国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館研究報告 1985 10巻4号

目 次
ミクロネシアにおける母系制社会の変質
―トラック語圏社会の出自集団の構造―
須藤健一
827
サタワル島における伝統的航海術の研究
―洋上における位置確認方法とエタック(yeták)について―
秋道智彌
931
現代イスラームにおける宗教勢力と政治的対立
―カイロにおけるアズハル=フセイン複合体とサラフィー主義―
小杉 泰
959
ブラーフマナ文献の祭式解釈
―古代インド季節祭Cāturmāsyaを例として―
永ノ尾信吾
1001
チェレミス語とヴォチャーク語における引用小辞
―ウラル諸語におけるチュルク的引用表現―
庄司博史
1069
民具研究の展開
―1960年以後―
中村俊亀智
1103
中東・北東アメリカに見られる憑霊信仰ザールの伝播経路に関する一考察
清水芳見
1123
Rural Reforms and Household Economies in the Dike-Pond Area of the Zhujiang Delta, China
Kenneth Ruddle
1145
彙 報
 
1175
国立民族学博物館研究報告 10巻 総目次
 
1179
国立民族学博物館研究報告寄稿要項
 
1180
国立民族学博物館研究報告執筆要領
 
1181


BULLETIN OF THE NATIONAL MUSEUM OF ETHNOLOGY Vol. 10 No. 4 1985

SUDO, Ken-ichi
Structural Change of Matrilineal Descent Group in Greater Trukese Society, Micronesia
827
AKIMICHI, Tomoya
Navigational Knowledge of the Yeták System and Allocation at Sea on Satawal, Central Caroline Islands
931
KOSUGI, Yasushi
Religious Focus and Political Conflicts in Contemporary Islam: the Azhar-Husayni Complex and the Salafiyyah in Cairo
959
EINOO, Shingo
The Interpretation of Cāturmāsya Sacrifice according to the Ancient Indian Brāhmanฺa Literature
1001
SHOJI, Hiroshi
Quotation Particle in Cheremis and Votyak: Turkic-type Quotation in Uralic Languages
1069
NAKAMURA, Shunkichi
Progress of Studies on Folk Tools: Since 1960
1103
SHIMIZU, Yoshimi
A Study of the Diffusion Routes of the Zār Cult to the Middle Eastern Countries
1123
RUDDLE, Kenneth
Rural Reforms and Household Economies in the Dike-Pond Area of the Zhujiang Delta, China
1145


 

ミクロネシアにおける母系制社会の変質
―トラック語圏社会の出自集団の構造―
須藤 健一*
Structural Change of Matrilineal Descent Group in Greater Trukese Society, Micronesia
Ken-ichi SUDO
 
*国立民族学博物館第1研究部

Ⅰ. 序
1. 問題の所在と目的
2. 母系制社会の親族研究
Ⅱ. サタワル社会の母系クランの構造 ―yáyinang―
1. クランの移住伝承と序列
2. 首長クランと平民クラン
3. クランの構造と首長権の移譲方式
4. クランの機能
Ⅲ. サラワル社会の母系リニージの構造 ―yeew raa―
1. リニージの分節と融合
2. リニージ間の序列
3. リニージの内部構造
Ⅳ. 居住集団の構造 ―pwukosとperhangiyan―
1. 居住集団の構成原理
2. 居住集団成員の住みわけ
3. 土地の配分と生計単位
Ⅴ. トラック,モートロック社会の母系出自集団の構造と土地所有の様式
1. サタワン(モートロック)社会の土地所有集団の構造
2. トラック社会の土地所有集団の構造と土地所有
Ⅵ. 結語

 

サタワル島における伝統的航海術の研究
―洋上における位置確認方法とエタック(yeták)について―
秋道 智彌*
Navigational Knowledge of the Yeták System and Allocation at Sea on Satawal, Central Caroline Islands
Tomoya AKIMICHI
 
*国立民族学博物館第2研究部

Ⅰ. はじめに
Ⅱ. エタックの体系
1. 予備的考察
2. 海の区分名称
3. エタック島と星
Ⅲ. エタック航法の事例研究
1. サタワル島-ウエスト・ファーユ島
2. サタワル島-ラモトレック環礁
3. サタワル島-ピケロット環礁
4. サタワル島-プルワト環礁
5. ラモトレック環礁-ウエスト・ファーユ島
Ⅳ. 考察
1.  yetákの数と島嶼間距離
2. 島嶼間の区分名称
Ⅴ. おわりに


