開発と保存:日本における文化財保存と村おこし(2003-2005)
目的・内容
本研究の目的は、地方の文化遺産における伝統の保存と観光による村(町)おこしの問題を、広い視野から人類学的に検討することである。調査地としては、すでにフィールドワークをおこなっている白川郷の他、竹富島、明日香村、石見銀山で調査を行い、観光業、博物館施設、経営史など、文化の創造的演出について幅広い観点から研究を行う。
活動内容
2005年度活動計画
本年度行った調査研究の結果報告としては、文化財保存と観光開発の関係には地域社会にどういう役割を果たすか、どういう異議を持つか、経済にも社会的にも大きな機会および展望を与えながら、様々な問題も生じてくることが明らかになった上、研究課題をより理解した。国選定特別建造物郡保存地区の住民は伝統的な風景を守りながら、近代生活の継続発展を目指す上、その坩堝の中に起こる矛盾や摩擦が一体どういうものであるかを把握し、具体的な資料収集ができた。そして、学会活動も数回行って、発表の内容に対した評価と示唆が貴重な思想の種となり、より洗練した分析を目指しながら、最終研究報告の段階に近付いたところです。
《調査研究活動》
― 島根県大田市大森町 平成17年8月10日より21日まで
- 石見銀山における町並み保存の調査:町並み保存の実践に関する聞き取り調査と参与観察;
観光業の経営に関する聞き取り調査;来客に聞き取り調査
― 沖縄県八重山郡竹富町竹富島 平成17年8月22日より9月3日まで
- 竹富島における町並み保存の調査:町並み保存の実践に関する聞き取り調査と参与観察;
観光業の経営に関する聞き取り調査;来客に聞き取り調査
― 岐阜県大野郡白川村 平成17年9月7日より9日まで
- 白川村荻町区「合掌造り集落」、野外博物館「合掌造り民家園」で訪問と集材と一般参与観察・来客との聞き取り調査
- 合掌造り屋根の葺き替えの手伝いと近況聞き取り調査
《学会活動》学会および研究会での口頭発表は6回行われた。
1.「社会人類学から観た文化遺産保存と観光開発」
奈良大学社会学部現代社会学科,2005年2月7日
2.「社会人類学から観た文化遺産保存と観光開発」
民博共同研究会「文化遺産管理とツーリズムに関する研究」第10回、国立民族学博物館
3.“Manly men doing manly things in manly ways, or anthropology as a kind of roofing”
分科会:"Untranslatable" Culture: How anthropologists and others use language to translate or explain cultural concepts. (通訳しきれない文化:人類学分析における文化的概念の通訳および解説)、THE JAPAN ANTHROPOLOGY WORKSHOP(JAWS), 16th Conference、The University of Hong Kong、中華人民共和国、香港、2005年3月17-21日
4.「縁付くりとしてインタネットにおける遺産消費ー基礎研究報告」(Heritage consumption as 'en'), Anthropology of Japan in Japan, Osaka Gakuin University, Osaka, Japan, 2005年4月23日
5.「屋根が有れば「結い」も有賀地:白川郷荻町の結い制度における継続の変容と変容の継続」:有賀喜左衛門の足跡を踏まえ、近代社会における伝統的な行動や形式の変容を取り上げ、考察を加える
国立民族学博物館―館内発表、2005年5月11日
6.「非非発展主義:文化遺産保存における凍結保存に対する反論」
日本文化人類学会、北海道、札幌市、2005年5月21-22日
2004年度活動報告
以下の調査に従事し、3つの学会報告をおこなった。文化財保存と観光開発の関係に地域社会がどういう役割を果たすか、どういう意義を持つかを調査し、経済的にも社会的にも大きな機会および展望を与えながら、同時に様々な問題も生じてくることを明らかにした。国選定特別建造物群保存地区の住民が伝統的な風景を守りながら、近代生活の継続発展を目指すとき、その坩堝の中に起こる矛盾や摩擦が一体どういうものであるかの把握につとめ、具体的な資料収集をおこなった。学会での発表内容に対する評価と示唆は貴重なものであり、最終研究報告にむけてより洗練した分析を目指したい。
《調査研究活動》
― 岐阜県大野郡白川村 平成16年4月2日より5日まで
- 白川村役場、白川村荻町区「合掌造り集落」、野外博物館「合掌造り民家園」で訪問と取材と一般参与観察・来客との聞き取り調査
- 合掌造り屋根の葺き替えの手伝いと近況聞き取り調査
― 岐阜県大野郡白川村 平成16年10月14日より17日まで
- 白川村荻町区「合掌造り集落」でどぶろく祭り「大祭り」の一般参与観察
― 沖縄県八重山郡竹富町竹富島 平成16年10月24日より11月12日まで
平成16年12月31日より17年1月20日まで
平成17年2月14日より3月14日まで
- 竹富島における町並み保存の調査:町並み保存の実践に関する聞き取り調査;観光業の経営に関する聞き取り調査;来客に聞き取り調査;竹富島の種小取り祭りの一般参与観察
《学会発表》
― Democracy in Action: heritage preservation as a social movement, AJJ, April, 2004
― The Country in the City in the Country: Sarerugawa no Koe, Part II, AJJ, Nov., 2004
― Manly men doing manly things in manly ways, or anthropology as a kind of roofing, JAWS Hong Kong Meeting, March, 2005
2003年度活動報告
《調査研究活動》
― 岐阜県大野郡白川村 平成15年12月18日より24日まで
- 白川村役場:訪問と集材
- 白川村荻町区「合掌造り集落」での一般参与観察
- 野外博物館「合掌造り民家園」で来客との聞き取り調査
- 大雪の日:旧近所の雪かき手伝い運動と近況聞き取り調査
― 岐阜県大野郡白川村 平成15年12月27日より平成16年1月元日まで
- 白川郷荻町八幡神社の年末行事の参与観察
- 白川村荻町区「合掌造り集落」での一般参与観察
- 野外博物館「合掌造り民家園」で来客との聞き取り調査
- 大雪の日:旧近所の雪かき手伝い運動と近況聞き取り調査
― 沖縄県八重山郡竹富町竹富島 平成16年1月元日より16日まで
- 竹富島における町並み保存の一般調査:
町並み保存の実践に関する聞き取り調査
観光業の経営に関する聞き取り調査
来客に聞き取り調査
― 沖縄県八重山郡竹富町竹富島 平成16年3月8日-28日まで
- 竹富島における町並み保存の調査:
町並み保存の実践に関する聞き取り調査と参与観察(保存会委員会、海岸美化運動など)
観光業の経営に関する聞き取り調査
観光業の行事観察(海開き祭りなど)
来客に聞き取り調査
《学会活動》
― Anthropologists of Japan in Japan (AJJ) Autumn 2003 Workshop
Sofia University, Tokyo
November 1-2, 2003
聴講