国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アレクサンドロス変相――古代から中世イスラームへ(2008)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 山中由里子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本書は、アレクサンドロスが征服した地域の大部分を後に支配したムスリム共同体が、すでにイスラーム以前の文明や宗教が共同体意識の高揚や教義の擁護のための強力な「駒」としてかかえてきたアレクサンドロスを、自らの存在意義の確立のためにいかに利用したか、という点を明らかにすることを目的とする。 西暦7世紀にアラビア半島にイスラームが興り、その信徒たちが軍事的・政治的な勢力を持ち西アジアを制覇してゆく過程で、権力と切っても切り離せない宗教と政治と歴史をめぐる言説において、アレクサンドロスという記念碑的な存在はその本質的な効力を発揮する。イスラーム勃興からモンゴルの侵攻によりアッバース朝が1258年に滅亡するまでの6世紀ほどの間に記されたアラブ・ペルシアの宗教書、教訓書、歴史書などを読み解き、ムスリムの信仰心、政治思想、および歴史意識の中で形成され変化していったアレクサンドロス像に迫る。