国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

無文字社会における歴史の生成と記憶の技法(2013)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 大場千景

研究プロジェクト一覧

目的・内容

■ 本書を刊行する目的
(1)第一に学術的な新発見を擁する本書を広く世間に問うこと。
(2)第二に本研究は文字及び無文字社会の歴史構築に関する比較研究の基礎を提示し、今後の歴史人類学の新たな地平を切り開くこと。
■ 本書の内容
本書は、エチオピア南部に居住するボラナと呼ばれる人々の間で語り継がれてきた口承史をもとに、文字をもたず、かつ特定の職業的な語り部に依存しないにもかかわらず、統一性をもって口承史を維持し、集団の歴史として成立させているメカニズムを解明した歴史人類学的論考である。のべ32ヶ月におよぶ現地調査を実施して口承史を収録し、現地語のローマ字転写によるテキスト化と邦訳をおこなうとともに、それらの膨大なテクストを分析しながら、口承史に内在する文化的な過去への認識や概念、ローカルな視点での因果論、出来事に関する語りを記憶し、共有する技法など、無文字社会に生きる人びとの歴史のあり方を明らかにした。