国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

近代ヒスパニック世界における国家・共同体・アイデンティティ―スペイン領アメリカの集住政策の研究(2011.4-2014.3)

研究期間:2011.4-2014.3 / 研究領域:包摂と自律の人間学 代表者 齋藤晃

研究プロジェクト一覧

研究の目的

[img] 集住政策とは、広範囲に分散する小規模な集落を、計画的に造られた大きな町に統合する政策であり、16世紀以降、スペイン統治下のアメリカ全土で実施された。その目的は、先住民のキリスト教化を促進し、租税の徴収と賦役労働者の徴発を容易にすることだが、それに加えて、人間は都市的環境でのみその本性を発揮でき、自然のただなかで暮らす「野蛮人」は人間以下の存在でしかない、という考え方が背景にある。およそ3世紀にわたって数百万の人びとを数千の町に強制移住させたこの政策は、スペインによるアメリカ支配の基礎を固めるとともに、在来の居住形態、社会組織、権力関係、アイデンティティを大きく変えたといわれている。

本研究は互いに関連するふたつの目的をもつ。

(1)集住政策の先住民社会への影響の解明
集住政策は、近代スペイン人が人間にふさわしいと考える社会モデルをアメリカの住民に強制する政策であり、地元の実情を考慮しない理念的モデルの画一的適応が、先住民社会に大きな圧力を及ぼした。集中型居住の強制は多様な自然資源の利用を妨げ、地縁的共同体への帰属は親族関係に基づく社会組織の再編を余儀なくし、町の聖堂を舞台とするキリスト教の実践は自然景観と一体化した在来宗教の実践を困難にした。そのため、集住政策の実施は先住民の強い抵抗を招くとともに、さまざまな変化の引き金となった。もっとも、この政策の歴史的意義については、研究者のあいだでいまだ合意ができていない。先住民の多くが町に定住することを拒み、都市や鉱山、農園などに逃亡した事実をもって、集住政策は失敗したと唱える者がいる反面、同政策は地域ごとに多様だった先住民社会を画一化し、今日の共同体構造の基礎を築いたと主張する者もいる。問題は、先行研究の多くが特定の地域や民族に焦点を絞った局所的なものであり、多様な事例を比較し、総合する試みがなされていないことにある。本研究は、南米大陸を対象にして、太平洋岸、アンデス高地、アマゾン低地、ラプラタ、チリなどの主要地域の事例を比較検討することで、集住政策が先住民社会に与えた影響の全貌を解明する。

(2)ヒスパニック世界における国家と共同体の関係の解明
スペインが海外拡張を遂げた時代は、近代国家建設の時代でもある。強大な軍事力、豊富な経済力、発達した官僚制を備えた王権が領域全土に実効支配を及ぼしていくのだが、従来の研究では、王権の伸張にともない都市や町などの自治共同体は弱体化していったといわれていた。しかし、近年の研究では、スペイン王権が実は共同体自治を促進し、集権化ではなく分権化により王権を強化するという、一見して逆説的な政策を実施していたことが指摘されている。アメリカにおける集住政策は、帝国による植民地統制の試みとして論じられることが多いが、先住民のあいだに共同体自治を導入し、彼らの政治参加を促すという側面があった。先住民の町にはカビルドと呼ばれる評議会が設置され、行政司法上の権限が授けられた。この評議会は創設当初、在来の首長の統制下に置かれていたが、植民地時代後期には自律性を獲得し、新たな共同体意識形成の核となったと考えられる。本研究は、集住政策をスペイン帝国版図(ヒスパニック世界)における国家と共同体の関係の一局面ととらえ、スペイン本国や南米以外の植民地の事例も参照しながら、両者の関係について新たな像を構築する。

本研究は「包摂と自律の人間学」のプロジェクトのひとつとして構想されている。すなわち、集住政策を足がかりにして、近代国家による包摂と共同体の自律との関係を究明することを目指している。もともとスペインでは、人間は社会的動物であるというスコラ学的見解に沿って、共同体を人間の本性に即した自然発生的産物とみなす考え方が広まっていた。共同体への帰属は郷土愛、共同体自治は生得的自由のイディオムで語られ、君主が制定する実定法の管轄外にあるとみなされた。アメリカの住民を画一的な町に囲い込む集住政策が国家による統制の一形態であることは明らかだが、先住民が集住させられた町には一定の政治的自由が保証されており、郷土というアイデンティティが育まれる場でもあった。ヒスパニック世界における包摂と自律は、緊張を抱えながら相補的な関係を維持しており、その実態を解明することは、現代社会が抱える同様の問題を新たな角度から照射することにつながるだろう。

