国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

植民地主義と録音産業――日本コロムビア外地録音資料の研究(2005-2006)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 福岡正太

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、国立民族学博物館が所蔵する日本コロムビア製作による外地録音資料(レコード原盤6800枚およびその複製音源約7000曲分)を主な資料として、日本コロムビアが昭和初期にソウル、台北、上海、ハルピン等で録音・発売したレコードのデータをディスコグラフィーとして整備・公開し、それらのデータを韓国や台湾等の研究者と協力して検討しながら、日本の植民地経営下における東アジアの録音産業の発展と音楽の動向の概要を明らかにすることを目的としている。

活動内容

2006年度活動報告

1.ディスコグラフィー作成のためのデータ整備
平成17年度に引き続き、日本コロムビア外地録音資料について、民博保有の情報カード(主に中国語、手書き)、日本コロムビア社内関連資料(新譜決定通知等)、歌詞カード(ソウル・台北録音分)、現地研究者提供データ等により、データ入力(中国語、ハングル、日本語等)を行った。台湾録音についてディスコグラフィーを出版し(印刷は人間文化研究機構連携研究経費による)、朝鮮、上海、満洲録音については、平成19年度にディスコグラフィーを出版するための準備をほぼ終えた。
2.国立民族学博物館所蔵レコード原盤の調査
全6800枚のレコード原盤の内、すべてについて調査を行った。原盤の状況、及び原盤とそのケースに記載された各種情報を記録し、写真撮影を行った。資料には、原盤番号(複数記載の場合もあり)のほか、発売時のレコード番号、各種書き込みがあり、内容の同定や、録音、プレス、再プレス等の経緯等の解明につながる可能性がある。今後、人間文化研究機構連携研究経費等によりデータベース化し公開する準備を進める。
3.国際セミナー「音盤に聴く近代東アジア」の開催等
人間文化研究機構連携研究との共催で、台湾から3名、韓国から2名、中国から2名の研究者を招き、標記国際セミナーを開催した。世界的にラジオやレコード等のマスメディアが普及し、新しい音楽の生産と消費のスタイルが形成された20世紀前半に、どのようにして東アジア各地で大衆音楽が形成されたかについての知見などを交換することができた。また、これまでレコード・コレクションの存在や関連研究の状況があまり知られていなかった中国について、データの整備公開や研究が進みつつある状況が明らかにされた。

2005年度活動報告

1.ディスコグラフィー作成のためのデータ整備
日本コロムビア外地録音資料について、民博保有の情報カード(主に中国語、手書き)、日本コロムビア社内関連資料(新譜決定通知等)、歌詞カード(ソウル・台北録音分)、現地研究者提供データ等により、データ入力(中国語、ハングル、日本語等)を行った。日本コロムビアによる製作が確認できるレコードの内、約8割のデータ入力を終えた。今後、海外研究協力者等の協力により、データのチェックを行い、ディスコグラフィー出版を目指す。
2.国立民族学博物館所蔵レコード原盤の調査
全6800枚のレコード原盤の内、約2000枚について調査を行った。原盤の状況、及び原盤とそのケースに記載された各種情報を記録し、写真撮影を行った。資料には、原盤番号(複数記載の場合もあり)のほか、発売時のレコード番号、各種書き込みがあり、内容の同定や、録音、プレス、再プレス等の経緯等の解明につながる可能性があることがわかった。今後、平成18年度中に全原盤の調査を終え、並行して情報と写真のデータベース化を進めたい。なお、一部の原盤について複製音源を作成することを計画していたが、原盤調査に予想以上の時間がかかったためまだ実現していない。
3.国際セミナー「日本コロムビア外地録音資料の文化史的意義」の開催等
人間文化研究機構連携研究との共催で、台湾から4名、韓国から3名の研究者を招き、標記国際セミナーを開催した。外地録音資料は、世界的にラジオやレコード等のマスメディアが普及し、新しい音楽の生産と消費のスタイルが形成された20世紀前半のまとまった資料であり、日本の植民地支配という特殊状況下で東アジアにどのような音楽文化が形成されたかを明らかにする重要な資料であることが、同セミナーで再確認された。そして、今後、相互に研究情報を交換し、共同でさらに研究を深めることとした。