研究の意義・目的                    

本研究はこれまで進めてきた人間文化研究総合推進事業「文化資源の高度活用:有形文化資源の共同利用を推進するための資料管理基盤形成」(平成18~20年度)ならびに「保存環境解析法の再検証」(平成21年度)の研究成果を発展的に継承し、より広範囲な資料群を対象とした保存環境研究を行うことを目的としている。

保存環境に関わる情報の解析と評価を効率的に実施することで、多様な形態で構成される研究資源の保存環境モデルを構築し、文化資源の適切な維持管理とその有効活用に寄与する。

 

研究計画の概要・研究方法

人間文化資源の保存環境を効率的に分析するための保存環境分析システム(生物生息調査分析システム、温度・湿度分析システム)を研究開発する。保存環境分析システムの利活用は、資料管理の業務での運用にとどまるものではない。保存環境データを総合的に分析・検証することで、保存科学の視点にたった新たな知見を見出すことにつながる。この分析・検証作業は、保存環境の評価であるとともに、分析システムの効率性・操作性の評価ともなる。一連の分析・検証作業を通じて、さらなる改良を進めた結果、連携機関においては保存環境分析システムが運用可能な状態になっている。

最終的には、研究成果の社会還元をめざしている。すなわち、博物館環境分析システムを、連携機関内だけでなく、必要とする人びとに無償で提供できるよう、システムの汎用化に取り組んでいる。平成26年度が終了した時点で、温度・湿度分析システム、生物生息調査分析システム、それぞれのプロトタイプを研究開発したが、まだ改良と調整が必要である。今後の展望としては、それぞれに最終改良を加え、実際に人びとに提供できる段階まで完成させたいと考えている。