研究内容
研究の進捗状況
平成23年度から2年計画で、温度・湿度分析システムの操作性向上を目的に、その抜本的改良を行った。平成23年度は、任意のポイントのデータのグラフ化(場所別分析)のシステム改良、平成24年度は、任意の期間のデータのグラフ化(時期別分析)のシステム改良を実施した。また、どのような機種の温度・湿度データロガーでも当該分析システムを利用できるよう、データを標準フォーマットに変換するツールを開発した。平成24年11月、新しい温度・湿度分析システムが、国立民族学博物館をはじめ、国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、東京国立博物館の各連携機関で運用可能となった。
平成25年度からは、研究成果の社会還元を目的に、上記分析システムの汎用化に取り組み、パソコン単体で分析ができるよう、分析システム・スモール・パッケージの開発に着手した。平成25年度は温度・湿度分析システムのスモール・パッケージ(プロトタイプ)を開発し、平成26年度に各連携機関ならびに協力機関の研究者に試験的に運用していただいた。完成版に向け、最終的な検証作業に入っている。また、平成26年度に、生物生息調査分析システムのスモール・パッケージ(プロトタイプ)を開発した。
研究計画の意義・目的に即した研究の実施
これら一連の分析システムの開発研究を通じて、各連携機関において、生物生息調査ならびに温度・湿度に関わる情報の解析と評価を効率的に実施できる環境が整った。これらの分析システムは、資料管理業務での運用はもとより、保存科学研究での応用研究にも寄与している。応用分析を通じて得られた新たな知見等は、逐次、関連学会や国際シンポジウム等で公表している。
連携の効果(連携による新たな視座の開拓、高度化)
多様な機関の連携により、さまざまな形態をもつ文化資源が網羅できている。研究会での討論をもとに研究開発している博物館環境分析システムは、ある特定の機関に特化されるのではなく、汎用的に利活用できる柔軟性のある構造になっている。
研究体制
機関間の連携体制
本研究では、多様な媒体からなる研究対象に対応するため、人間文化研究機構からは国立民族学博物館(民族資料)、国文学研究資料館(典籍・文書資料)、国立歴史民俗博物館(考古・歴史・民俗資料)が連携している。研究成果を博物館業務の実践に有機的につなげるため、単に研究者のみならず、各機関において資料管理業務に従事している人びとにも参加を求め、総合的視点で研究を進めている。
「人間文化資源」の総合的研究の枠内においては、映像カテゴリーの内田班と福岡班と連携のもと、共通の課題に取り組んでいる。
機構外研究者の有機的参画
機構外からは、東京国立博物館(文化財)と東京都写真美術館(写真資料)から研究者が参画しており、人間文化資源を構成する多様な媒体に対応できるよう配慮している。
基盤となる機関の研究との合理的相補関係
本研究で研究開発された保存環境分析システムは、基盤機関である国立民族学博物館においては、文化資源プロジェクト(機関)「有形文化資源の保存・管理システム構築」(代表者:園田直子)の枠内で活用、分析、評価している。本研究が研究開発の場とするならば、文化資源プロジェクトは研究開発した成果を実践的に応用、検証、研究する場であり、互いに補完しあう関係にある。
映像を学術研究に供するための方法論について研究することを目的のひとつとする共同研究が歴博でおこなわれている。ビデオベースの映像の保存・活用のモデルケースだけでなく、本研究によって、フィルムベースの映像の保存・活用についてのモデルケースもあわせて学界に提案していくことが可能となる。