国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

在学生の研究内容

更新日時:2019年4月19日

チャスチャガンCha Si Cha Gan

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専攻

地域文化学専攻

指導教員

主指導教員:新免光比呂/副指導教員:三島禎子

研究題目

新疆モンゴル社会における歴史語りに関する人類学的研究

研究キーワード

歴史記憶、語り、オイラド・モンゴル、新疆モンゴル

研究の概要

【研究テーマ】新疆モンゴル社会における歴史記憶と語り―20世紀前半を中心に―

 

現在の中国新疆ウイグル自治区には、ウイグル、カザフ、ウズベク、キルギス等イスラム教を信仰するチュルク系民族を除いて、シャリワン・ゲゲンを戴く仏教徒であるオイラド・モンゴル諸族が少数派の民族として分布している。彼らは漢族やイスラム教徒と雑居し、新疆という少数民族地域において人口的、文化的、宗教的に少数派であり、またモンゴル全体においても人口的、文化的主流であるハルハ・モンゴルや内モンゴルに対しては周辺となっている。まさに「少数派の中の少数派、周辺の中の周辺」となっている。

20世紀前半において、中国の政権交替、国際情勢や自然災害などが新疆に大きな影響を与えた。そのうえ、チュルク系民族の独立運動が二回にわたって発生し、この時期の新疆社会は不穏かつ複雑であった。

現在の新疆モンゴルという少数派の社会において、20世紀前半の歴史が口頭で語られている。彼らの記憶し語っている20世紀前半の「歴史」は、その時代の歴史像のほんの一部であり、重大な歴史事件の主体ではなく、巻き込まれた少数派の周辺民族としての記憶である。それらは国家のイデオロギーの媒体としての歴史記憶と違うレベルで存在する歴史記憶として、新疆モンゴル人の遊牧生活や宗教信仰などと密接に関連することが多い。

主導的、権威的な国家の歴史がトップダウンしている社会で、人々の歴史記憶が語りだし、ある時期を認識し、解釈する行為と社会との関係は如何なるものであり、歴史が社会においてどのような作用を及ぼしているのか。

本研究の目的は、新疆モンゴルの歴史記憶と語りを、20世紀前半の文書資料や当該社会の状況を参照しながら分析し、歴史が現在の社会にどのような作用を及ぼしているかを明らかにすることである。

研究成果レポート