国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館外での出版物

古代文明アンデスと西アジア 神殿と権力の生成

2015年8月25日刊行

関雄二 編

朝日新聞出版
【科研プロジェクト成果】

出版物情報

主題・内容

古代アンデスでは、本格的な農耕や土器づくりよりも先に、まず神殿が築かれた。同じ場所で神殿の建てかえを繰り返す「神殿更新」によって社会がまとまり経済が発達したことが、編者らがかかわる日本調査団の長年の発掘により明らかとなってきた。
一方、西アジア、メソポタミア文明でも、新石器時代に入って間もなくのこと、同様に巨大な祭祀センターがいくつも築かれたことがわかった。紛争が断続的に起こるこの地域の周辺で重ねられた地道な調査の成果である。
これらの神殿のあり方は従来の農耕を出発点とする経済中心の文明史観では解明できない。文明の形成期に権力はどう発生し、社会階層が形成されていったのか、2つの古代文明を比較しながら考える。

目次

序章 アンデスと西アジア―揺れ動く古代文明への眼差し(関雄二)
  1. なぜアンデスと西アジアか
  2. 西アジアの古代文明
  3. アンデスの古代文明
  4. 権力はどうやって生まれたのか
第1章 西アジアにおける神殿の出現―新石器時代の公共建造物をめぐって(三宅裕)
  1. 西アジアの神殿
  2. 早すぎた発見―チャヨニュ遺跡
  3. ダム湖に沈んだ遺跡―ネヴァル・チョリ
  4. 山上の祭祀センター―ギョベックリ・テペ
  5. 新石器時代の社会と「神殿」
第2章 西アジア・メソポタミアの都市文明と神殿(下釜和也)
  1. メソポタミア文明の成立をめぐって
  2. 南メソポタミアにおける都市形成
  3. 北メソポタミアにおける都市形成
  4. 南と北の都市形成
  5. メソポタミアにおける都市形成と権力生成
第3章 古代アンデスにおける神殿の登場と権力の発生(関雄二)
  1. 古代文明と神殿
  2. 神殿の登場
  3. 神殿と社会の関係
  4. 形成期の神殿とその更新
  5. 神殿更新と祖先崇拝
第4章 神殿・儀礼・廃棄―聖なるモノとゴミとの間(松本雄一)
  1. 儀礼と廃棄
  2. 饗宴と建築活動
  3. 廃棄と記憶
  4. 聖なるモノとゴミとの間
第5章 アンデス文明における神殿と社会の複雑化―ワカ・パルティーダ壁画群の分析から(芝田幸一郎)
  1. 海岸から見る神殿と社会の複雑化
  2. ワカ・パルティーダ壁画群の発見
  3. 壁画を読む
  4. 神殿更新
  5. 神殿と社会の複雑化
おわりに(関雄二)