国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館外での出版物

狩猟採集民からみた地球環境史 自然・隣人・文明との共生 ★

2017年3月21日刊行

池谷和信 編

東京大学出版会
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

数百万年という人類史のほとんどで、私たちは狩猟採集民だった。農耕民,国家や宗教、市場経済といった外部の変化のなかで、狩猟採集民はいかに生きてきたのか考察する。

目次

序論 狩猟採集民からみた地球環境史(池谷和信)
Ⅰ 包摂と自律の人間学
 1 狩猟採集民の歴史の捉え方
 2 地球の最初の住人・狩猟採集民
 3 先史時代における農耕民との共生,農耕民への同化
 4 前近代における国家や宗教とのかかわり方――世界システムと自然産物の担い手
 5 現代社会で生きる人々――国民国家,市場経済,先住民運動
 6 おわりに
I 先史狩猟採集民の定住化と自然資源利用
1 東南アジア・オセアニア海域に進出した漁撈採集民と海洋適応(小野林太郎)
 1.1 はじめに
 1.2 人類史からみた狩猟採集民と海域世界への進出
 1.3 東南アジア・オセアニア海域への進出
 1.4 完新世期における農耕民の出現と狩猟採集民
2 気候変動と定住化・農耕化――西アジア・日本列島・中米(那須浩郎)
 2.1 はじめに
 2.2 先史時代の定住化と農耕化の要因
 2.3 西アジア
 2.4 日本列島
 2.5 中米
 2.6 おわりに
3 西アジア先史時代における定住狩猟採集民社会(三宅裕)
 3.1 はじめに
 3.2 広範囲生業革命
 3.3 終末期旧石器時代の生業――広範囲生業の実態
 3.4 定住化
 3.5 新石器時代初頭の生業
 3.6 「複雑な」狩猟採集民社会
4 古代アンデス狩猟採集民の農耕民化――神殿,交易ネットワークの形成(鶴見英成)
 4.1 はじめに
 4.2 狩猟採集民の農耕民化
 4.3 形成期の神殿
 4.4 論考
附論1 ボルネオの狩猟採集民の祖先は「狩猟採集民」か「農耕民」か(小泉都)
 1 従来の仮説――オーストロネシア語族の拡散とボルネオの農耕民の狩猟採集民化
 2 ボルネオの現在の狩猟採集民
 3 新しい知見――東南アジア島嶼部の人口の動きとボルネオでの生業活動
 4 ボルネオの狩猟採集民の由来再考
II 農耕民との共生,農耕民・家畜飼養民への変化
5 狩猟採集と焼畑の生態学(佐藤廉也)
 5.1 狩猟・採集・焼畑のバリエーションと地理的制約
 5.2 狩猟・採集・焼畑の連続性と生業選択
 5.3 狩猟・採集・焼畑と人口パターン――人口は独立変数か?
 5.4 残された問題
6 東南アジア島嶼部における狩猟採集民と農耕民との関係(金沢謙太郎)
 6.1 はじめに
 6.2 農耕民から派生した狩猟採集民?
 6.3 仮説への反論
 6.4 狩猟採集民と農耕民の共生モデル
 6.5 生活戦略の多元化
 6.6 おわりに
7 コンゴ盆地におけるピグミーと隣人の関係史――農耕民との共存の起源と流動性(大石高典)
 7.1 はじめに
 7.2 狩猟採集民‐農耕民関係を捉える理論の展開――隔離モデルから相互依存モデルへ
 7.3 生態人類学と民族誌――野生ヤム問題をめぐる論争
 7.4 石器時代から鉄器時代へ――野生ヤム問題の考古学へのインパクト
 7.5 鉄生産による環境改変と狩猟採集民と農耕民の社会関係
 7.6 ピグミーと隣人の関係の新たな展開――商業民を通じた市場とのつながり
 7.7 おわりに
8 熱帯高地アンデスにおける狩猟民から家畜飼養民への道――アルパカ毛の利用に着目して(稲村哲也)
 8.1 はじめに
 8.2 現代のアンデスの牧畜の特徴
 8.3 先史時代のアンデス高原――考古学的研究から
 8.4 ビクーニャの生態と追い込み猟「チャク」
 8.5 考察
