熱帯アフリカにおける自然資源の利用に関する環境史的研究(2005-2007)
目的・内容
本研究では、アンゴラを中心とした熱帯アフリカにおいて、そこでの自然資源の利用に関わる変遷を環境史の視点から明らかにすることを目的とする。具体的には、狩猟、採集、漁労、牧畜、農耕などの生業活動を対象にして、過去100年間における各々の生業の資源利用のあり方とその変遷、及びそれを引き起こした要因を明らかにすることを目的とする。同時に、アンゴラで得られた研究成果を他の熱帯アフリカ諸地域(モザンビークやナミビア)のそれと比較することを通して、過去100年間における熱帯アフリカ全体の自然資源利用の変遷を説明するための動態モデルを提示することをねらいとする。
活動内容
2007年度活動報告
本研究では、熱帯アフリカを対象にして自然資源の利用に関わる変遷を環境史の視点から明らかにすることを目的とした。具体的には、狩猟、採集、漁労、牧畜、農耕などの自然に依存する生業活動に注目して、各々の生業における資源利用のあり方とその歴史的変遷、及びその変遷を引き起こした要因を明らかにすることを目的とする。
まず2007年度は、3名のメンバー(池谷、佐藤、飯田)がそれぞれ、5月に長崎で開催された日本アフリカ学会で研究報告することでアフリカの環境史的研究の最新動向を紹介した。そこでは、ボツワナの植民地時代を対象にした天然痘に代表される疾病史、出生率および死亡率の増減が大きく関与するエチオピアにおける人口動態と農耕の変遷との対応関係、モザンビーク北部における海洋資源利用の地域生態史などの内実が詳細に報告された。また、それらに対する活発な議論が展開された。さらに、野中は現地調査を継続することで、南アフリカのモパニガの幼虫の採集活動と流通について、国内における流通生産システムとのかかわりのなかで販売状況が明らかにされた。
以上のように、これまで各地のフィールドにおいて自然資源利用の実態とその変遷が明らかになったのであるが、2007年度は最終年度ということで様々な生業に関与する資源利用の変遷が熱帯アフリカにおける土地利用の変容モデルとしてまとめられた。
2006年度活動報告
本研究では、熱帯アフリカを対象にして自然資源の利用に関わる変遷を環境史の視点から明らかにすることを目的とする。狩猟、採集、漁労、牧畜、農耕などの生業活動を対象にして、各々の生業の資源利用のあり方とその変遷、及びそれを引き起こした要因を明らかにすることを目的とする。その主な対象地としては、熱帯アフリカにおける多様な自然環境の縮図であるアンゴラが選ばれた。
しかし、2005年5月時点、アンゴラではマールブルク病が流行していて、首都ルアンダおよび北部のカビンダやコンゴ州において多くの死者が出ていて現地調査が不可能であった。そこで、アンゴラでの現地調査を2007年以降に伸ばすことにした。まず2006年度は、8月にメキシコで開催された国際動物考古学会議に出席・研究報告することでアフリカの環境史的研究の最新動向を把握することができた。次に、熱帯アフリカにおける4地点、つまり(1)ボツワナの狩猟、(2)モザンビークの漁労、(3)南アフリカの昆虫採集とその利用、(4)エチオピアの農耕に対象をしぼって、各々の生業における資源利用のあり方とその変遷を明らかにした。その結果は、以下のとおりである。
(1)ボツワナ中央部の狩猟の歴史的変遷について、岩絵や聞き書き資料を使って復元した。その結果、岩絵に描かれる動物が限定されていること、過去と現在では動物ダンスの形が異なることなどが明らかになった。
(2)モザンビーク北部に位置するカボ・デルガド州の2つの島において、漁獲実態調査をおこなうとともに、隣国タンザニアをも含む広範な交易網に関して聞き取り調査をおこなった。ふたつの異なるアプローチにより、この地域における漁撈活動が純粋な自然環境への適応ではなく、地域間交易によって蓄積された富を運用する機能をもっていたことが示唆された。
(3)南部アフリカで重要視されているモパニガの幼虫(以下モパニワーム)の採集活動と流通について、南アフリカの消費地と生産地において現地調査を行い、流通生産システムと都市市場での販売状況を明らかにした。モパニワームの需要は高く、都市中心地でも盛んに販売されている。これらは南アフリカ産だけでは需要をまかないきれず、ボツワナ、ジンバブエから仲買によって運ばれ、東北部の拠点都市で取引されていることがわかった。
(4)エチオピアの農村における人口史の復元をすることで、人口動態と農耕の変遷との対応関係が明らかにされた。
以上のように、2006年度は、各地のフィールドにおいて自然資源の利用の実態が明らかになったのであるが、様々な生業に関与する資源利用の変遷を十分に解明するまでにはいたっていない。
2005年度活動報告
熱帯アフリカとは、アフリカ大陸を横断する赤道を中心に熱帯気候の広がる地域を示す。また、本研究では、衣食住、生業、社会、信仰などの総体として生活様式を捉え、生活様式の最も基本とされる生業活動に注目する。本研究では、熱帯アフリカを対象にして自然資源の利用に関わる変遷を環境史の視点から明らかにすることを目的とする。具体的には、狩猟、採集、漁労、牧畜、農耕などの生業活動を対象にして、過去100年間における各々の生業の資源利用のあり方とその変遷、及びそれを引き起こした要因を明らかにすることを目的とする。その主な対象地としては、熱帯アフリカにおける多様な自然環境の縮図であるアンゴラが選ばれた。
しかし、2005年5月時点、アンゴラではマールブルク病が流行していて、首都ルアンダおよび北部のカビンダやコンゴ州において多くの死者が出ていて現地調査が不可能であった。そこで、アンゴラでの現地調査を2006年以降に伸ばすことにした。今年度は、まず7月にボツワナで開催されたパンアフリカ考古学会議に出席・研究報告することでアフリカ全体の環境史的研究の最新動向を把握することができた。つぎに、熱帯アフリカにおける3地点、つまりボツワナの狩猟、モザンビークの漁労、エチオピアの農耕に対象をしぼって、過去100年間における各々の生業の資源利用のあり方とその変遷を明らかにした。その主な方法は、かつての航空写真判読による植生の復元、および住民への聞き書き調査である。なかでもボツワナでは、歴史的に行なわれてきた植生への狩猟採集民の火入れが、いかにカラハリ砂漠の植生を改変してきたのか、環境への人為的作用の大きさが明らかになった。