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2006年3月11日(土)
《機関研究成果公開》研究フォーラム「ジェノサイド後の社会の再編成―平和のためのコミュニティー・ミュージアム―」 -
- 日時:平成18年3月11日(土) 13:30~18:00
- 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室(本館正面より入り、階段を上って2階)
- 定員:先着80名 申し込み不要・参加無料
- 主催:国立民族学博物館
- 共催:日本学術振興会「人文・社会科学振興プロジェクト研究事業」領域Ⅱ-1「平和構築」 「ジェノサイド研究の展開」
- 協賛:科学研究費補助金(基盤A)「紛争と開発:平和構築のための国際開発協力の研究」(平和構築研究会)
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お問い合せ:国立民族学博物館 関研究室
〒565-8511 吹田市千里万博公園10-1 TEL:06-6878-8252 e-mail
趣旨
人類は、第二次大戦中のホロコーストの恐怖を経験し教訓としたにもかかわらず、今なお世界各地での大量虐殺と向き合わざるをえない状況におかれています。これらの歴史的評価や予防策の立案はもちろん重要ではありますが、ジェノサイドのトラウマから回復し、社会・経済発展を遂げていこうとする社会を支援する必要もあります。
本フォーラムでは、日本において先端的な研究を進める「ジェノサイド研究の展開」(日本学術振興会「人文・社会科学振興プロジェクト研究事業」領域Ⅱ-1「平和構築」「ジェノサイド研究の展開」、代表 石田勇治・東京大学大学院総合文化研究科・教授)との共催で、ジェノサイド経験国であるグアテマラをとりあげ、そこで実践されている開発プログラムを通して、ジェノサイド後の社会の再編成を考えます。
今回来日されるフェルナンド・モスコソ氏は、グアテマラで活躍する法人類学のリーダーの一人で、近年は虐殺の記憶をとどめるための博物館を虐殺現場の村落に建設するNGO活動に従事されています。こうした実践者との対話は、ジェノサイドのトラウマ治癒と開発援助のあり方を問う絶好の機会となると考えられます。
参考記事:朝日新聞朝刊 2006年4月1日(土) pdf:764KB
参考記事:朝日新聞朝刊「ひと:フェルナンド・モスコソさん」 2006年4月17日(月) pdf:254KB
参考記事:MINPAKU Anthropology Newsletter No.22 pp.12-13 June 2006プログラム
※使用言語:モスコソ氏の発表はスペイン語(日本語への逐語通訳あり)、その他は日本語です。
13:30~13:45 挨拶と趣旨説明
関雄二<第1セッション> 司会:関雄二 13:45~14:15 狐崎知己 「国家補償と地域社会」 14:15~15:30 フェルナンド・モスコソ 「平和のためのコミュニティー・ミュージアム」 15:30~16:00 休憩 <第2セッション> 司会:中村雄祐 16:00~18:00 総合討論 【報告者】
狐崎知己(専修大学経済学部)
フェルナンド・モスコソ(NGO組織 Historial para la Paz)【討論参加者(予定)】
飯島みどり(立教大学法学部)
石田勇治(東京大学大学院総合文化研究科)
狐崎知己(専修大学経済学部)
佐藤安信(東京大学大学院総合文化研究科)
渋下賢(東京農工大留学生センター)
関 雄二(国立民族学博物館研究戦略センター)
中村雄祐(東京大学大学院人文社会系研究科)
久松佳彰(東洋大学国際地域学部)
平井京之介(国立民族学博物館民族文化研究部)成果報告
フォーラムの第1セッションにおいて、まず狐崎氏が、1996年の「和平協定」以降、国際機関や先進国からの援助、あるいは反対に圧力によって、グアテマラ政府が履行してきた、あるいは履行しようとしている虐殺被害者、内戦被害者に対する補償の状況を概観し、協定後10年を経ても遅々として進まぬ事態を確認した。その上で、日本人研究者が関与しうる開発プロジェクトのモデルを提示した。またフォーラムの主要な話題は、今回来日したフェルナンド・モスコソ氏(NGO組織Historial para la Paz代表)によって提示された。モスコソ氏は、EUの資金協力を得て実施した、グアテマラ北東部アルタ・ベラパス県パンソス村における虐殺記念館の建設プロジェクトについて発表した。そこでは、虐殺の経緯、和平協定に記された歴史の回復と和解プロセスの必要性に触れた後、記念館プロジェクトに、パンソス村住民が積極的に参加するプロセスについて説明を行った。 活発な討議が展開されたが、その主眼は、観光目的でない、こうした施設の維持や管理を行うための経済的支援の必要性の指摘に始まり、虐殺自体が、同じ共同体で暮らす人々が組織した自警団の手が下されるケースが多いグアテマラで、こうした記念館の建設自体が、共同体内部に亀裂をもたらす可能性があるかどうかという点、あるいは被害者と加害者の区別が困難な状況を含む虐殺、あるいはジェノサイドの構造と、被害者を特定する記念館の性格との間に齟齬が生じていないかなどの疑問が提示された。また、虐殺被害者の秘密墓地発掘については、死因を鑑定し、遺族に遺体を返還し、さらには裁判の証拠として利用する、いわば個人の尊厳や歴史を回復する活動が基盤にあるのだが、こうした個人の被害証言を展示などで前面に出すことは、国家(軍)が関与した集団的、組織的な虐殺の実態を伝えようとすることとは矛盾しないかについても討議された。