国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

国立民族学博物館調査報告(Senri Ethnological Reports)

No.69 グローバル化と韓国社会――その内と外

2007年3月30日刊行

朝倉敏夫・岡田浩樹 編

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刊行の目的および意義

激動する朝鮮半島をめぐる政治・経済情勢の中で、90年代に入り、韓国社会はドラスティックに変化しており、文化的にもグローバル化が急速度に展開している。本書は、こうした状況の中で、アジアの他地域の状況も参考にしつつ、韓国社会が経験するさまざまな局面における変化を追求するため、平成15年度から17年度に本館で行った共同研究「韓国社会――グローバル化の諸局面」の成果をまとめたものである。
本書のタイトルを『韓国社会とグローバル化――その内と外』としたのは、掲載された原稿が一つは韓国社会の「内」で進んでいる問題、二つは韓国社会の「外」、海外コリアンに関する問題をあつかっているからである。韓国社会が「内」から「外」まで、いかにダイナミックに動いているのかを、読者は本書の目次からでも一瞥できるのではないだろうか。ただ、各稿において論じられているように「内」と「外」はさまざまに絡み合っており、「内」と「外」の現象が二分法的に分けられるものではない。韓国社会は世界の動きとつながっており、海外コリアンの社会も韓国社会の動きとつながっていることはいうまでもない。
また、一般にグローバル化という問題を想定した場合、本書で扱われている対象は19世紀末から現在までを含んでおり、やや奇異な感を抱く読者もいるであろう。朝鮮半島は19世紀末に近代化にさらされた日本を経由して「グローバル化」したといえる。この「グローバル化」をふまえて韓国社会で現在進行中のグローバル化と比較検討することにより、韓国社会の事例は世界の諸社会で起きているグローバル化を考察するうえで注目すべきものとなるにちがいない。

 

目次

はじめに
 ……………… 朝倉敏夫・岡田浩樹
グローバル化とローカルな日常経験――韓国地方社会からの展望
 ……………… 本田洋
調査地に見る韓国社会の変容
 ……………… 嶋陸奥彦
韓国社会における死をめぐる民俗文化の変容――火葬の増加と葬儀場
 ……………… 秀村研二
韓国における仏教と死者儀礼の近年の動き
 ……………… 川上新二
韓国社会における海外養子のイメージ――Uターンしてきた海外養子の素描
 ……………… 洪賢秀
山陰から見た帝国日本と植民地――板祐生コレクションにみる人の移動と情報ネットワークの分析を中心に
 ……………… 鈴木文子
寄せ場と朝鮮半島系住民――福岡・築港の事例を中心に
 ……………… 島村恭則
「多文化共生」とエスニックマイノリティの選択――震災後のアジアタウン構想と長田マダンの事例を通して
 ……………… 岡田浩樹
名古屋市における新来コリアンの流入とコリアンタウンの形成
 ……………… 浮葉正親
北朝鮮人の人口流出と中国朝鮮族の未来――脱北者問題を中心として
 ……………… 韓景旭
沿海州コリアンコミュニティーの現状にみるもの
 ……………… 李愛俐娥
グローバル化時代における朝鮮系移民の統合――「韓人」のすりかえと浸透
 ……………… 林 史樹
「韓人録」の世界
 ……………… 朝倉敏夫
移住の表象――コリアン・ディアスポラのアート
 ……………… 金惠信
あとがき
 ……………… 朝倉敏夫
 

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