国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2004年10月28日(木) ~10月30日(土)
《機関研究成果公開》国際シンポジウム「現代世界における人類学的知識の社会的活用」

  • 日時:2004年10月28日(木)~10月30日(土)
  • 場所:第4セミナー室、講堂(30日)
  • 主催:国立民族学博物館
  • 共催:渋沢民族学振興基金
  • 大阪大学21世紀COEプログラム「インターフェイスの人文学」
  • 後援:日本文化人類学会
 

趣旨

人類学はこれまで「異文化理解」において大きく貢献してきたが、その 理解はどのように社会に還元されるのか。今日、時代の流動の中で学問と社会との関係が問われている中で、アメリカの人類学者マーガレット・ミードの遺産を検証しつ つ、現代世界における人類学的知識の社会的活用について検討するのが本シンポジウムの目的である。具体的には、子どもとメディア、ジェンダー、民族誌映画の活用、 文化政策、開発といったテーマについて5つの分科会を行い、これらの分野で人類学の知見をどのように「公共領域」に開いていくのかを討議する。さらに、その結果を公開シンポジウム「現代世界の文化人類学:社会との連携を求めて」で集約し、聴衆 とともに考える。

日程・プログラム

(1)国際シンポジウム
  • 会期:10月28(木)、29日(金)
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 使用言語:英語、日本語
10月28日(木)
13:00~13:20 オープニングアドレス:山下晋司(東京大学大学院 教授)
13:20~14:00 基調講演:William Beeman(ブラウン大学 教授)
 "Learning to Live in One World: Margaret Mead's Unfinished Work and its Wisdom for the International Community"
14:15~16:00 分科会1「子どもとメディア」
 座長:箕浦康子(お茶の水女子大学 客員教授)
 パネリスト:趙韓恵淨(延世大学校 教授)
       白石さや(東京大学大学院 教授)
       松田美佐(中央大学 助教授)
16:15~18:00 分科会2「民族誌映画の活用」
 座長:大森康宏(国立民族学博物館 教授)
 パネリスト:Wilton S. Dillon(スミソニアン協会 名誉教授)
       永渕康之(名古屋工業大学大学院 助教授)
       宮坂敬造(慶應義塾大学 教授)
10月29日(金)
10:00~11:45 分科会3「男性と女性」
 座長:山本真鳥(法政大学 教授)
 パネリスト:Glenda S. Roberts(早稲田大学大学院 教授)
       窪田幸子(広島大学 助教授)
       菅原和孝(京都大学大学院 教授)
12:45~14:30 分科会4「文化と政策」
 座長:桑山敬己(北海道大学大学院 教授)
 パネリスト:韓敬九(韓国国民大学校 教授)
       菊地暁(京都大学 助手)
       住原則也(天理大学 教授)
14:15~16:00 分科会5「開発と文化」
 座長:小泉潤二(大阪大学大学院 教授)
 パネリスト:Kay Warren(ブラウン大学 教授)
       池田光穂(熊本大学 教授)
       鈴木紀(千葉大学 助教授)
16:45~18:00 総括セッション
 座長:田村克己(国立民族学博物館 教授)
 総括:波平恵美子(お茶の水女子大学 教授)
(2)公開シンポジウム「現代世界の文化人類学:社会との連携を求めて」
  • 会期:10月30日(土)
  • 場所:国立民族学博物館 講堂
       入場無料
  • 司会:田村克己(国立民族学博物館 教授)
13:30~13:40 館長挨拶
13:20~14:00 基調講演:Catherine Bateson(文化関係研究所 所長)
 "An Anthropology for the Future"(同時通訳)
14:30~16:30 パネルディスカッション
 パネリスト:山下晋司(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
       箕浦康子(お茶の水女子大学 開発途上国女子教育協力センター 客員教授)
       大森康宏(国立民族学博物館民族文化研究部 教授)
       山本真鳥(法政大学経済学部 教授)
       桑山敬己(北海道大学大学院文学研究科 教授)
       小泉潤二(大阪大学大学院 人間科学研究科長・人間科学部長 教授)
       波平恵美子(お茶の水女子大学文教育学部 教授)
(3)関連事業 マーガレット・ミードに関する上映会 ─ ジャン・ルーシュが描くミード像 ─
  • 会場:国立民族学博物館 第7セミナー室
  • 期日:10月23日(土)~11月3日(水・祝)(但し10月27日は休館日)
       11:00~16:00(下記作品を繰り返し上映いたします)
       入場無料
"Margaret Mead; a Portrait by a Friend"
シネマヴェリテの創始者、フランスのジャン・ルーシュが1977年ニューヨークにある自然史博物館で開催されたマーガレット・ミードの映画祭に参加した時に、彼女のポートレートインタビューをした作品。制作者として映像人類学者のジャン・マーシャルが録音を担当している。 撮影・制作:ジャン・ルーシュ(Jean Rouch) 上映時間28分
"Bathing babies in three cultures"
インドネシアのバリ島、ニューギニアそして米国の赤ん坊をどのようにお風呂にいれるか、母親と赤ん坊の関係と3つの異なる文化的問題を提示している映像作品。 制作:マーガレット・ミード (Margaret Mead) 上映時間9分
"Childhood Rivalry in Bali and New Guinea"
インドネシアのバリ島とニューギニアの子ども達が母親と接する際の相互に生じるライバル(対抗)意識やしっと、独占欲、その解決法としての行動の描写映像。 制作:マーガレット・ミード (Margaret Mead) 上映時間17分
 

実施状況

本シンポジウムのうち国際シンポジウムは、外国からの招聘研究者6人を含む28名が参加して、10月28日・29日の2日間行われ(於:第4セミナー室)、子どもとメディア、民族誌映画の活用、男性と女性、文化と政策、開発と文化の各テーマについて、セッション毎にそれぞれ3つの発表と討論がもたれ、最後に統括討論を行った。この間、上記参加者以外、館内15名、館外26名、計41名のオブザーバー参加があった。

引き続き30日に講堂で開催された公開シンポジウムでは、基調講演の後、上記国際シンポジウムの議論を受けてのパネルディスカッションが行われ、おおよそ100余名の聴衆が参加した。

なお、関連事業として「マーガレット・ミードに関する映画会」が10月23日から11月3日の期間第7セミナー室で開催された。

 

成果概要

国際シンポジウムの「子どもとメディア」の分科会では、現代の3つの社会において、メディアが子どものアイデンティティとどう関わるかについて議論された。「民族誌映画の活用」の分科会においては、思いを伝える情報としての影像の価値が述べられ、「男性と女性」の分科会では、性差を最大限に生かす社会と最少化する社会の違いが議論された。「文化と政策」の分科会及び「開発と文化」分科会では、それぞれの文化政策および社会発展や開発について、文化人類学者が関わる可能性とその問題点が討議された。以上の議論をふまえて、時代のありようと学問との関わりの認識の重要性が語られ、かつてマーガレット・ミードが「人類に将来があるとすると文化人類学の重要性がます」といった意味をあらためて共通の認識とした。公開シンポジウムでは、以上のような議論を広く一般市民に向けて投げかけた。

 

シンポジウムの様

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