国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本・イスラーム関係のデータベース構築――戦前期回教研究から中東イスラーム地域研究への展開(2005-2007)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|基盤研究(A) 代表者 臼杵陽

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究では、これまで看過されてきた戦前日本の戦略研究としての回教・回教徒研究を積極的に再評価し、戦後展開した基礎的な地域研究としての中東イスラーム地域研究との断続性よりもそれへの継続性に力点を置いて検討する。そのような観点から新たにデータベースを構築しつつ、大国となったわが国において、基礎研究と政策研究のバランスの上に立った「21世紀型中東イスラーム地域研究」のあるべき姿を提言する。また日本の宗教界による回教への関心のありようを明らかにすることで、これまでのイスラーム理解とは異なる位相を提示し、このような新たな過去の提示を通じて、従前とは違った可能性を持つ将来の中東イスラーム研究のあり方を考え直す契機にする。

活動内容

◆ 2005年10月より日本女子大学へ転出

2005年度実施計画

日本・イスラーム関係のデータベース構築を目的とする研究会および作業班を組織することを通じて、戦前の帝国日本における回教・回教徒研究を詳細に概観する。同時に戦後の中東イスラーム地域研究との比較を行ないつつ、戦前日本の当該研究のもっていた可能性を再評価するためのディベートを作業班ごとに政策論的な方向性を念頭に置きつつ実施する。
さらに、戦前日本の回教・回教徒研究のデータベース化のための準備作業として、中東イスラーム地域研究者や日本史を含む東アジア地域、東南アジア地域、あるいは南アジア地域のさまざまなディシプリンをもつ地域研究者とのネットワークを構築し、当該地域における日本とイスラームとの関係を示す史資料の所在に関する調査・収集を行なうために分担者および研究協力者を派遣する。また、平成18年2月にはイスタンブルにおいてイスタンブル大学およびアンカラ大学の研究者の協力を得て、日本におけるトルコ系ムスリムのタタール人コミュニティについてのワークショップを開催する予定であり、日本から分担者および研究協力者4名を派遣する。
研究代表者および分担者、ならびに研究協力者の役割は、戦前と戦後という研究対象となる時期よって分類され、日本からの回教/イスラームへの眼差しに注目した「研究機関・回教認識班」と回教/イスラームから日本への眼差しに注目した「中東イスラーム地域研究班」に分けられる。以下の研究班の構成の仕方は責任を明らかにするための分担であって、それぞれ分担者および協力者は研究会の開催・参加によって共通の認識を共有し、相互乗り入れ的に共同作業を行なう必要がある。
「研究機関・回教認識班」として(1)「回教研究機関」研究班(店田廣文・安藤潤一郎)(2)「中東イスラーム研究機関」研究班(加藤博・臼杵陽)(3)「宗教界の回教/イスラーム認識」研究班(大澤広嗣・三沢伸生)(4)「知識人の回教/イスラーム認識」研究班(福田義昭・長澤栄治)が置かれ、また中東イスラーム地域研究班として(1)トルコ・中央アジア地域研究班(三沢伸生・福田義昭)(2)イラン・アフガニスタン地域研究班(鈴木均・臼杵陽)(3)アラブ地域研究班(長澤栄治・店田廣文)(4)戦前東アジア地域研究班(安藤潤一郎・大澤広嗣)が設置される。(下線は班長)
研究班長のうち、大澤広嗣、福田義昭、安藤潤一郎は研究協力者であり、アラブ地域および戦前東アジア地域における日本とイスラームとの関係を示す史資料の所在に関する調査・収集を行なうために福田義昭をカイロに、安藤潤一郎を北京に派遣する予定である。