 
研究の内容

本研究の内容については「研究の目的」でその概略を説明しているので、ここでは具体的な研究項目を紹介する。

(1)居住形態と人口動態
基礎的な作業として、当該地域でいつ集住政策が実施され、どこにいくつの町が建設され、どの集落の人びとがどの町へ集められ、それぞれの町の人口はどれくらいかを把握する必要がある。集住化を遂行した役人や聖職者が記録をほとんど残していないため、この作業は容易ではないが、納税者名簿、巡察記録、地方官僚の査問記録、教会関係記録などを活用することで、ある程度の再構成が可能である。また、集住化以後の変化も長期的に追跡する必要がある。集住化がなされた直後、町の人口は流出や伝染病により減少するのが常である。町の周辺にアネホと呼ばれる衛星集落が出現し、集住化以前の分散型居住が部分的に復活することもある。アネホは集住化への先住民の抵抗の表現であるとともに、先住民による先住民自身の集住化という側面をもっており、その成立経緯を調べることで貴重な洞察が得られる。最後に、史料から抽出された情報を、今日の町の地理的分布と重ね合わせ、長期的変化の方向性を把握することも重要である。

(2)社会組織と権力関係
集住化により建設された町を取り巻く複数の社会組織の接合や重なり合いを把握し、その変化を追跡する必要がある。まず、町がコレヒミエント(行政単位)やレパルティミエント(徴税単位)、教区組織とどのような関係にあるかを把握しなければならない。次に、町が先住民の社会組織とどう接合しているか、または接合しそこなっているかを解明する必要がある。一般に、集住化当初、在来の社会組織を新体制に適合させるため、さまざまな調整が図られる。しかし、町の重要性が増すにつれて、在来の社会組織を維持することは困難になり、変革が生じる。集住体制下でのこの社会組織の再編は、権力関係の変化をともなっている。在来の首長が集住体制への適応を強いられ、性格を変えていく一方、カビルドという水平的な権力機構が町のただなかで発達する。注目すべきは両者の関係である。南アンデス高地では、植民地時代末期にカビルド役人が中心となって首長を排除する政治革新が起きた。同様の変化が他の地域にもあったかどうか確認する必要がある。

(3)アイデンティティ
近代スペイン人とアメリカの住民は、ともに複数の相互に重複したアイデンティティを使いわけていた。スペイン人の場合、君主への臣従やナシオン(民族)への帰属がそうだが、16世紀の時点で最も基本的なアイデンティティは、やはり都市や町などの自治共同体への帰属だった。「野蛮人」を町に集め、「人間化」するという集住政策の発想自体、社会生活が成り立つ空間としての自治共同体の重要性を物語っている。このローカルなアイデンティティが、植民地時代後期に顕著になるクリオーリョ(アメリカ生まれ)意識とどう関係しているかを究明する必要がある。他方、先住民の場合、在来のエスニシティや親族集団への帰属が集住化以後どう変化し、町を基盤とする新たなアイデンティティがどのように形成されたかが、解明すべき課題である。往々にして、集住体制下、在来のエスニシティは消滅し、町への帰属が先住民の基本的なアイデンティティとなるが、そのプロセスの詳細はいまだ解明されていない。

本研究では、以上の3つの研究項目に沿って事例研究を進め、その成果を突き合わせることで、集住政策の全体像を描き出したい。先行研究の蓄積状況、および3年間という本研究の期間を考慮して、比較の範囲は南米大陸に限定したい。ただし、南米の事例、および集住政策それ自体をより広いコンテクストに位置づけるため、スペイン本国や南米以外の植民地の専門家にも参加してもらい、広い視野のもと研究を進める。

