17-19世紀南米ラプラタ地域イエズス会布教区の住民名簿に関する歴史人類学的研究(2013-2015)
目的・内容
16-18世紀のスペイン領南米では、王権主導のキリスト教布教が行われた。この過程で作成された記録の中で興味深いのが先住民名簿である。彼らの氏名、年齢、家族構成といったデータを分析することで、先住民の社会や文化の変容プロセスや、こうした変容の帰結が現代に生きるその子孫に与えている諸影響を解明できる。本研究では、南米ラプラタ地域(現在のパラグアイ南東部、アルゼンチン北東部、ブラジル南部、ウルグアイからなる領域)でイエズス会宣教師が17-18世紀に運営した総数30の布教区と呼ばれる居住地の住民名簿の分析を通じて、先住民社会、文化の変容の過程を、歴史人類学的な観点から分析する。この分析を通じて、およそ3世紀にわたり南米で実践されたキリスト教布教が先住民文化・社会に与えたインパクトを明らかにする。
活動内容
2015年度実施計画
2014年度活動報告
2013年度活動報告
本年度はスペイン、セビリアにおいて在外研究の年に相当した。この機会を利用して、主として、インディアス文書館(セビリア)、スペイン国立図書館(マドリード)、フランス国立図書館(パリ)、イベロアメリカ研究所(ベルリン)において、史料ならびに文献調査を実施した。インディアス文書館には、アルゼンチン、ブエノスアイレスの国立文書館が所蔵するイエズス会グアラニ布教区住民名簿の欠損部分(特に18世紀前半)が収められており、この在外研究期間中に、アルゼンチンの史料の不足分を補うことができた。
また、その他の機関においては、住民名簿の分析を補完する諸文献、具体的には、グアラニ先住民の在来の首長制度についてイエズス会宣教師が17世紀前半に言及した史料や、17世紀後半に軍事役職に就いていたグアラニに言及した、19世紀中葉の刊行史料を入手することができた。