国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

南米ラプラタ地域の地域形成に関する歴史学的研究――フロンティアから脱フロンティア化へ(2008-2010)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|特別研究員奨励費 代表者 武田和久

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の中心的課題は16・17世紀のおよそ200年にわたりスペイン帝国の政治・経済的なフロンティア(辺境)に位置づけられた南米ラプラタ地域(パラグアイ南東部、アルゼンチン北東部、ブラジル南部、ウルグアイ一帯)の歴史学的考察にある。同地域では18世紀にフロンティアという特性が失われ、帝国の植民地体制に抗するかたちでの地元特有の経済、社会、文化、言語状況の勃興(本研究ではこれを「脱フロンティア化」と定義)が見られた。本研究ではこの「脱フロンティア化」の過程を18世紀後半にみられたスペイン王権主導のブルボン改革などの地域外的な要因だけでなく、これらが始まる前の18世紀前半から地域の内部で展開していたイエズス会布教区からのグアラニー先住民たちの離散という地域内的な要因も十分に考慮して明らかにする。

活動内容

2010年度活動報告

平成22年度は、日本学術振興会優秀若手研究者海外派遣事業(特別研究員)の採択を受けて、平成22年3月27日から平成23年3月26日までの1年間、ギジェルモ・ウィルデ研究教授指導の下、アルゼンチン国立サン・マルティン大学社会科学高等研究所の客員研究員として在外研究に取り組んだ年であった。
4月から7月にかけては、国立総文書館における史料調査に集中し、本研究課題の遂行に必要な史料の調査・収集に専念した。
8月から9月上旬にかけては、ブラジルならびにペルーにて史料調査を行った。また8月30日から9月3日にかけてブラジルのマトグロッソ・ド・スル州のドウラード連邦大学で開催された第13回イエズス会布教区国際会議にて、さらに9月7日から8日にかけてペルーのリマの教皇庁立ペルー・カトリック大学で開催されたアメリカ先住民集住政策に関する国際シンポジウムにて、研究成果を発表した。
9月上旬から11月半ばにかけては、再びブエノスアイレスを拠点として、史料の調査と収集に取り組んだ。また10月21日に国立サン・マルティン大学社会科学高等研究所において開催された研究会において、在外研究の成果の一部を公表した。
その後は日本ならびにスペイン(11月14日から12月3日まで)、またチリ(同年12月12日から26日まで)を訪れ、本研究課題に関連する史料の収集ならびに研究者との打ち合わせを行った。
平成23年1月から3月にかけては、ブエノスアイレスにてこれまで収集した諸史料の読解ならびに分析に取り組んだ。なお3月1日から12日にかけては、パラグアイにて史料収集を行った。

2009年度活動報告

本研究の中心的課題は16・17世紀のおよそ200年にわたりスペイン帝国の政治・経済的なフロンティア(辺境)に位置づけられた南米ラプラタ地域(パラグアイ南東部、アルゼンチン北東部、ブラジル南部、ウルグアイ一帯)の歴史学的考察にある。
平成21年度(2009年度)は本研究課題に取り組む2年目の年にあたる。このため同年度においては、昨年度に収集した諸資料の分析に本格的に取り組み、またその暫定的成果を公にすることに努めた。具体的には、4月25日に津田塾大学で開催されたイベリア・ラテンアメリカ文化研究会、また6月7日に東京外国語大学で開催された日本ラテンアメリカ学会第30回大会において、研究成果を試験的に公表した。
7月21日から8月19日にかけてのおよそ一ヶ月間は、南米チリの首都サンティアゴに滞在し、本研究課題の遂行に不可欠な諸資料の収集ならびに研究者との打ち合わせを行った。
チリからの帰国後は、昨年度の研究成果、上記研究発表の際に得られたコメント、またチリでの資料調査の結果を踏まえて、論文「スペイン統治期ラプラタ地域のイエズス会布教区における先住民社会組織-パルシアリダと軍事組織を中心に-」を執筆し、日本ラテンアメリカ学会が発行する学術雑誌『ラテンアメリカ研究年報』に10月上旬に投稿した。同投稿論文は査読審査を経て、平成22年2月末、同雑誌第30号(2010年6月発行)に採録決定された。

2008年度活動報告

本研究の中心的課題は16・17世紀のおよそ200年にわたりスペイン帝国の政治・経済的なフロンティア(辺境)に位置づけられた南米ラプラタ地域(パラグアイ南東部、アルゼンチン北東部、ブラジル南部、ウルグアイ一帯)の歴史学的考察にある。同地域では18世紀にフロンティアという特性が失われ、地元特有の経済、社会、文化、言語状況の勃興(本研究ではこれを脱フロンティア化と定義)が見られた。本研究ではこの「脱フロンティア化」の過程を18世紀前半からラプラタ地域内部で展開していたイエズス会布教区からのグアラニー先住民たちの離散という地域内的な要因を考慮して明らかにする。
平成20年度(2008年度)は本研究課題に取り組む初めての年ということもあり、主に研究課題に関連する諸資料の収集と分析に力を入れた。具体的には、平成20年4月から6月にかけて、受入研究者との綿密な打ち合わせ、またこれまでの予備調査の経験を踏まえて、平成20年7月21日から9月28日にわたり、南米アルゼンチンおよびパラグアイの古文書館、図書館、大学、研究施設などを訪れ、諸資料の収集ならびに研究者との打ち合わせを行った。
平成20年10月から平成21年1月にかけては、前述の南米での調査の過程で入手した文献の読解・分析に取り組んだ。この間に受入研究者と数度にわたり面談を行い、研究の方向性の確認ならびに着眼点の見直しなどを行った。
平成21年2月3日から28日にかけては、イギリスならびにドイツにおいて、本研究課題に関連する文献の収集ならびに研究者との打ち合わせを行った。