着手し始めた研究者
の視点を補うことが有効である。そのためメンバーの一部にA)B)C)それぞれの分野を担う研究者を加え、また必要に応じて該当する分野のゲスト講師を研究会に招聘する。
本研究に関する研究会は、初年度に2回、第二年度と第三年度にはそれぞれ4回ずつ、合計10回の実施を予定する。
初年度の研究会では、海外フィールド調査の経験を日本研究に適用するにあたっての基礎的な問題関心を共有する。海外の視点を経由させた日本文化研究は、実際には岡正雄にはじまり梅棹忠夫、佐々木高明など多くの研究蓄積を有している。またこの文脈では、海外の人類学者による日本研究も参考になるであろう。初年度は、これらの研究群の得失を検討することで、本共同研究が依拠する理論的立場を明らかにし、共有する。
【館内研究員】 | 飯田卓、平井京之介 |
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【館外研究員】 | 市野澤潤平、川瀬由高、川田牧人、桑山敬己、黄潔、島村恭則、清水展、中谷文美、中村昇平、平野美佐、松村圭一郎 |
研究会
- 2021年2月23日(火・祝)13:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室 ウェブ会議併用)
- 片岡樹(京都大学)「全体趣旨」
- 清水展(関西大学)「横須賀ネイティブの自文化=自分化(?)グラフィーという企て」
- 片岡樹(京都大学)「逆さ読みの日本論へ」
- 全体討論