アラビアンナイトの形成過程とオリエンタリズム的文学空間創出メカニズムの解明(2006-2010)
目的・内容
アラビアンナイトは、オリエンタリズムという時代的文化的枠組に規定されることによって、現代における一般的中東イメージ構築への地下水脈としての役割を果たしてきた。本研究では、これまで等閑視されてきた中世イスラーム社会研究の第一級資料としてのアラビアンナイトが持つ社会文化史的意義に着目し、世界に散在する種々の文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界における同物語集の原型、社会的受容、変遷を究明するとともに、中世イスラーム文化の基部構造を再構築する。具体的には、(1)中東イスラーム世界におけるガラン訳アラビアンナイト出現以前(17世紀以前)のアラビアンナイト形成過程、(2)ガラン訳アラビアンナイト出現以降(18世紀以降)のアラビアンナイト受容による文明間イメージ形成と文学テキスト生成の相互作用を明らかにする。
活動内容
2010年度活動報告
中世イスラム社会研究の第一級資料としてのアラビアンナイトが持つ社会文化史的意義に着目し、世界に散在する文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界における同物語集の原型、社会的受容、変遷を究明するとともに、中世イスラム文化の基部構造を再構築するために、以下の研究を行った。
1.形成過程分析のための基礎データ作成:(1)写本書誌情報データベース作成:写本情報データベースを作成し、マイクロフィルム等による収集とデジタル化を行った。(2)原典コーパスとアラブ民衆文化語彙電子辞書の作成:カルカッタ第2版印刷本全テキストの高度共同利用のための「アラビアンナイトデータベース検索サイト」の制作し公開した。(3)民話モティーフ索引の開発:海外研究協力者シロンバル博士との共同成果であるアラビアンナイト物語モティーフ索引の刊行に向けた作業をした。
2.受容過程分析のための基礎データ作成:(1)欧米・中東・日本における出版書誌情報データベース作成作業を行った。(2)民博所蔵コレクションをもとに挿絵画像を入力した。
3.写本の海外調査としてフランス・インドで調査を行った。
4.受容の調査として香港で調査を行った。フランスではマルドリュスが遺品として残した膨大な資料の目録作成とデジタル保存化の作業を続行した。
5.インディアナ大学近東言語文化学科主催のアラブ文学アクティビティで招待講演をした。
6.国際シンポジウム「アラビアンナイトのテクスト伝承」(12月18~19日)を開催した。
2009年度活動報告
中世イスラム社会研究の第一級資料としてのアラビアンナイトが持つ社会文化史的意義に着目し、世界に散在する文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界における同物語集の原型、社会的受容、変遷を究明するとともに、中世イスラム文化の基部構造を再構築するために、以下の研究を行った。
1.形成過程分析のための基礎データ作成:(1)写本書誌情報データベース作成:スペイン・フランス所蔵写本の情報データベースを作成し、マイクロフィルム等による収集とデジタル化を行った。(2)原典コーパスとアラブ民衆文化語彙電子辞書の作成:「アラビアンナイトWebデータベース試作版」のためにカルカッタ第2版印刷本全テキストのPDFデータを作成した。(3)民話モティーフ索引の開発:海外研究協力者シロンバル博士との共同成果であるアラビアンナイト物語モティーフ索引の刊行に向けた作業を行った。
2.受容過程分析のための基礎データ作成:(1)欧米・中東・日本における出版書誌情報データベース作成作業を行った。(2)民博所蔵コレクションをもとに挿絵画像を入力した。
3.写本の海外調査として、オマーン・フランス・スペイン・エジプトで調査を行った。レユニオンにてインド洋西部地域にてアラビアンナイト類話の調査を行った。
4.受容の調査として、韓国・台湾・ニューカレドニアで調査を行った。フランスではマルドリュスが遺品として残した膨大な資料の目録作成とデジタル保存化の作業を続行した。
5.国際研究集会での招待講演:ニューヨーク大学アブダビ校(アラブ首長国連邦)で開催した国際シンポジウム「The Arabian Nights: Encounters and Translations in Literature and the Arts」に招待され研究講演した。
2008年度活動報告
中世イスラム社会研究の第一級資料としてのアラビアンナイトが持つ社会文化史的意義に着目し、世界に散在する文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界における同物語集の原型、社会的受容、変遷を究明するとともに、中世イスラム文化の基部構造を再構築するために、以下の研究を行った。
