国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館研究報告 1994 19巻3号

目 次
フィーとウダ・ラースあるいは骨と肉
―ベダムニ族の社会構造と世界観―
林 勲男
329
現代ネツリック・イヌイット社会における社会関係について
―カナダ国北西準州ペリーベイ村の事例を中心に-
岸上伸啓
スチュアート ヘンリ
405
ペルー・クスコ市におけるクルス・ベラクイの変容
加藤隆浩
449
Retribalization and Language Mixing: Aspects of Identity Strategies among the Broome Aborigines, Western Australia
Komei HOSOKAWA
491
彙 報
 
535
国立民族学博物館研究報告寄稿要項
 
540
国立民族学博物館研究報告執筆要領
 
541


BULLETIN OF THE NATIONAL MUSEUM OF ETHNOLOGY Vol. 19 No. 3 1994

HAYASHI, Isao
Fi: and Uda La:su or Bone and Flesh: Social Structure and Cosmology among the Bedamuni of Papua New Guinea
359
KISHIGAMI, Nobuhiro
STEWART, Henry
Indigenous Social Relations in a Contemporary Canadian Inuit Society: A Case Study from Pelly Bay, Northwest Territories, Canada
405
KATO, Takahiro
The Transformation of Cruz Velacuy in Cusco City, Peru
449
HOSOKAWA, Komei
Retribalization and Language Mixing: Aspects of Identity Strategies among the Broome Aborigines, Western Australia
491


 

フィーとウダ・ラースあるいは骨と肉
―ベダムニ族の社会構造と世界観―
林 勲男*
Fi: and Uda La:su or Bone and Flesh: Social Structure and Cosmology among the Bedamuni of Papua New Guinea
Isao HAYASHI
 
* 国立民族学博物館第4研究部
Key Words:Papua New Guinea, the Bedamuni, body composition, concepts of groups, kinship terminology, cosmology
キーワード:パプアニューギニア,ベダムニ族,身体構成,集団概念,親族関係名称,世界観

Ⅰ.序論
Ⅱ.ベダムニ族
1. 概観
2. 二つの集団概念
Ⅲ.フィーとウダ・ラース
1. フィーの結束
2. 父系クラン(フィー)の基礎
(1) 小人の老女ドゥヌムニ
(2) トーテム
(3) 土地
(4) 聖地
3. 「キョウダイ」クラン(フィー)の機能
4. フィーとウダ・ラースの編成の基礎と変化
(1) 編成の基礎
(2) 編成の歴史的変化
Ⅳ.身体構成理論
1. 個人の形成・成長・死
2. クラン関係とジェンダー
3. 身体構成理論と関係名称
(1) 精液複合社会
(2) 骨と肉
Ⅴ.生活世界の構成
1. 物質界と霊界
2. 肉の供給と消費
3. 性と狩猟
Ⅵ.おわりに

 

現代ネツリック・イヌイット社会における社会関係について
―カナダ国北西準州ペリーベイ村の事例を中心に―
岸上伸啓*, スチュアート ヘンリ**
Indigenous Social Relations in a Contemporary Canadian Inuit Society:
A Case Study from Pelly Bay, Northwest Territories, Canada
Nobuhiro KISHIGAMI, Henry STEWART
 
* 北海道教育大学,国立民族学博物館研究協力者
** 目白学園女子短期大学,国立民族学博物館共同研究員
Key Words:Inuit, social organization, kinship, family and kindred, social change, sharing, cooperation, local politics
キーワード:イヌイット,社会組織,親族関係,家族とキンドレッド,社会変化,シェアリング,共同,地域政治

1. はじめに
2. 調査地の概況とデータの収集
3. 現代のペリーベイ村の生業および経済活動
(1) 賃金労働
(2) 狩猟・漁猟活動
4. 1992年のペリーベイ村の社会関係
(1) 1992年の世帯と家族
(2) 村の親族関係
(3) 親族呼称の体系
(4) 婚姻と居住形態
(5) 擬似親族関係
(6) 自発的パートナー関係
5. 狩猟漁猟活動と社会関係
(1) 春の海氷上でのアザラシ猟
(2) 夏の沖合アザラシ猟
(3) 夏のカリブー猟
(4) 夏のコケモモづみ
(5) 冬のカリブー猟
(6) 冬のオオカミ猟
(7) 冬のホッキョクグマ猟
(8) 冬のジャコウウシ猟
(9) 春のカリブー猟
(10) 分析
6. 食物の分配と相互扶助
(1) 世帯主21-Aの昼食と夕食(1992.8.22~9.23)
(2) 食物の贈与
(3) 仕事の相互扶助
(4) 分析
7. 村内政治と拡大家族関係
(1) 村長の選出
(2) 村議会議員の選出
(3) 委員会や組合の長の選出
(4) 分析
8. 変化と持続
9. 結語

 

ペルー・クスコ市におけるクルス・ベラクイの変容1)
加藤 隆浩*
The Transformation of Cruz Velacuy in Cusco City, PeruPrefecture
Takahiro KATO
 
* 三重大学,国立民族学博物館共同研究員
Key Words:Peru, Quechua, Cross, migration, city, Cruz Velacuy
キーワード:ペルー,ケチュア,十字架,移住,都市,クルス・ベラクイ

1)本稿は,旧稿“Auge y vigor de la fiesta de les cruces”,en EL Qosqo: Antropolog_a de la Ciudad, eds. Hiroyasu Tomoeda y Jorge Flores Ochoa, pp.249-276に新たな資料を加え,考察の範囲を一層広いものとした。その結果,本稿は旧稿では言及されていない,クルス・ベラクイ分析のもつ意味について論ずることが可能になった。なお,本稿は,1990年から1992年の文部省科学研究費国際学術研究「高知アンデス都市の民族学的研究」(研究代表:友枝啓泰教授),並びに国立民族学博物館の共同研究「ラテンアメリカにおけるインディヘニスモの研究」から生まれた成果の一部である。現地調査と共同研究で温かい援助と有益な助言を惜しまれなかった,友枝啓泰教授,藤井龍彦教授(ともに国立民族学博物館),木村秀雄助教授(東京大学),Jorge Flores Ochoa教授,Washington Rosas Alverez教授(ともにクスコ大学),Percy Paz氏に心より感謝したい。また,草稿の段階で,友枝啓泰教授並びに田村克己助教授(国立民族学博物館)より有益なコメントを頂いた。そのコメントすべてを本稿に十分生かし切れなかった部分もあるが,それらの点に関しては今後の課題としたい。まずは、その貴重なコメントに感謝したい。

Ⅰ 問題の所在
Ⅱ クルス・ベラクイの変遷
1. 1990年のクルス・ベラクイ
2. 1980年のクルス・ベラクイ
3. 1968年のクルス・ベラクイ
4. 1925-50年のクルス・ベラクイ
5. 1710年のクルス・ベラクイ
Ⅲ 都市の農村化
Ⅳ 十字架への献身
Ⅴ 結語-十字架の変質

 

Retribalization and Language Mixing: Aspects of Identity Strategies among the Broome Aborigines, Western Australia
Komei HOSOKAWA*
再部族化と言語混交:西オーストラリア州ブルームのアボリジニー諸集団における 帰属意識戦略の諸相
細川 弘明
 
* College of Arts, The University of Saga
Key Words:pidgin/creole continuum, retribalization, language contact, micro politics, Kimberleys(W.A.)
キーワード:ピジン・クレオール連続相,再部族化,言語接触,ミクロ政治学,キンバリー地方