なお、本研究は以下の科研費による研究と密接に関連しており、活動のいくつかは両プロジェクトの合同事業としておこなわれる。

科学研究費補助金基盤研究(B)「旧スペイン領南米における集住政策と先住民社会へのその影響の地域間比較」
代表者:齋藤 晃
期間:2010.4~2013.3

2013年度成果
◇ 今年度の研究実施状況

10月24日、教皇庁立ペルーカトリカ大学(リマ、ペルー)において、同大学大学院アンデス研究プログラムとの共催で、「Nuevos avances en el estudio de las reducciones toledanas」(日本語訳:トレドの集住政策研究の新展開)と題する公開セミナーを開催した。Jeremy Ravi Mumford(Brown University)、Steven A. Wernke(Vanderbilt University)、Marina Zuloaga Rada(Universidad Nacional Mayor de San Marcos)を招聘し、彼らが最近刊行した著書の学術的意義について議論し、集住政策研究の最新の動向を把握した。

10月27日~11月4日まで、教皇庁立ペルーカトリカ大学において、研究成果刊行のための準備会合を開催した。

11月7日~11月9日まで、ヴァンダービルト大学(米国、ナシュビル)において、研究成果公開のための準備会合を開催した。

◇ 研究成果の概要(研究目的の達成)

最終年度である今年度は、スペイン語の論文集の刊行準備に労力と時間の大部分が費やされた。すなわち、研究員各人が論文を執筆し、編者である齋藤晃とClaudia Rosas Lauroがそれをチェックし、書き直しを求めるという作業を複数回おこなった。また、いくつかの論文に関して、翻訳や校閲、図版の作成も実施した。2月現在、論文の大半が完成し、出版社に提出するための最終原稿を整える段階にさしかかっている。出版社は教皇庁立ペルーカトリカ大学出版局を予定している。

10月に教皇庁立ペルーカトリカ大学で開催した公開セミナーでは、16世紀後半にペルー副王フランシスコ・デ・トレドがアンデス全土で実施した集住政策について、通説とは異なる新たな見解が提示された。従来、トレドの集住政策は、アンデスの制度や実践、価値のいっさいをスペインのそれで置き換えることを目的とし、実施においては画一的なモデルが現地の事情を考慮することなく一方的に押しつけられた、と考えられてきた。そしてその結果として、集住政策は先住民の抵抗にあい、失敗に終わったといわれてきた。しかし、本セミナーでは、集住政策が「民族誌的」探求という側面を備えており、在来の制度や実践のいくつかが維持されたこと、実施に際して現地の人びとと交渉がおこなわれ、彼らの利害を考慮した柔軟な対応がはかられたこと、先住民の抵抗はたしかにあったが、それと並行して譲歩や妥協、適応や流用も試みられたことなどが指摘された。

