国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館長室だより

館長室だより
2020年06月24日

新しいトーテムポールの立ち上げにあたってのごあいさつ

 6月24日、みんぱくへお越し頂いたお客様を最初にお迎えする、新しいトーテムポールの立ち上げを実施しました。午前10時より、館長が関係者を前に立ち上げにあたってのご挨拶をし、ひき続き、10時7分からクレーンを使っての立ち上げの作業をおこないました。

以下、当日の館長のごあいさつの一部です。

 

 みんぱくでは、世界のさまざまな地域の文化についての理解を深める活動をおこなっています。世界の人びととの繋がりを示す象徴のひとつとして、みんぱくの屋外にカナダの先住民族クワクワカワクゥのアーティスト、トニー・ハント、リチャード・ハントの手になるトーテムポールを展示しています。このトーテムポールは、42年前のみんぱくの開館時に制作されたもので、以来、みんぱくの顔となってきたものです。

 このようなみんぱくのトーテムポールですが、制作から長い時間がたち、傷みも目立ちはじめています。とりわけ、2018年の台風21号により、羽根がもぎ取られるなど大きな損傷を受けました。ただ、トーテムポールは、修繕などをおこなわず、朽ちるままにおいておくのが現地の習わしです。

 そこでみんぱくでは、創設50周年をまもなく迎えるのを機に、現在のトーテムポールはそのままに、もう一本のトーテムポールを新たに制作することにいたしました。

 

新しいトーテムポールの立ち上げにあたっての館長のごあいさつ
新しいトーテムポールの立ち上げにあたっての館長のごあいさつ

 

 制作にあたり、クラウドファンディングのかたちでみなさまのお力添えを頂き、みなさまとともに、次の時代のみんぱくの象徴を作り上げたいと考え、みんぱくクラウドファンディング「世界とつながる――トーテムポールをカナダ先住民のアーティストと造ろう」を実施させていただきました。その結果、当初の目標300万円を大幅に上回る総額 4,177,000円にも及ぶご寄付を頂きました。このご寄付はトーテムポールの制作の資金の一部に当てさせて頂きました。

 今回トーテムポールの制作を依頼したのは、現在のみんぱくのトーテムポールの制作者トニー・ハント、リチャード・ハントと同じクワクワカワクゥのアーティストで、キャンベル・リバーに住むアーティスト、ビル・ヘンダーソン氏です。トーテムポールの制作は、ビル・ヘンダーソン氏をはじめ、ヘンダーソン一家のメンバー4人の手で、昨年2019年4月から始められ、今年、2020年2月初めに完成しました。

 

完成したトーテムポールとビル・ヘンダーソン氏
完成したトーテムポールとビル・ヘンダーソン氏

 

 完成したポールは、3月上旬にバンクーバーまで陸送し、その後コンテナ船で4月1日に初めに日本に到着。4月10日にみんぱくに運び込まれました。

 

トーテムポールをつりあげる
トーテムポールをつりあげる

 

 上部にヘンダーソン一家の紋章であるワシ、中央部に人の姿かたちをした双頭の大ウミヘビ、下部にサケを抱いたクマを彫り込んだ、直径1メートル20センチ、全高9メートル60センチのトーテムポールです。人びとを見守る「偉大な力(great power)」を象徴するものだといいます。

立ち上げられたトーテムポール
立ち上げられたトーテムポール

 

 もともと、トーテムポールの立ち上げにあたっては、制作者のビル・ヘンダーソン氏をはじめ、クワクワカワクゥの方々6人を招聘し、立ち上げに伴う伝統的な儀式を営む予定でしたが、折からのコロナウイルス感染症の拡大に伴い、カナダからの来日がかなわず、儀式の実施は難しくなりました。

 そこで、トーテムポール自体は、今日、6月24日に立ち上げ、後日、渡航制限が解除された段階で、改めて、クワクワカワクゥの方々を招聘し、祝福の儀式を実施する予定にしております。

 みんぱくの新たなトーテムポールを末永く見守っていただければ幸いです。

 

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2020年06月24日 12:00 | 全般
みんぱくの国際交流の一端を館長室が紹介します
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