現代イスラームにおける宗教勢力と政治的対立
―カイロにおけるアズハル=フセイン複合体とサラフィー主義―
小杉 泰*
Religious Focus and Political Conflicts in Contemporary Islam
- the Azhar-Husayni Complex and the Salafiyyah in Cairo-
Yasushi KOSUGI
 
*国際大学,国立民族学博物館共同研究員

Ⅰ. 序
Ⅱ. ウラマー集団
Ⅲ. スーフィー教団
Ⅳ. アズハル=フセイン複合体
Ⅴ. 現代サラフィー主義
Ⅵ. 総括と展望

 

ブラーフマナ文献の祭式解釈
―古代インド季節祭Cāturmāsyaを例として―
永ノ尾 信吾*
The Interpretation of Cāturmāsya Sacrifice according to the Ancient Indian Brāhmanฺa Literature
Shingo EINOO
 
*国立民族学博物館第2研究部

序論
1.  Cāturmāsya祭の概要
2.  Cāturmāsya祭の研究史
3.  Cāturmāsya祭の解釈を伝えるBrāhmanฺa文献
本論
1.  Cāturmāsya祭全体に対する解釈
2.  Cāturmāsya祭を構成する各祭式の名称を列挙してのCāturmāsya祭全体の解釈
3. 季節ごとの祭式などに対する個別的解釈
3-1. Vaiśvadeva祭に関して
3-2. 各祭式に共通する五つの献供に関して
3-3. Varunฺapraghāsa祭に関して
3-4. Sākamedha祭に関して
3-5. Mahahāvisに関して
3-6. 祖霊祭に関して
3-7. Tryambaka祭に関して
3-8. Śunāsīrīya祭に関して
3-9. まとめ
4. 各祭式の個々の祭式規定に対する解釈
4-1. Vaiśvadeva祭の個々の祭式規定に関して
A. 分析
B. まとめ
4-2.  Varunฺapraghāsa祭の個々の祭式規定に関して
A. 分析
B. まとめ
4-3.  Sākamedha祭の個々の祭式規定に関して
A. 分析
B. まとめ
B-Ⅰ Sākamedha祭のMahahāvisまでに関して
B-Ⅱ 祖霊歳に関して
B-Ⅲ Tryambaka祭に関して
4-4.  Śunāsīrīya祭の個々の祭式規定に関して
A. 分析
B. まとめ
結論
1. 本論第4節のまとめ
2. HeestermanとThiteの解釈について
3. 結語

 

チェレミス語とヴォチャーク語における引用小辞
―ウラル諸語におけるチュルク的引用表現―
庄司 博史*
Quotation Particle in Cheremis and Votyak:
Turkic-type Quotation in Uralic Languages
Hiroshi SHOJI
 
*国立民族学博物館第3研究部

Ⅰ. はじめに
Ⅱ. 引用の小辞の答辞的動機づけ
Ⅲ. 基本伝達動詞定活用形の引用表現における小辞的用法
Ⅳ. 基本伝達動詞動副詞形の引用表現における小辞的用法
1. 語彙的意味
2. 文法的意味
3. 形態
Ⅴ. 小辞化の過程
Ⅵ. 結論

 

民具研究の展開
―1960年以後―
中村 俊亀智*
Progress of Studies on Folk Tools
-Since 1960-
Shunkichi NAKAMURA
 
*国立民族学博物館第5研究部

Ⅰ.報告の主旨
Ⅱ.研究機会の拡大
Ⅲ.研究者の対応
Ⅳ.若干の帰結

 

中東・北東アフリカに見られる憑霊信仰ザールの 伝播経路に関する一考察
清水 芳見*
A Study of the Diffusion Routes of the Zār Cult to the Middle Eastern Countries
Yoshimi SHIMIZU
 
*東京都立大学,国立民族学博物館共同研究員

Ⅰ. はじめに
Ⅱ. 各地のザール信仰の比較
1. ザールの概念
2. 儀礼
3. 儀礼の参加者
4. 精霊
Ⅲ. ザール信仰の起源に関する諸説
1. アラブ起源説
2. イラン起源説
3. 古代エジプト起源説
4. エチオピア起源説
Ⅳ. ザール信仰の伝播経路
1. ザール信仰と黒人奴隷
2. エチオピアの奴隷貿易
3. ザール信仰の伝播―エジプトの場合―
Ⅴ. おわりに

 

Rural Reforms and Household Economies in the Dike-Pond Area of the Zhujiang Delta, China
Kenneth RUDDLE*
中国,珠江デルタ養魚地帯における農業制度
改革と家庭経済の変化
ケネス・ラドル
 
*5th Research Department, National Museum of Ethnology