タンザニアにおける狩猟採集民の生業複合に関する研究(2012-2014)
目的・内容
本研究の目的は、アフリカの狩猟採集社会を対象に、これまであまり注目されてこなかった狩猟採集民の生業複合に正面から取り組み、今日のアフリカの狩猟採集社会における農耕の多様な展開を明らかにすることである。このことをとおして、狩猟採集社会をめぐる狩猟採集か農耕かといった二元論を突破し、狩猟採集と農耕のあいだにある人びとの生業実践のグラデーションを明らかにする。近年、狩猟採集民は先住民の議論や文化観光に取り込まれることで、実際の生業実践よりも狩猟採集のイメージばかりが注目されがちだが、本研究をとおして、グローバル化するアフリカ経済のもとで、狩猟採集民がローカルに実践する多彩な生業展開のあり方を提示する。そのために、以下の3つの課題を設定する。
課題(1)狩猟採集社会の農耕実践を把握する。
課題(2)土地利用の推移を聞き取りやGIS分析および過去の画像・映像資料を利用して解明する。
課題(3)狩猟採集以外の生業活動をおこなうに至った社会的背景を明らかにする。
調査地としては主にタンザニア中央部のサンダウェ社会と北部のハッツァ社会を予定しており、比較のためにカメルーンのピグミー社会とボツワナのサン社会での調査も計画している。以上を総括し、アフリカ狩猟採集社会における狩猟採集と農耕とのあいだのグラデーションを、その実態と背景を含めて明確に示す。
活動内容
◆ 2014年4月より転出
2013年度活動報告
本研究の目的は、アフリカの狩猟採集社会を対象に、これまであまり注目されてこなかった狩猟採集民の生業複合に正面から取り組み、今日のアフリカの狩猟採集社会における狩猟採集以外の生業の多様な展開を明らかにすることである。このことをとおして、狩猟採集社会をめぐる「狩猟採集か農耕・牧畜か」といった二元論を突破し、両者のあいだにある人びとの生業実践のグラデーションを明らかにすることを目指す。主な研究対象は、タンザニアに暮らすサンダウェとハッツァという2民族である。
平成25年度は、昨年度に明らかになった項目について、より詳細な研究を実施した。サンダウェ社会においては養蜂の社会的な意義と、その他の資源利用との関連について明らかにした。またハッツァ社会においては、昨年に明らかにした観光業の実態を、個人の移動と多民族との関係に注目しながら、補足データを収集した。
また、今年度の成果のひとつとして、現地のNGOと協力をして、これまで互いに交流のなかったサンダウェとハッツァが、互いの社会が現在抱える問題について議論をする場を設けることができた。
以上、これまでの2年間の調査から、これら2民族がおこなう多様な生業が、当該社会においてどのように展開してきたのか、また、それらが現在、彼らにとってどのような位置づけにあるのかという点を多角的に把握することができた。
また、国際学会1件、国内学会1件、および複数の研究会での報告をおこなった。
2012年度活動報告
本研究の目的は、アフリカの狩猟採集社会を対象に、これまであまり注目されてこなかった狩猟採集民の生業複合に正面から取り組み、今日のアフリカの狩猟採集社会における農耕の多様な展開を明らかにすることである。このことをとおして、狩猟採集社会をめぐる「狩猟採集か農耕か」といった二元論を突破し、両者のあいだにある人びとの生業実践のグラデーションを明らかにしたい。主な研究対象はタンザニアに暮らすサンダウェとハッツァという2民族である。
平成24年度は本研究の初年度であり、サンダウェとハッツァの生業に関する一次資料収集を目的として、タンザニアでの3か月半にわたる現地調査をおこなった。ドドマ州チェンバ県において、サンダウェの近年の農耕や狩猟採集に関する動向を把握するとともに、彼らの養蜂に注目してデータを収集した。この現地調査から、養蜂の技術や知識、ハチミツの収量といった基礎情報に加え、養蜂と他生業との関係性や生計における重要性について明らかにした。一方、ハッツァに関する調査はアルーシャ州のマンゴーラ地区でおこない、生計維持の仕組みを主に観光業と食事に注目して明らかにした。同時に、同地域に暮らす農耕や牧畜をおこなう人びとにも、生計に関する聞き取りを実施した。以上の調査から、ハッツァ社会における農耕や農作物の位置付け、近隣民族との関係といった点についても、おおよそ把握することができた。
また、国際学会2件、国内学会1件、および複数の研究会での報告をおこなった。