 8.6 おわりに
附論2 南の海の狩猟民と隣人――インドネシア・ラマレラのクジラ猟(関野吉晴)
 1 はじめに
 2 クジラ漁の実際
 3 マッコウクジラの解体と分配
 4 物々交換
 5 これからの課題
附論3 狩猟採集から複合生業へ――タンザニアのサンダウェ社会における農耕と家畜飼養の展開(八塚春名)
 1 生業変容の過程を追う
 2 「狩猟民」サンダウェ
 3 「農耕民」サンダウェ
 4 狩猟採集から複合生業へ――家畜飼養と農耕の普及
 5 「狩猟民」であり「農耕民」である
III 王国・帝国・植民地と狩猟採集民
9 北東アジア経済圏における狩猟採集民と長距離交易(手塚薫)
 9.1 広域的な物流のネットワーク
 9.2 オホーツク文化とアイヌ文化
 9.3 デンネルモデル
 9.4 大陸など外部社会の文物へのアクセス
 9.5 長距離交易で行き交う資源
 9.6 集約・商業的な狩猟採集文化への転換
10 統治される森の民――マレー半島におけるオラン・アスリと隣人との関係史(信田敏宏)
 10.1 はじめに
 10.2 オラン・アスリ
 10.3 王国の時代――マレー人との両義的関係
 10.4 イギリス植民地時代――新たな隣人との出会い
 10.5 開発とイスラーム化の時代――マレーシア独立以降
 10.6 グローバル化の時代――先住民運動の高まり
 10.7 おわりに――オラン・アスリの未来,森の未来
11 南西アフリカ(ナミビア)北中部のサンの定住化・キリスト教化(高田明)
 11.1 「カラハリ論争」を越えて
 11.2 ナミビア北中部のクン
 11.3 ナミビアのフィンランド人宣教師
 11.4 クンとアコエの定住化・集住化
 11.5 キリスト教化するクン
 11.6 おわりに
附論4 植民地時代のピグミー(松浦直毅)
 1 はじめに
 2 植民地時代のピグミーの生活と民族関係
 3 ピグミーの過去から現在
IV 近代化と狩猟採集民
12 狩猟採集民の定住化と人口動態――半島マレーシアのネグリトにおける事例分析(小谷真吾)
 12.1 狩猟採集民の人口動態にかんする研究の現状
 12.2 オラン・アスリと対象集団の概要
 12.3 センサスの方法
 12.4 現住人口
 12.5 出生率
 12.6 死亡率
 12.7 狩猟採集民の人口動態と定住化政策
13 国立公園の普及と中部アフリカの狩猟採集民(服部志帆)
 13.1 はじめに
 13.2 国立公園制度と保全プロジェクトの普及
 13.3 アフリカの熱帯雨林とピグミー系狩猟採集民
 13.4 カメルーンの森林保全プロジェクトと狩猟採集民の生活
 13.5 バカの反応
 13.6 森林保全プロジェクトへの狩猟採集民の参加
14 アマゾンの森林開発のもとでの現代的な民族間関係(大橋麻里子)
 14.1 ペルーアマゾンのシピボとアシャニンカ
 14.2 アマゾンの土地区分――氾濫原と高地,そしてシピボの土地利用
 14.3 シピボの漁と狩猟
 14.4 シピボとアシャニンカの差異と補完関係
 14.5 ペルーアマゾンの森林開発と民族間関係
 14.6 おわりに
15 森のキャンプ・定住村・町をまたぐ狩猟採集民――ボルネオ,シハンの現代的遊動性(加藤裕美)
 15.1 はじめに
 15.2 森のキャンプ,定住村,町にまたがる柔軟な住まい方
 15.3 多箇所居住における隣人との関係の重層性
 15.4 まとめ――グローバル社会とのつながりを住まい方からとらえる
附論5 狩猟採集民・農耕民・文明人における病気と病(山本太郎)
 1 はじめに――原初の医学から狩猟採集民の時代
 2 旧石器時代の人骨が語ること
 3 農耕の開始がすべてを変えた
 4 生態系への際限のない進出と感染症
 5 現代人の健康と病気
 6 まとめ
結論 地球の先住者から学ぶこと(池谷和信)
 1 はじめに
 2 本書の3つの意義
 3 狩猟採集民研究と地球学
あとがき
執筆者紹介