「描かれた動物」の人類学――動物×ヒトの生成変化に着目して
キーワード
動物、描くこと、生成変化
目的
人はなぜ「動物」に惹かれるのか?レヴィ=ストロース(2001)が指摘するように、動物との直接的な関わりが希薄になった現代においても私たちはなぜ子供が生まれるとすぐ動物の絵本や玩具を与えるのか?これらの問いに生成変化としての「描かれた動物」が人と動物との「あいだ」の回路を開くとともにこれまでに知覚できなかったものを知覚させるものであるという可能性を検討することで迫るのが本研究の目的である。このためまず①動物をどのように知覚し、、②何によって描写するのか、③なぜ描写するのか、④描写、あるいは描写された動物はどのような場で生成し、誰に必要とされるのかという4つの問いを具体的な事例を検討することによって、重なりや空白も含めた動的なものとして捉えなおす。さらにより深くこの問題に取り組むため、他者とともに「生成変化」する人類学の手法(インゴルド)によってドゥルーズ&ガタリの提示した「動物との間に生じる生成変化によって新しい次元を開くもの」としての「動物描写」を検討する。具体的には描き手である人と、描かれる動物との間の動的な生成過程を再現し、「動物を/で/と/描く」という行為のなかで何が立ち現れるのかを身体経験や認知科学の知見を援用しながら明らかにすることでこれらの問いについて考察し新たな動物理解の地平を開拓することを目指す。
2020年度
1年目の2020年は民博での1回の研究会、及びオンラインでの研究会を開催する。第一回目の研究会では動物とはどのような存在か、描くとはどのような行為なのかを概観したうえで、研究会の射程や進め方、メンバー間の役割分担と連携を確認する。また民博の展示を見学し、動物モチーフのものを探索、検討する。さらに、オンラインの研究会を開催し、ドゥルーズ &ガタリの『千のプラトー』とその関連文献や映像、インゴルド のアートや動物に関する著作、 “Animals into art”などの文献を読み、人と動物の間に生じる生成変化を人類学の方法によって捉え直すための理論的背景を研究会のメンバーで共有する。
第1回:動物を/で/と/描く
山口未花子「共同研究の趣旨説明、今後の計画」
全員「自己紹介と研究会の中での役割について」
民博の展示における「描かれた動物」の見学と比較検討
第2回:動物を描くこと、描かれた動物、と生成変化
山口未花子他:関連文献の検討
【館内研究員】 | 山中由里子 |
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【館外研究員】 | 石倉敏明、大石侑香、小田隆、COKERCaitlin、齋藤亜矢、管啓次郎、菅原和孝、竹川大介、西澤真樹子、丹羽朋子、盛口満、吉田ゆか子 |
研究会
- 2020年11月8日(日)10:00~18:00(国立民族学博物館 第3セミナー室 ウェブ会議併用)
- 特別展「先住民の宝」の見学(全員)
- 山口未花子(北海道大学)「趣旨説明:「描かれた動物」共同研究の目指すもの」
- 民博展示における「描かれた動物」の調査(全員)
- 各共同研究者のテーマ発表と研究会の展望についての全体討論(全員)
- 2021年3月9日(火)13:00~17:30(ウェブ会議)
- 山口未花子(北海道大学)「ドゥルーズ &ガタリ著『千のプラトー』第十章における芸術・あいだ・動物と人類学」
- 番匠玖美(北海道大学)インガ・ボレイコ(北海道大学)前田雄亮(北海道大学)加賀田直子(北海道大学)田中佑実(北海道大学)ケイトリン・コーカー(北海道大学)「『千のプラトー』キーワード解説」
- 管啓二郎(明治大学)「ドゥルーズ「と」ガタリの「と」とともに」
- 菅原和孝(京都大学名誉教授)「動物になること、についてのコメント」
- 全体討論
- 次年度の計画についての打ち合わせ