国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2009年6月21日(日)
《共同研究成果公開》国際研究フォーラム「21世紀を生きるアーミッシュ―日々の助け合いから国際協力へ―」

  • 日時:2009年6月21日(日) 13:30~17:00(開場13:00)
  • 場所:国立民族学博物館 講堂
  • 主催:国立民族学博物館
  • 特別協力:思文閣美術館
  • 定員:450名(参加無料・申込不要)
       当日は無料開館日です。ただし、自然文化園を
       通行される場合は入園料が必要です。
  • 使用言語:日本語・英語(同時通訳あり)
  • チラシダウンロード[PDF:3.2MB]

アメリカ合衆国にはいまも馬にひかせたバギーが行き交う地域がある。手綱をとるのは、信教の自由を求めて18世紀から19世紀にかけてヨーロッパから移住したアーミッシュの人々。アーミッシュは現代文明の適用に慎重で、テレビ、コンピュータ、電話を使わず、高等教育を受けず、非暴力主義の主張から戦争にも反対である。生命あるものの息吹を感じつつ大地を耕し、日常的な相互扶助によって高齢者や子どもたちが安心して暮らすことを理想としている。
近年、そんな「がんこな人々」の暮らし方にも変化がみえる。現代社会に背を向けるばかりではなく、自分たちの信条を伝えようという姿勢もみられる。聖書に従う生活実践に関する考え方の違いから様々な派に分離してきた彼らは、世界各地の被災地や紛争地への援助活動を他のグループと協働して実現している。家々に集まり手作り料理をコミュニティの人々と楽しむ時間に多くを語り合い、グループ間の調整も怠らない彼らは、何を大切に保持しようとしているのか、そのためにどのような工夫をしてきたのか。アーミッシュの人々と深くかかわってきたステファン・E・スコット(Stephen Scott)氏を迎え、再洗礼派の人々のライフデザインについて考えたい。

プログラム

13:30~13:40 開会の挨拶 須藤健一(国立民族学博物館館長)
13:40~14:00 趣旨説明
「心地よい生をもとめて―アーミッシュの共生思想とライフデザイン―」
鈴木七美(国立民族学博物館)
14:00~15:00 講演
「現代アメリカ社会におけるアーミッシュという生き方」
ステファン・E・スコット(ヤング再洗礼派・敬虔派センター研究員、エリザベスタウンカレッジ、アメリカ合衆国)
<休 憩>  
15:15~15:30 コメント
「アーミッシュにおける生活と協働」
大藪千穂(岐阜大学)
15:30~15:45 コメント
「再洗礼派の平和主義とアフリカにおける援助活動」
石田慎一郎(大阪大学)
15:45~16:00 コメント
「アーミッシュの支援のかたち‐ポスト開発論の視点から‐」
鈴木紀(国立民族学博物館)
16:00~16:55 ディスカッション
16:55~17:00 閉会の挨拶 鈴木七美

プロフィール

ステファン・E・スコット(再洗礼派・敬虔派ヤングセンター研究員エリザベスタウンカレッジ)
[img]

アメリカ合衆国オハイオ州生まれ。ミッショナリー・バプテスト教会のメンバーだったが、オールド・ジャーマン・バプテスト・ブレズレンの人々と交流しアーミッシュを含む「簡素な人々 plain people」の暮らし方に魅せられる。1969年にペンシルヴェニアに移動し、保守的なグループの一つオールドオーダー・リヴァー・ブレズレンに加わった。
現在は、アーミッシュの南部地域への移動という新しい傾向や、呪術的医療・代替医療への関心について、現地調査を続けている。
著書として、『簡素なバギーアーミッシュ、メノナイト、そしてブレズレンの馬車移動』、『オールドオーダー・アーミッシュ・コミュニティの結婚式と行事』、『オールドオーダーと保守的メノナイト・グループ』などがある。

A native of Ohio, Stephen Scott moved to Lancaster County, Pennsylvania, in 1969. He is a member of a religious group called the Old Order River Brethren which in many ways is similar to the Amish. He has done extensive study of the life and history of Amish, Mennonite, Brethren and other Anabaptist groups. His published writings include Plain Buggies (1981), Why Do They Dress That Way? (1986), The Amish Wedding and Other Special Occasions of the Old Order Communities (1988), Living Without Electricity (1990), Amish Houses and Barns (1992), and An Introduction to Old Order and Conservative Mennonite Groups (1996) as well as several articles in various periodicals. He works as researcher at the Young Center for Anabaptist and Pietist Studies at Elizabethtown College in Pennsylvania.

大藪千穂(おおやぶ ちほ)
[img]

専門分野は生活経済学、生活経営学、ライフスタイル論。主な著書は、『お金と暮らしの生活術』(昭和堂、2006年)、『仕事・所得と資産選択』(放送大学教育振興会、2008年)、訳書に『アーミッシュの謎』(論創社、1996年)、『アーミッシュの学校』(論創社、2004年)、『アーミッシュの昨日・今日・明日』(論創社、2009年)。

 
鈴木紀(すずき もとい) 国立民族学博物館先端人類科学研究部准教授
[img]

専門は開発人類学・ラテンアメリカ文化論。開発援助プロジェクト評価、チョコレートを中心とするフェアトレード、マヤ・ユカテコ民族の社会文化的動態、メキシコのナショナリズムとリージョナリズムなどについて研究を進めている。 主な著書に、『中米地域先住民族への協力のあり方』(共著、2006年、国際協力機構、国際協力総合研修所)、「開発問題の考え方」『開発学を学ぶ人のために』(世界思想社、2001年)、「開発研究の見取り図:世界観から<開発学>を展望する」菊地京子編『開発学を学ぶ人のために』(世界思想社、2001年。

石田慎一郎(いしだ しんいちろう)大阪大学大学院人間科学研究科特任助教
[img]

専門は法人類学(紛争過程分析、多元的法体制論、身分契約論など)。主な論文に「慣習婚は如何にして想起されるか-ケニア・グシイ社会における埋葬訴訟記録の分析」『民族学研究』67巻2号、「紛争過程分析における千葉理論の所在-法規則・法前提のダイコトミーをめぐる方法論的提言」『法社会学』64号、「ADRとメノナイト-アジア・アフリカ諸国における多元的法体制の新しい展開」『法律時報』79巻12号などがある。

鈴木七美(すずき ななみ)国立民族学博物館先端人類科学研究部教授
[img]

専門は文化人類学・医療社会史。ユートピア・コミュニティ、オルタナティヴ教育・医療など、ライフデザインの思想と実践を追っている。著書・論文に、『出産の歴史人類学』(新曜社、1997年)、『癒しの歴史人類学』(世界思想社、2002年)、「信仰と家族・コミュニティ」「コミュニティの中の教育」「アーミッシュの食文化」「生活とアート-キルトの世界」「現代社会とアーミッシュ」『言語』(4~9月号、2003年)、「キリスト教非暴力・平和主義の底流-再洗礼派メノナイト・アーミッシュ」『結社の世界史5』(山川出版社、2005年)などがある。