◇ 機関研究に関連した成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

出版

  • Diez, Alejandro
    Comunidades campesinas en la sierra de Piura: ensayo sobre su cultura, organización e historia. En Javier Hernández-Ramirez y Enrique García Vargas (coords.) Compartiendo el patrimonio: paisajes culturales y modelos de gestión en Andalucía y Piura , Sevilla: Universidad de Sevilla, 2013, pp. 241-254.
  • Diez, Alejandro
    La leyenda de la Virgen de la Asunción y la historia local de Pacaipampa (o acerca del pensamiento antropológico y la historicidad de los mitos). En José Sánchez Paredes y Marco Curatola Petrocchi (eds.) Los rostros de la tierra encantada: religión, evangelización y sincretismo en el Nuevo Mundo, Lima: IFEA / Fondo editorial PUCP, 2013, pp. 165-182.
  • Diez, Alejandro
    De la fiesta al festival: identidad, territorio y autenticidad. En Rozas Alvarez, Jesús Washington, Valencia Blanco y Delmia Socorro (eds.) Laicidad: política, Estado y religión. Cusco: FUNSAAC / Convenio CIUF-UNSAAC, 2013, pp. 87-130.
  • Moreno Jeria, Rodrigo
    La cartografía jesuita en el archipiélago de Chiloé en los siglos XVII y XVIII. En Ana Castro Santamaría y Joaquín García Nistal (coords.) La impronta humanítisca (ss. XV –XVIII): saberes, visiones, interpretaciones, Palermo: Officina di Studi Medievali, 2013, pp. 325-334.
  • 齋藤晃
    「集住政策はアメリカをどう変えたのか―機関研究:近代ヒスパニック世界における国家・共同体・アイデンティティ―スペイン領アメリカの集住政策の研究」『民博通信』143: 8-9, 2013.
  • Saito, Akira
    La guerra indígena y la expansión misional: el caso de Moxos, siglos XVII-XVIII. En Claudia Rosas Lauro y Alejandro Málaga Núñez-Zeballos (eds.) Fiestas, religiosidad y cultura en los Andes: siguiendo la ruta de Luis Millones. Lima: Fondo Editorial del Congreso de la República del Perú, en prensa.
  • Vergara Ormeño, Teresa
    Evangelización, hispanización y poder: Agustín Capcha, fiscal mayor del arzobispado de Lima. Nueva Corónica 3: 109-123, 2014.
  • Wilde, Guillermo
    The Political Dimension of Space-Time Categories in the Jesuit Missions of Paraguay (17th and 18th Centuries). In Wietse de Boer, Aliocha Maldavsky, Giuseppe Marcocci and Ilaria Pavan (eds.) Space and Conversion: A Global Approach (c. 1450-c. 1850) , Brill, in press.
  • Wilde, Guillermo
    Global Patterns and Local Adaptations: A Typology of Jesuit Books of the Guarani Missions and Their Circulation in South-America”. In Antoni Ücerler and Xaoxing Wu (eds.) Legacies of the Book: Early Missionary Printing in Asia and the Americas, Brill, in press.
  • Wilde, Guillermo
    The Sounds of Indigenous Ancestors: Music, Corporality and Memory in the Jesuit Missions of Colonial South America, In Patrica Zhall (ed.) The Oxford Handbook of Music Censorship, New York: Oxford University Press, in press.
  • 安村直己
    「スペイン帝国とネイション形成―植民地期メキシコ先住民の経験を中心に」渡辺節夫編『近代国家の形成とエスニシティ―比較史的研究』東京:勁草書房、2014、pp. 267-298.

公開シンポジウム

  • 公開セミナー「Nuevos avances en el estudio de las reducciones toledanas」(日本語訳:トレドの集住政策研究の新展開)、10月24日、教皇庁立ペルーカトリカ大学(リマ、ペルー)、実行委員長:齋藤晃、Claudia Rosas Lauro。
2012年度成果
◇ 今年度の研究実施状況

以下の研究実施状況には、機関研究経費に頼らず外部資金のみで実施した事業も記載されている。

  • 6月30日、国立民族学博物館において、集住化の成否をテーマとした国内研究集会を開催した。
  • 7月15日~20日、ウィーン(オーストリア)のウィーン大学において、第54回国際アメリカニスト会議の一環として、「La política de reducciones y sus impactos sobre la sociedad indígena en los dominios españoles de Sudamérica」(日本語訳:スペイン領南米における集住政策と先住民社会へのその効果)と題する国際シンポジウムを開催した。
  • 8月23日、リマ(ペルー)の教皇庁立ペルーカトリカ大学において、同大学大学院アンデス研究プログラムとの共催で、Roberto Tomichá(Universidad Católica Boliviana)を講師として、「La política de reducciones y sus efectos en la sociedad chiquitana (siglos XVII-XVIII)」(日本語訳:チキタノ社会における集住政策とその効果(17~18世紀))と題する公開セミナーを開催した。
  • 9月6日、リマの教皇庁立ペルーカトリカ大学において、同大学大学院アンデス研究プログラムとの共催で、Steven A. Wernke(Vanderbilt University)を講師として、「Un orden improvisado: el emplazamiento y la construcción de una reducción en el Valle del Colca (Arequipa, Perú)」(日本語訳:即興の秩序―コルカ渓谷(ペルー、アレキパ)のある集住区の位置と建築)と題する公開セミナーを開催した。
  • 12月27日、国立民族学博物館において、集住化と社会空間の変容をテーマとした国内研究集会を開催した。
◇ 研究成果の概要(研究目的の達成)

