館外での出版物
出版物情報
- 出版社:青土社 出版社ホームページはこちら
- 価格:2,860円(税込)
- ISBN:9784791773510
- 判型:四六判 並装
- 頁数:421頁
- 科研プロジェクト 「モンゴルをとりまくエスノスケープとアイデンティティの重層的動態に関する実証的研究」成果
主題・内容
本書は、ヒップホップと現代モンゴルにおける政治・経済・社会的状況、そしてラッパー個人の経験が複雑に絡み合う緊張関係の中で生み出された世界―ヒップホップ・モンゴリアを描き出したものである。
目次
第一章 創世記――ポスト社会主義という混沌
イントロ/知られざるモンゴルの近現代/社会主義の光と影/国家統制されたポピュラー音楽/「密輸入」されたポピュラー音楽/サブカルチャーとしての「オルツの歌」/歌に隠された意味/崩壊する社会主義/移行期の混沌を生きる/テレビとラジオと闇市場/ディスコ、クラブとDJの誕生
第二章 群像――第一世代ラッパーたちの葛藤
イントロ/露天市場(ザハ)での出会い/先駆者MCIT の生い立ち/ダイン・バ・エンへ始動/プロデユーサーMCIT/初アルバム/抵抗/一時代の終わり/エリート・ラッパー、スキゾ/Luminoの商業的成功/ラブソングと流用/選挙ショーという儲け話/アウトロ
第三章 伝統――口承文芸からヒップホップへ
イントロ/西洋化した民族音楽/「モンゴル化」という文化実践/ペンタトニック大賞/外来文化を飼い慣らす/ポピュラー音楽と民族音楽の融合/ヒップホップと民族音楽/韻踏む文学、口承文芸/韻踏むことわざ/韻踏む呪文/ラップ・バトルとしての掛け合い歌/遊牧民の交渉術としてのバトル/アウトロ
第四章 憑依――ヒップホップからシャーマニズムへ
イントロ/ライムの理論/モンゴル語ラップの教本/MCビーツのラップ理論/ TATAR のライム技法/Quizaのライム技法/シャーマニズムと押韻/精霊の声が聞こえないシャーマン/「精霊とは言葉のことである」/韻と憑依/シャーマニズムからヒップホップへ/アウトロ
五章 憤激――ゲットーに響く声
イントロ/ ICE TOP と社会批判/グローバルとローカルの結節点としてのクラブ/政治批判/ナショナリズムと排外主義/反キリスト教/S&Iと殺人事件/ゲル地区の世界/ギャングスタ、Desant/Geeの生い立ち/ヒップホップとの出会い/TVのバトルで優勝する/モンゴル・ラッパーVS欧米留学組/アメリカ留学組の真実/ゲル地区とGee/Geeの哲学/シャーマンになるヒップホッパーたち/競争社会とプライド/アウトロ
第六章 変成――今を生きる女性ラッパーたち
イントロ/遊牧文化における女性/高い離婚率と家庭内暴力/初の女性ラッパー・ジェニー/MCITとの出会い/ラッパーとして生きる/ MCIT との再会/母の死/ 覆面のフェミニスト、Mrs M/自立する女/理系女子NMN/ウェブ上のラップ・バトル/恋する女/アウトロ
第七章 越境――ヒップホップが生んだ声の共同体
イントロ/分断される「書き言葉」/〝南モンゴル人〞/植民地的状況の中で/内部の敵/国境を超える音楽/内モンゴル・ラップの黎明期/俺たちはワン・ブラッド/ブリヤートのラッパーDze/モンゴルで共鳴するブリヤート・ラップ/アウトロ
エピローグ あとがき 参考文献