1.形成過程分析のための基礎データ作成:(1)写本書誌情報データベース作成:トルコとフランス所蔵写本の情報データベースを作成し、マイクロフィルム等による収集とデジタル化を行った。(2)原典コーパスとアラブ民衆文化語彙電子辞書の作成:「アラビアンナイトWebデータベース試作版」を作成しカルカッタ第2版印刷本の該当箇所PDFデータが閲覧・検索できるようになった。(3)民話モティーフ索引の開発:海外研究協力者シロンバル博士より提供されたアラビアンナイト物語モティーフ索引を改訂・増補した後、データベース化のための英語訳を終了した。
2.受容過程分析のための基礎データ作成:(1)欧米・中東・日本における出版書誌情報データベース作成作業を行った。(2)民博所蔵コレクションをもとに挿絵画像を入力した。
3.写本の海外調査として、エジプトとフランスの関連図書館で調査を行った。コモロ諸島を中心とするインド洋西部地域にてアラビアンナイト類話の調査を行った。
4.受容の調査として、中国と韓国で調査を行った。フランスではマルドリュスが遺品として残した膨大な資料の目録作成とデジタル保存化の作業を開始した。
5.国際ワークショップの開催:コモロ民話専門家のM・アラウイー博士(国立レユニオン高等美術学校)を招へいし、国際ワークショップを開催して、インド洋地域での類話分布について討論した。
6.国際研究集会での招待講演:オックスフォード大学ラウンドテーブルならびにカリフォルニア州立大学でのアメリカ比較文学会年次大会に招待され講演した。
2007年度活動報告
世界に散在する種々の文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界におけるアラビアンナイト物語集の原型、社会的受容、変遷を究明する目的で、(1)中東イスラム世界におけるガラン訳アラビアンナイト出現以前(17世紀以前)のアラビアンナイト形成過程、(2)ガラン訳アラビアンナイト出現以降(18世紀以降)のアラビアンナイト受容による文明間イメージ形成と文学テキスト生成の相互作用を明らかにするために、以下の研究を行った。
1.アラビアンナイト形成過程分析のための基礎データ作成:(1)写本書誌情報データベース作成:英国とフランス所蔵写本の情報データベースを作成し、当該写本のマイクロフィルム等による収集を行い、重要写本についてはデジタル化を行った。(2)原典コーパスとアラブ民衆文化語彙電子辞書の作成:カルカッタ第2版入力テキストの電子辞書ならびに索引作成にむけて、サンプルとしてシンドバッド物語の部分を試験的に処理し、問題点について分析した。(3)民話モティーフ索引の開発:海外研究協力者シロンバル博士のデータを基礎にアラビアンナイト民話モティーフ索引の入力作業を行った
2.アラビアンナイト受容過程分析のための基礎データ作成:(1)欧米・中東・日本における出版書誌情報データベース作成作業を行った。(2)民博所蔵コレクションをもとに挿絵画像データベースを入力した。
3.アラビアンナイト写本の海外調査として、オランダならびにトルコの関連図書館で調査を行った。
4.アラビアンナイト受容の海外調査として、オランダ、フランス、トルコ、中国、ウズベキスタンで調査を行った。
5.アラビアンナイト受容の国内調査として、(1)明治後期から大正期の翻訳状況の調査ならびに、(2)江戸期「駱駝」民俗画の調査を行った。
6.海外研究協力者シロンバル博士を招聘、アラビアンナイト写本研究の現状に関する国際ワークショップを開催した。
2006年度活動報告
世界に散在する種々の文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界におけるアラビアンナイト物語集の原型、社会的受容、変遷を究明する目的で、(1)中東イスラム世界におけるガラン訳アラビアンナイト出現以前(17世紀以前)のアラビアンナイト形成過程、(2)ガラン訳アラビアンナイト出現以降(18世紀以降)のアラビアンナイト受容による文明間イメージ形成と文学テキスト生成の相互作用を明らかにするために、以下の研究を行った。
1.アラビアンナイト形成過程分析のための基礎データ作成:(1)写本書誌情報データベース作成:とくにガラン訳アラビアンナイト出現以前(17世紀以前)の写本情報データベースを作成し、あわせて当該写本のマイクロフィルム等による収集を行い、さらに重要写本についてはデジタル化を行った。(2)原典コーパスとアラブ民衆文化語彙電子辞書の作成:カルカッタ第2版入力テキストの電子辞書ならびに索引作成にむけたフォーマット整理などの作業を行った。テキスト電子化の方法について、ウィーンおよび台湾のコーパス言語処理技術に関するレビューを行った。(3)民話モティーフ索引の開発:アラブ民話モティーフ索引の入力作業を行った。
2.アラビアンナイト受容過程分析のための基礎データ作成:(1)欧米・中東・日本における出版書誌情報データベース作成作業を行った。(2)挿絵画像データベース作成のために、民博所蔵アラビアンナイト・コレクションの整理を行った。
3.アラビアンナイト写本の海外調査として、フランスならびに英国の関連図書館で調査を行った。
4.アラビアンナイト受容の海外調査として、フランス、英国、イタリア、マルタ、チュニジア、エジプト、オマーンで調査を行った。
5.アラビアンナイト受容の国内調査として、(1)明治初期翻訳の状況の調査ならびに、(2)江戸期漢籍資料中のアラブ活字文化情報の調査を行った。