7月にウィーンで開催した国際シンポジウムは、国際共同研究員を含めたメンバーが一堂に会し、それまでの研究の成果を発表し、直接議論を交わす重要な機会だった。このシンポジウムでは、数日にわたる集中的な討議を通じて、スペイン領南米の集住政策の効果について、通説とは異なる新たなモデルを構築することができた。従来の研究では、集住政策は南米の先住民の社会と文化を全面的に否定し、西欧的な制度や価値を強制するものとみなされてきた。そして、その効果はもっぱら攪乱や破壊などの否定的なものだったと考えられてきた。しかし、本研究では、しばしば先住民が集住政策の客体から主体へと転身し、本来抑圧的な制度を飼い慣らし、支配と被支配の狭間で自分たちの利益を追求したこと。そして、集住政策により先住民に押しつけられた制度や価値が、在来の制度や価値と予想外のかたちで接合し、そこから社会の再編と文化の再生の複雑なプロセスが生じたことを、さまざまな事例の検討を通じて明らかにすることができた。

◇ 機関研究に関連した成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

出版

  • Diez, Alejandro (ed.)
    Tensiones y transformaciones en comunidades campesinas. Lima: Cisepa / Dpto de CCSS, PUCP, 2012.
  • Diez, Alejandro
    Conceptos políticos, procesos sociales y poblaciones indígenas en democracia: estudio binacional Perú-Bolivia. Lima: Movimiento Manuela Ramos / Ciudadanía, 2012.
  • Diez, Alejandro
    Gobierno comunal entre la propiedad y el control territorial: el caso de la comunidad de Catacaos. En Raúl Asencio, Fernando Eguren y Manuel Ruiz (eds.) Perú: el problema agrario en debate – Sepia XIV, Lima: Sepia, 2012, pp. 115-148.
  • Diez, Alejandro
    Nuevos retos y nuevos recursos para las comunidades campesinas. En Alejandro Diez (ed.) Tensiones y transformaciones en comunidades campesinas, Lima: Cisepa / Dpto de CCSS, PUCP, 2012, pp. 14-38.
  • Glave Testino, Luis Miguel y Roberto Choque Canqui
    Mita, caciques y mitayos. Gabriel Fernández Guarache: memoriales en defensa de los indios y debate sobre la mita de Potosí (1646-1663). Sucre: FCBCB / ABNB, 2012.
  • 松森奈津子
    「近代スペイン国家形成と後期サラマンカ学派―ルイス・デ・モリナの権力論を中心に」孝忠延夫・安武真隆・西平等編『多元的世界における「他者」』(上)吹田:関西大学マイノリティ研究センター、2013、pp. 239-260.
  • Moreno Jeria, Rodrigo
    Reformismo borbónico y el extrañamiento de los jesuitas: consecuencias misionales en Chiloé. Boletín de la Academia Chilena de la Historia 121: 37-51, 2012.
  • 齋藤晃
    「国際共同研究の枠組みの構築―機関研究:近代ヒスパニック世界における国家・共同体・アイデンティティ―スペイン領アメリカの集住政策の研究」『民博通信』138: 10-11, 2012.
  • Saito, Akira
    Resettlement Policy and Its Impact on Native Society in Spanish South America. MINPAKU Anthropology Newsletter 35: 14, 2012.
  • Takeda, Kazuhisa
    Cambio y continuidad del liderazgo indígena en el cacicazgo y en la milicia de las misiones jesuíticas: análisis cualitativo de las listas de indios guaraníes, Revista Tellus 23: 59-79, 2012.
  • Wilde, Guillermo
    Indios misionados y misioneros indianizados en las tierras bajas de América del Sur: sobre los límites de la adaptación cultural. En Salvador Bernabeu, Christophe Giudicelli y Gilles Havard (coords.) La indianización: cautivos, renegados, « hombres libres » y misioneros en los confines americanos (siglos XVI a XIX), Sevilla: CSIC / EEHA / EHESS / Editorial Doce Calles, 2012, pp. 291-310.
  • Zuloaga Rada, Marina
    La conquista negociada: guarangas, autoridades locales e imperios en Huaylas, Perú (1532-1610), Lima: IEP / IFEA, 2012.

