国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

コロナ禍における文化の免疫系としてのローカル文化の検証:東アジアを中心に

緊急枠:現代文明と感染症

代表者:島村一平

研究期間:2020.12-2023.3

 

プロジェクトの目的・内容

新型コロナウイルス感染症がほぼ同時に地球全体に広がるという事態に及んで、社会に潜在していた差別意識が浮かび上がるとともに、私たちが現在の生活を送るうえで当たり前と思って来た慣行やルール、すなわち人類が近代に入って作り上げてきたあらゆる制度や規範の意義と存在理由が改めて問われている。(吉田2020)。一方、宗教学者の島田裕巳は、新型コロナウイルスの流行は宗教に致命傷を与えた、と主張する。というのも宗教は、信者が集まることによって成り立つものであり、その活動に大幅な制限が加えられるからである(島田2020)。しかし人類学が関心を持ってきたミクロかつローカルな文化実践に関しては、必ずしも人が集まるわけでもない。むしろコロナ禍に対して「文化の免疫系(島村2011)」とも呼べる様々な対抗策がなされていると考えられる。そこで本プロジェクトでは、コロナ禍に対して日本に近い東アジア地域(日本・中国・韓国・台湾・モンゴル・シベリア・ロシア)において、どのような「文化の免疫系」が発動している/していないか、その態様を比較考察することを目的とする。研究会を組織し、最終的には国際シンポジウムを行い、英語による書籍をまとめるものとする。また研究会では、東アジア地域との比較の対象として、コロナ禍の被害が甚大なヨーロッパやアフリカの地域の研究者をゲストスピーカーに呼ぶ予定としている。

 

期待される成果

コロナ禍による各国の政策レベルでの対応は、マスメディアによって可視化されるようになった。その一方で、コロナ禍に対するローカルかつミクロなレベルでの対応や、病院などの医学の対応ではなく文化としての対応に関しては、あまりみえて来ない。まずは頃合を見計らいながら、現地でフィールドワークをすることで、コロナ禍に対して、それぞれの国でどのような文化実践がなされているのか、が明らかになってくることであろう。
コロナ禍は近代システムだけでなく、ローカルな文化実践についてもその存在意義を投げかけているといえる。そこでどのような形で「文化」がふるいにかけられ、どのようなものが残っていくのか、について東アジアの事例をもとにある程度のモデル化ができるのではないかと期待している。また、本プロジェクトは、英語による書籍化も視野に入れている。研究成果を英語で発信することで、一定の注目は得られるのではないかと判断する。

 

国際シンポジウム

2021年度開催予定