国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

コミュニティ通訳者を対象とした学術手話通訳者養成プログラムの開発(2015-2016)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|挑戦的萌芽研究 代表者 中野聡子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

近年、ろう者の大学進学率が増加している。しかしながら、我が国では、高等教育機関における情報保障等、学術性の高い手話通訳(以下、学術手話通訳)をコミュニティ通訳者が担わなければならない現状にある。学術手話通訳を受けるろう学生や研究者にとって、コミュニティ通訳者による手話通訳はわかりにくく、学術性が高くなるにつれて、その傾向はより顕著となる。本研究では、コミュニティ通訳者の日本語的特徴の強い中間型手話を用いた訳出と通訳作業過程に焦点をあてて、学術手話通訳に必要なスキルを習得可能にする養成プログラムを開発することを目的としている。

活動内容

◆ 2016年4月より転出
◆ 2015年4月より転入

2015年度活動報告

H27年度はコミュニティ手話通訳者のほとんどが使用している中間型手話の言語構造について,特に日本語から日本手話への同時通訳における,複合語の訳出表現に焦点をあてて分析を行った。
通訳技術のレベルが異なる5名の通訳者について,複合語の訳出のわかりやすさ,わかりにくさに影響を与える要因を調べた。わかりにくいと評価された訳出表現は,内容の理解に起因すると考えられるもの,対訳となる手話表現が日本手話の文法に正確に則って表現されていないためわかりにくくなっているものの2つに分類された。後者は具体的には通訳の受け手にとって複合語がひとつの単語と認識される表現方法になっていないことが指摘できる。
手話表現の文法に則っていないものとしては,「空間の移動」「リズム」「うなずき」「手の動きの弱化・消失の非生起」が関与していた。