国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2007年2月25日(日)
《機関研究成果公開》国際シンポジウム「モンゴル国における社会主義的近代化―シムコフ資料の再評価から」

  • 日時:2007年2月25日(日) 10:00~16:30
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 使用言語:ロシア語・モンゴル語・英語・日本語(ロシア語・モンゴル語について日本語同時通訳あります)
 

趣旨

A.D.シムコフ(1902~1942?)は考古学者コズロフの調査団に同行して初めてモンゴルを訪れて以来、モンゴル研究に従事したロシア人地理学者です。彼は1926年からモンゴルに滞在し、典籍委員会(モンゴル科学アカデミーの前身)の地理学部門の責任者として国境の画定や地方中心地の策定、地図の作成や観測所の設置などに深くかかわりました。こうした活動は行政の一環であると同時に学術活動でもあり、今日のモンゴル科学アカデミーの基盤となっています。すなわち、彼はモンゴル国にとって、社会主義的近代化の過程に積極的に関与した外国人研究者です。国立民族学博物館では彼の業績を全3巻4冊にまとめて刊行しつつあります。社会主義化以前の実態に関する調査報告として貴重な第一級の資料が著作集として出版されるのを機に、これらの業績が社会主義的近代化の研究にいかに役立つか、言い換えればどのように利用しうるかについて議論するシンポジウムを行ないました。

プログラム

2日間のプロセスは原則として全て公開です。簡単な受付をすませたら、ご自由にご見学下さい。

9:30~10:00 受付
10:00~10:05 開会挨拶:松園萬亀雄(国立民族学博物館・館長)
10:05~10:10 趣旨説明:小長谷有紀(国立民族学博物館・教授)
10:10~10:20 祝辞:チャドラー(モンゴル科学アカデミー・総裁)より・オユン(モンゴル国会議員)代読
10:20~10:50 発表1「シムコフの生涯」:ナタリヤ・シムコバ(シムコフの娘)
10:50~11:10 発表2「シムコフ著作集の概要」:バヤラー(モンゴル・ゾリグ基金)
11:10~11:40 発表3「モンゴルの遊牧と農耕の研究におけるシムコフの貢献」:グライボロンスキー(ロシア科学アカデミー東洋学研究所・所長)
11:40~12:10 発表4「シムコフの研究生活と社会・経済的状況」:ウド・バークマン(モンゴル国立大学・客員教授)
12:10~13:30 昼食休憩
13:30~14:00 発表5「ノインウラ―シムコフにとっての学術調査の学校」:バイル・ダシバロフ(ロシア科学アカデミーモンゴル仏教チベット学研究所・教授)
14:00~14:30 発表6「モンゴル民族学者としてのシムコフ」:ルハグバスレン(モンゴル科学技術大学・講師)
14:30~14:50 発表7「シムコフと気象」:バトジャルガル(国連世界気象機構・ニューヨーク事務所長)
14:50~15:00 休憩
15:00~16:00 討論
 コメンテーター1:モリス・ロッサビ(コロンビア大学・教授)
 コメンテーター2:田中克彦(一橋大学・名誉教授)
16:00~16:10 総括および閉会挨拶:小長谷有紀
16:30~18:00 レセプション(自費参加)

成果報告

A.D.シムコフ(1902~1942?)は考古学者コズロフの調査団に同行して初めてモンゴルを訪れて以来、モンゴル研究に従事したロシア人地理学者であり、モンゴル典籍委員会(モンゴル科学アカデミーの前身)の著名な言語学・民俗学者ジャムツァラノ氏の要請により、1927年1月1日から地理学部門の責任者としてとどまることとなった。より詳細な生涯については娘のナタリヤ氏によって報告された。またプログラムに示されているように、彼の業績は地理学のみならず、植物学、民族学、考古学、気象学など多様な側面に及んでいることが報告された。こうした学術調査記録の希少価値は、当時の他の研究者と比較すると、その精緻さにおいて圧倒的にすぐれていること、にもかかわらずほとんど知られてこなかったことなどが確認された。

社会主義的近代化の過程において、モンゴルでは多くのロシア人研究者が多様な部門で派遣されたが、そのもっとも初期の研究者のひとりである彼は、鉱産資源の開発と利用にもかかわり、彼の業績がモンゴルの産業化と直結していたことなども明らかとなった。官学一体の具体的な近代化過程は今後、資料の読み込みによって可能になると思われる。

本シンポジウムを機に、継続的に資料作成と資料読解とを進展させるため、次回のシンポジウムとして、4月29日(生誕105年)にモンゴル科学アカデミーとの共催でウランバートルにて実施される予定である。

モンゴル国における社会主義的近代化-シムコフ資料の再評価から-

●関連する刊行物 
・「人間文化研究機構国際シンポジウム モンゴル国における社会主義的近代化-シムコフ資料の再評価から-」(2007.7.10)  ※御関心のある方はご連絡下さい

 
オユン ナタリヤ・シムコバ
グライボロンスキー ウド・バークマン
バイル・ダシバロフ ルハグバスレン
モリス・ロッサビ 田中克彦
小長谷有紀 シンポの様子
集合写真