国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

実践としてのコミュニティ(2011)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 平井京之介

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本書の目的は、グローバル化のなかで都市や農村に出現した新しいタイプのコミュニティの多様な様態を明らかにするとともに、現代社会におけるその意義を読み解こうとするものである。また本書は、たんに解釈や記述の便宜のために「コミュニティ」という概念を用いるだけでなく、コミュニティに焦点を当てて分析をおこなうことの価値について考えることも意図している。すなわち(1)90年代以降に出現した可変的かつ創発的なコミュニティを対象に、(2)これまでのコミュニティ研究にみられた客観主義的見方(相互行為論など)と、主観主義的見方(想像のコミュニティ論など)とを架橋して、実践論的アプローチを採用し、(3)コミュニティと外部社会(国民国家や資本主義社会)との継続的な相互作用に焦点を当てていること、が本書の内容的な特徴となっている。民族誌に基づいてコミュニティ概念を再構築することは、人類学・社会学における重要な理論的課題であるとともに、隣接諸科学に対する人類学・社会学の貢献を考えていくうえでも重要なことといえる。