公開シンポジウム

  • 国際シンポジウム「La política de reducciones y sus impactos sobre la sociedad indígena en los dominios españoles de Sudamérica」(日本語訳:スペイン領南米における集住政策と先住民社会へのその効果)、7月15~20日、ウィーン大学(ウィーン、オーストリア)、実行委員長:齋藤晃、Claudia Rosas Lauro。
2011年度成果
◇ 今年度の研究実施状況

以下の研究実施状況には、機関研究経費に頼らず外部資金のみで実施した事業も記載されている。

  • 6月12日、国立民族学博物館において、シンポジウム「近代ヒスパニック世界における共同体の構築―垂直的紐帯と水平的紐帯」の第1回準備会合を開催した。
  • 7月18日、国立民族学博物館において、シンポジウム「近代ヒスパニック世界における共同体の構築―垂直的紐帯と水平的紐帯」の第2回準備会合を開催した。
  • 7月23日、国立民族学博物館において、集住化とキリスト教化をテーマとした国内研究集会を開催した。
  • 8月16日~17日、ブエノスアイレス(アルゼンチン)のサルタ州会館において、国立サン・マルティン大学社会科学高等研究所との共催で、「Tradiciones indígenas y culturas misionales en las fronteras de la Sudamérica colonial」(日本語訳:植民地期南米辺境における在来の伝統とミッション文化―比較の展望へ向けて)と題する国際シンポジウムを開催した。
  • 8月25日、リマ(ペルー)の教皇庁立ペルーカ トリカ大学において、同大学大学院アンデス研究プログラムとの共催で、Jeremy Ravi Mumford(Brown University)を講師として、「Las reducciones toledanas y la idea de la tiranía」(日本語訳:トレドの集住化と専政の概念)と題するセミナーを開催した。
  • 9月8日、リマの教皇庁立ペルーカトリカ大学において、同大学大学院アンデス研究プログラムとの共催で、齋藤晃を講師として、「Diversidad étnica y su reducción en las misiones jesuíticas de Moxos, siglos XVII y XVIII」(日本語訳:17・18世紀のモホス地方のイエズス会ミッションにおける民族的多様性とその統合)と題するセミナーを開催した。
  • 9月11日、リマの教皇庁立ペルーカ トリカ大学において、同大学大学院アンデス研究プログラムとの共催で、アンデスにおける集住化の効果をテーマとした国際研究集会を開催した。
  • 10月29日、国立民族学博物館において、「近代ヒスパニック世界における共同体の構築―垂直的紐帯と水平的紐帯」と題するシンポジウムを開催した。
  • 12月25日、国立民族学博物館において、集住化に関する史料をテーマとした国内研究集会を開催した。
◇ 研究成果の概要(研究目的の達成)

本年度は機関研究の1年目に相当するが、同研究と密接に関係している科学研究費補助金による研究「旧スペイン領南米における集住政策と先住民社会へのその影響の地域間比較」は昨年度より始まっており、プロジェクトメンバーによる問題意識の共有やプロジェクトの方向性の確定は終わっている。それゆえ、本年度の活動の焦点は、スペイン領南米各地域の特殊性を踏まえた知識の集積と分析の深化にあった。集住政策は南米植民地の中核地域であるアンデスと、アマゾンやラプラタ、チリなどの辺境地域ではやや異なる展開をみせているため、本年度はアンデス地域の専門家と辺境地域の専門家で別々に研究集会を開催した。その結果、各地域に特有の事情をより深く掘り下げることができた。
本年度はまた、集住政策の歴史的意義を同時代のスペインとその植民地における国家観、共同体観に照らしてよりよく理解するため、スペインと中米の専門家を招集し、シンポジウムを開催した。その結果、近代国家による包摂と共同体の自律との緊張関係が集住政策の本質を理解するうえでのかなめであるという認識にいたった。

◇ 機関研究に関連した成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

出版

公開シンポジウム

  • 国際シンポジウム「Tradiciones indígenas y culturas misionales en las fronteras de la Sudamérica colonial」(日本語訳:植民地期南米辺境における在来の伝統とミッション文化―比較の展望へ向けて)、8月16~17日、サルタ州会館(ブエノスアイレス、アルゼンチン)、国立サン・マルティン大学社会科学高等研究所との共催、実行委員長:Guillermo Wilde、齋藤晃。
  • シンポジウム「近代ヒスパニック世界における共同体の構築―垂直的紐帯と水平的紐帯」、10月29日、国立民族学博物館、実行委員長:齋藤晃。